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    2022.5.20公開のタイトル通りの話。
    南4人しか登場しませんが、回想の部分で小学生には読ませられない程度の描写をしています。

    #フィガファウ
    Figafau

    フィガロ先生の腰が痛い話「フィガロ先生! もう朝ですよ、起きてください! あっ、寝返りを打たないでくださいってば!」
     ドアのノックもそこそこに部屋に入り込んできたミチルの怒鳴り声に、目を閉じたまま思わず口角を上げる。もう少し平和な一日の始まりを噛み締めていたかったのだが、布団を引っぺがされた事で観念した。
    「はいはい、分かったよ。おはようミチル」
     いつも全力で起こしてくれる可愛い生徒の頭を撫でながら上半身を起こすと、片腕を取られて立ち上がらされる。もう随分前から起きて活動を始めているのだろうミチルの足取りは軽くすぐに部屋から連れだそうとするから、その直前で指を一振りして服を着替えた。いつもの白衣に聴診器を下げた格好で廊下に出ると、そこにはルチルとレノックスの姿もあって南の国の魔法使い勢揃いだ。
    「あれ、今日は任務に出かける日だったかな?」
     記憶にないスケジュールに首を傾げると、ルチルが柔らかい声で「違いますよ」と否定してくれる。
    「偶然同じタイミングで三人が部屋のドアを開けたんです。なんだか楽しくなって、フィガロ先生も呼ぼうって」
    「仲間はずれにしないでくれてありがとう」
     南の国の人々のこういう所が好きだなと本心から思うのだ。見落としてしまいそうな小さな幸せを掬い上げ、他者に共有しようとする。それはやろうと思って出来る事では無い。それをごく自然に行ってしまう彼らに笑顔が零れた。
    「朝ご飯は何でしょうね。昨日はパンプティングだったから、しょっぱい系かもしれません」
    「今日は焼き魚の筈だ。昨日釣って来た魚をネロに持っていったから」
    「あら、煮魚の可能性もありますよ」
     扉を開ければ答えが出てくるというのに朝食のメニューで盛り上がっている彼らの三歩後ろにくっついて歩く。まるで親鳥を追う雛になった気分でいたが、突如感じた体の違和感に腰を曲げた。
    「いたた……」
     小さくだが漏れてしまった声に前を歩く三人が振り返ると、腰に手を当てている俺と目が合う。
    「フィガロ先生、腰痛ですか?」
     ルチルが驚いた声を上げて、ミチルが駆け寄って心配そうに見上げてくる。そして近所に住んでいたおじいさんにしていたように腰をさすろうとするから、やんわりと断った。流石に老人と一緒にされては堪らない……おじいさんよりも年上なのは確実だが。
    「大丈夫だよ、暫く経てば治るから。うーん、ちょっと使い過ぎちゃったかな」
    「昨日力仕事とかしましたっけ? 魔法舎では畑仕事も無いですし……書庫の整理もしてませんよね」
    「昼間は僕達に魔法を教えてくれていましたけれど、夜に何かあったんですか? 危ない事とかしてないですよね?」
     真剣に原因を考えてくれているルチルとミチルには悪いが、「どうだったろうね」とはぐらかす事しか出来ない。腰を上下にさすりながら我先にと食堂の扉に手を付いた。
     まさかミチルの前で正直に本当の話は出来ないし、嘘に嘘を重ねるのも得策では無い事くらい解っている。うっかり漏らしてしまったら大変だ。怒られるならともかく、嫌われるのは堪らない。声を出してしまった自分が悪かったのだが、ズキリとした痛みに気付いたら声が漏れてしまったのだ。しかしそれは痛いから発せられたのでは無くて、小さな幸せに気付いてしまった声だった。
    「……腰痛くらい、フィガロ先生なら魔法で治せますよね?」
     そう耳元で囁いたレノックスは原因に検討が付いているのだろう。じとっとした視線が痛いが、笑うしか無い。
    「治したくない痛みもある事に気が付いたんだよ」
     ふふ、と笑うと呆れたような溜息が斜め上から降ってくる。
     ――昨日のファウストは珍しくテンションを上げていて、普段は嫌がりそうなのに繋がったまま抱き上げたら愉快そうに笑っていた。直前までシャイロックのバーで酒を飲んでいたせいかもしれない。積極的というよりもただただ楽しそうだった。まるでカボチャの馬車に乗った少女のような、廻る木馬に跨がっている子供のようなはしゃぎように俺の方も楽しい気分になっていた。張り切ってしまった、なんて言葉はおっさんくさいのかもしれないが、正に言葉の通りだ。細いが幼子に比べれば十分に体重のある男を抱き上げたまま、長時間に渡って腰を使った結果がこれだ。
    「全く、あなたって人は……口元緩んでますよ」
    「はは、仕方ないでしょ、真顔じゃいられないよ」
     以前、情交の痕跡をファウストが眠っている間に消した事を酷く怒られた事がある。身体中に残る鬱血痕に、体液で汚れた寝具、それから受け入れた体内も……そのまま朝を迎えたいのだと真面目な顔をして訴えられた。その理由が今は解る事が嬉しい。
     ああ腰が痛いと嘆くくらいが幸せなのだ。
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    tono_bd

    DOODLEフィガファウ冥婚企画(https://mhyk.web.fc2.com/meikon.html)で書いたお話です。
    レノックスと任務で東の国に行くファウストの話。
    任務についてがっつり書いて、恋愛要素は潜ませました。
    ああそういう事だったのね、という感想待ってます。
    赤い川を渡って そこに横たわっていたのは血のように赤い色をした川だった。
     流れがひどく緩慢なため、横に伸びた池のような印象がある。大地が傷つき、血を流した結果出来たのがこの川だという言い伝えがあってもおかしくは無いだろう。濁っているわけではなく、浅い川であることも手伝って川底の砂利まで視認出来た。尤も、生きた生物は視認出来なかったが。
     任務でこの地を訪れたファウストは、地獄を流れる川のようだと感想を持った。
    「きみは驚かないんだな」
    「見慣れた風景ですので……懐かしさすら覚えます」
     水質を調べようとファウストは手を翳したが、既に手遅れであることは誰の目にも明らかだ。オズくらいの魔力があれば力業で全ての水を入れ替えてしまえるのかもしれないが、正攻法であれば浄化になる。媒介は何が必要で、どのような術式で、とぶつぶつ呟きながら暫く考えていたが、少なくとも今打てる手はファウストには無い。
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    tono_bd

    DOODLE同級生の中で一番初体験が早かったのが生徒会長だったら良いな……って思いながら書きました。
    スペースに集まった人全員「夏の現代学パロ」というお題で一週間で作り上げるという鬼畜企画でした。
    私が考える「現代学パロ」はこれだ!!って言い切るつもりで出します。
    どう見ても社会人パロとかは言わない約束。
    ノスタルジーが見せる 夏休みを失って二年が経った。
     手元で弾けている生ビールの泡のように、パチパチと僅かな音を立てて消えていく。気付いたら無くなっているような二年だった。社会に出れば時の流れは変わるのだという言葉の信憑性を疑った時期もあったが、自分がその立場に立ってはじめて理解出来るものだ。
     ノスタルジーが生み出す感傷だろう、自分らしくないなと思いながらジョッキを傾ける。
     同窓会なんて自分には縁の無いものだとファウストは思っていた。誘う友人もいないし、誘われるような人柄では無いと自覚している。それなのに今この場にいるということは、認識が間違っていたという事だろうか。今日の事を報せてくれた淡い空色の髪をした友人は目立つ事も面倒事も厭うきらいがある。そんな彼が声をかけてくれたのは、単に僕がのけ者にされないよう気を遣ったのか、巻き添えを探していたのだろう。
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    Shiori_maho

    DONEほしきてにて展示していた小説です。

    「一緒に生きていこう」から、フィガロがファウストのもとを去ったあとまでの話。
    ※フィガロがモブの魔女と関係を結ぶ描写があります
    ※ハッピーな終わり方ではありません

    以前、短期間だけpixivに上げていた殴り書きみたいな小説に加筆・修正を行ったものです。
    指先からこぼれる その場所に膝を突いて、何度何度、繰り返したか。白くきらめく雪の粒は、まるで細かく砕いた水晶のようにも見えた。果てなくひろがるきらめきを、手のひらで何度何度かき分けても、その先へは辿り着けない。指の隙間からこぼれゆく雪、容赦なくすべてを呑みつくした白。悴むくちびるで呪文を唱えて、白へと放つけれどもやはり。ふわっ、と自らの周囲にゆるくきらめきが舞い上がるのみ。荘厳に輝く細氷のように舞い散った雪の粒、それが音もなく頬に落ちる。つめたい、と思う感覚はとうになくなっているのに、吐く息はわずかな熱を帯びてくちびるからこぼれる。どうして、自分だけがまだあたたかいのか。人も、建物も、動物も、わずかに実った作物も、暖を取るために起こした頼りなげな炎も。幸福そうな笑い声も、ささやかな諍いの喧噪も、無垢な泣き声も、恋人たちの睦言も。すべてすべて、このきらめきの下でつめたく凍えているのに。
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