黒に咲く〜第4話第4話:会議室へ向かう途中、誰にも聞かれないように
会議の時間が迫っていた。
御影組の本拠地として使われている屋敷の廊下は、朝の張りつめた空気に包まれている。下の者たちが忙しなく動く音、遠くから聞こえる携帯の着信音、足音――それらのすべてが、この世界に生きる者の緊張を物語っていた。
そんな中を、蒼一と玲司は並んで歩いていた。
廊下を進む蒼一の背筋は伸び、寝起きの影は微塵も残っていない。先ほどまで布団の中にいたとは思えぬほど、すでに“御影家の若”の顔になっている。
その横を歩く玲司は、目線をまっすぐに向けたまま、無駄のない歩調で歩いていた。
蒼一と並ぶのは、幹部としての立場上当然のように見える。
だが、誰よりもその距離に神経を払っているのは、玲司自身だった。
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