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    スノホワが経営する保育園に顔を出しに来たフィガロ(双子の養子)が、五歳児のファウストに懐かれる話。
    フォル学のフィガファウがどこでいつどうして知り合いあんな関係になったのかを案が得ていたら保育園まで遡りました。
    決してやましい描写はありませんが、フィガファウです。

    #フィガファウ
    Figafau
    #フォル学
    folklore
    #現パロ
    parodyingTheReality

    園児ファウストとの邂逅(後にフォル学になる) 園庭では二十名程の園児が高い声を上げて走り回ったり、転げながら砂場遊びをしている。このような平和な光景はここ数年見ていないため表から入るには憚られて、裏口を見つけると素早くダイヤル錠を開けて敷地内に入りこんだ。近所の人に見られたら通報されるかな、と思いつつもそのようなヘマをしない自信がフィガロにはある。笑顔で挨拶をすれば大抵の人は勝手に関係者認定してくれるものだ。
     そして建物の端にある園長室と書かれたやたらと重厚感のある扉をノックした。すると来るのが初めから分かっていたみたいな顔をした育ての親が二人並んで出迎えてくれる。
    「なんじゃ今頃になって現れて。開業祝いの花なら要らないからね、やっと処分した所なんだから」
    「あれ結構大変だったよねー。大きいのが良いと強請ったのは我らじゃが、処分に困る事になるとは思わんかった」
     お変わりが無いようで、とするつもりであった挨拶はするタイミングを与えられなかった。顔を見せるのは一年以上前の年明けだったが随分と雑な対応だ。「花なんて用意しませんよ」と呆れた。
    「お二人が保育園の運営を始めたと聞いたので、ちょっと近くに来たから寄ってみただけですよ。どうして保育園なんです?」
    「オズちゃんも巣立ってしまって寂しくてのう……また子供を引き取って育てようかとも思ったんじゃが、大人になるまで育てるのに飽きちゃって」
    「それなら一等愛らしい時期だけを摘まみ食いしようかと思ってな。試しに始めてみたんじゃ」
     表現が悪すぎて、聞く人によっては通報案件だ。この子にしてこの親ありというのを自分自身の事だか考えてしまった。
     保育園が不足している時代だからだろう、この突然出来た得体の知れない私立の保育園でも即定員満了したらしい。見た感じは普通の保育園と何ら変わらないし、スノウとホワイトも悪い事に使うつもりは無いようだから取りあえず訴えられる事は無いだろう。
    「何か失礼な事考えてたでしょ?」
     ホワイトに突かれるが笑って誤魔化した。自分をこう育てたのは二人なのだから、責任の一端は彼らにあるだろう。
    「取引に使ったり、見付かってはいけないものを隠すために作ったのかと思っていたんですが」
    「ほほほ、それも考えたんじゃが、園児というのは我らが思っている以上に何をしでかすか分からんからのう」
    「折角隠したものを掘り当てるのが上手いんじゃ。おぬしがそうであったようにのう」
     よく覚えてはいないが、過去の自分の行動によって保育園は平穏を保っているらしい。子どもの前では悪さは出来ないというし、裏世界を牛耳っていた経歴のある双子だが、このままこの好々爺にでもなるつもりか。
    「なんだかここにいると平和ボケしそうですね……」
    「たまにはそれも良かろう。随分飛び回ってたみたいだしぃ?」
    「オズの奴、人使いが荒いんですよ。平気で地球の裏側から呼び出してくる」
     でも少し疲れたなぁ、と弱音を漏らして壁にもたれかかった。手癖で胸ポケットからシルバーのシガーケースを取り出し、唇で一本挟んだ。すると片側から伸びてきた手に即座に煙草は引き抜かれ、もう片側からは叱責を食らう。
    「ここは禁煙!」
    「煙草の臭いが残ったらどうするんじゃ!」
    「園児がここに来る事なんて無いでしょうに。……分かりましたよ、ちょっと出てきます」
     四つの大きな目玉に睨まれて許されないことを知ると、シガーケースをしまって両手を挙げた。降参のポーズだ。
    「前まではそんなに吸ってなかったよね?」
    「自制心の鬼じゃったよね?」
    「最近はこいつくらいしか俺に優しくないもので」
    「それ絶対偽物の優しさだから気をつけなよ? 頭も心も真っ黒なのに肺まで真っ黒にするつもり?」
     スノウの身内らしい物言いに「酷いなぁ」と苦笑いしながら、ひらひらと手を振って園長室を出た。

     だからと言って屋外に喫煙所があるわけでも無く。双子が無言で送り出したという事は黙認するという事だが、さてどこに向かうべきか。敷地外に出ると面倒なので仕方なく建物の裏側に出て木陰を居場所に決め、今度こそ煙草の先端に火をおこす事に成功した。
     深く吸い込むと人心地ついた気がして、園児の声のBGMが若干和らいだ気がする。子どもは好きでも嫌いでも無い。正しくは自分に懐く子どもは好きだが、そうでない餓鬼は嫌いだ。自分と関わらない所に居てくれるならそういう天秤に乗せずに、平和の象徴であれと外野から眺めていられる。それくらいの距離感が一番良いなぁと思いながら半分程吸った頃、茂みがユラユラと風も無いのに揺らいだ。
     思わず衝動的に商売道具を取り出しそうになったが、ここは双子の保育園だ。選択肢は園児か小動物か殺し屋の三つに分類される。うっかり園児を怪我させてしまっては大問題だ。暫く双子にはどやされて、無償の奉仕をさせられかねない。
    「……かくれんぼかな?」
     そう優しげな声を作って問いかけると、茂みから漸く子どもが顔を出した。鳶色の柔らかい巻き毛の、賢そうな顔付きの子どもだった。保育園の中では年長に入るであろう。
    「ちがいます」
     はっきりと否定して、子どもは両手で持っていた本を掲げた。ここでずっと本を読んでいたと主張しているのだろう。
    「そうか、気付かなくてごめんね。煙たかっただろう」
    「べつに平気。おとうさんも家でよく吸ってるから」
     携帯灰皿に押しつけられた火を見上げながら子どもはそう言った。物言いは小学生にも引けを取らないだろう。見た目以上に聡明な子どものようだった。他の園児達が砂場で遊んでいる間に読書をしている時点で察せられるが。
    「何を読んでるの?」
    「ヘレン・ケラー」
    「伝記か。面白い子だな。それはおとうさんが買ってくれたの?」
    「園長先生がかしてくれました。絵本じゃ退屈じゃろうって。それに辞書も」
     ふぅん、と言いながら本を覗き込む。全ての漢字に読み仮名がふってあるが、挿絵が少なくて五歳児にはまだ早すぎる内容のように思えた。だがこの子どもは辞書を引きながら読み進められるらしい。
     オズが五歳の時は絵本すら読まない、文字も数字も覚えないで困ったものだが、この子の場合は真逆のようだ。双子は相変わらず大雑把な教育しか知らないらしい。だから本と辞書を渡して放置しているのだ。
    「俺と同じだね。俺の時もあの人たちは本だけ与えてきたよ」
    「あなたも園長先生の保育園にいたんですか?」
    「俺はあの人たちの養子なんだ。ここの関係者ってわけじゃないけど、ちょっと遊びに来たんだよ。……ああ、名乗るのを忘れてたね。俺はフィガロだ。君の名前は?」
    「……ファウスト」
     見上げてきた瞳は先日オズから謝礼代わりに渡された宝石とよく似た美しい色をしていて、日射が枝の隙間から入り込んでキラキラ輝いていた。性別不詳な容姿をしていたが、名前から男児だと分かった。随分と可愛らしい顔立ちで、保育園という枠にいるのが少し可笑しく感じられる。見た目が良いものを気に入りがちな双子も、もしかしたら目に掛けているのかもしれない。
    「本を読むのは好き?」
    「はい、ものを覚えるの楽しいです。でも、先生がいない」
    「物足りないのか」
     しゅん、と項垂れた頭に思わず手を置くと、すっぽりと頭蓋を覆ってしまって少し驚いた。バスケットボール程度の大きさしか無い頭は下手すると簡単に壊してしまいそうだ。オズだったらうっかり握り潰してしまっていたかもしれないな、と物騒なことを思いながら微塵も考えを表に出さずに髪を撫でる。
    「……今度、もっと君に相応しいものを見繕ってあげるよ」
     思わずそう口にしていたが、その場限りの嘘のつもりは無かった。何となく自分の幼少期と重ねてしまったのかもしれない。遊び相手も無く、一人で部屋に籠っていた頃の。
    「あなたが? 僕に……?」
     ファウストは大きな瞳を更に拡げて見上げてくる。驚いているのだろう。それもそうか、突然見ず知らずの大人が本をくれるなんて可笑しな話だ。
    「ああ、園長先生に預けておいたら受け取れるよね」
     これ以上怖がらせるのも可哀想かと思いそう提案したのだが、ファウストは眉尻を下げた。どうして悲しそうな表情をするのか分からずにいると、ファウストはフィガロの袖を控えめに摘まんだ。
    「その……あなたに教えてもらうことはできませんか?」
     指先よりもハッキリした声に面食らったが、それ以上に何を言われているのかを理解すると今度はフィガロの方が動揺した。
     自分に懐く子供は可愛い。しかし、これは懐くという次元の話なのだろうか。
    「……俺は保育士じゃないしなぁ」
     口ごもるが、ファウストは引かなかった。
    「ちょっとでいいんです。先生じゃないのは分かってます……でも、僕はあなたに教えてほしい」
     五歳児とは思えない迫力にのまれたのはフィガロの方だった。この短い邂逅の中で何が子どもに影響を与えたのかは分からない。しかしファウストは前言撤回するつもりは無さそうだ。
    「きみは俺に何を教わりたいの?」
     他人に教えられる事なんて一般教養か、それ以外であれば裏社会で生きていく知識くらいしか無い。しかし単純にこの子どもが何を望むのか気になった。オズにもこの可愛げが少しでもあればなぁ……と考えながら目を細めてファウストを見下す。弟のように育てたオズ相手に、まともな教育を施せた自信は無い。
     一人木陰で本を読んでいる子どもとは思えない程、ファウストは利発だった。整った顔立ち、大人びた物言い、真っすぐな眼差し。それらの要素は彼の孤立を深めている。いつか中身に外側の年齢が追い付けばそのギャップは少なくなるだろうが、今は辛い時であろう。
    「べんきょう……だけじゃなく、他にもいろいろ……」
     深く考えていなかった可能性は十分あったが、目が泳いだのがファウストらしくなく感じられた。らしさなんて語れる程ファウストのことを知っているわけでは無いが、明らかに違和感がある。それを見逃すのは惜しい気がして、「なぁに?」と優しく訊ねた。
     すると、きっと眉を吊り上げて子どもながらに意を決した表情で見上げてくる。
    「こいを、教えてください」
    「こい?」
     それはフィガロの知らない最近子どもの間で流行りの何かだろうか、それとも聞き間違いか。ファウストの言う言葉の意味が分からず首を傾げると、ファウストは焦っているのか若干やきもきした様子で追いすがった。
    「あなたと、けっこんするにはどうしたらいいですかっ?」
     聞き間違える余地が無い程にはっきりとファウストは口にした。口を開けたが言葉が出てこないなんてフィガロにとっては稀なことだ。言葉の意味を理解しているかは、ファウストの顔面を見れば知れた。灼熱の空の下で熟れたトマトのように真っ赤で、可哀想なくらいだ。
     子どもの言うことだと片付けるのは簡単だった。今まで年端も行かない子どもの言うことに耳を傾けるのは時間の無駄くらいに思っていたので、昨日までのフィガロだったなら「ありがとう、でもごめんね」と返していただろう。
     だがこの時は何の気の迷いか、心が動いた。大福のように柔らかな頬を赤くして、必死に袖を摘まむいじらしさ。名前も知ったばかりだというのに一足越えでプロポーズしてくる清々しさ。正直言って五歳児に性欲は微塵も沸かないが、可愛らしいとは感じている。この世で最も可愛いかもしれないと思うくらいには。
    「……それがきみの知りたいこと? 本当に教えてほしい?」
    「はい! フィガロ……さんにしか分からないことだと思うんです」
    「フィガロでいいよ」
     一目惚れなんてそれこそ気の迷いのようなものだ。一年どころか明日にはころっと好きな相手が変わっている可能性がある。子どもなんて特にそういうものだろう。もしかしたら数年後、このことを思い出して悶絶する日が来るのかもしれないが、この子の恐らく初恋を奪うというのは気分が悪いものでは無いように思える。
     予想したよりもずっと柔らかくて温かい頬に触れると、ファウストはどこを見て良いのか困った様子で目線を動かし、最終的にフィガロの目を見てきた。
    「嫌になったら教えて。それまではきみの先生になるよ」
    「なりません」
     そう即答する無垢さに微笑み、近い内に思い出にされるであろう未来まで考えた。きっと自分はこの子どもに恋をする日は来ない。それは年の差である以前に、ファウストがあまりにも純粋だからだ。汚したい気持ちよりも綺麗なままで居て欲しいと思ってしまう内は、恋は出来そうにない。
    「じゃあ、きみが結婚できる年齢になるまでにしよう」
     きょとんとした表情が年齢相応に見えて、少しからかいたくなった。言っている言葉に偽りは無いつもりだけれど。
    「ファウストが言ったんだよ、俺と結婚したいって。結婚できる年齢になった時にまた聞かせてよ」
     ようやく理解したらしいファウストは、小さな声で「はい」と返事をした。きっともう先生扱いしているのだろう、この可愛らしい生き物は。
     興が乗って内緒話をするみたいに、ちいさな耳殻に唇を寄せて囁いた。
    「それまで、きみの先生になってあげる」
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    Replies from the creator

    tono_bd

    DOODLEフィガファウ冥婚企画(https://mhyk.web.fc2.com/meikon.html)で書いたお話です。
    レノックスと任務で東の国に行くファウストの話。
    任務についてがっつり書いて、恋愛要素は潜ませました。
    ああそういう事だったのね、という感想待ってます。
    赤い川を渡って そこに横たわっていたのは血のように赤い色をした川だった。
     流れがひどく緩慢なため、横に伸びた池のような印象がある。大地が傷つき、血を流した結果出来たのがこの川だという言い伝えがあってもおかしくは無いだろう。濁っているわけではなく、浅い川であることも手伝って川底の砂利まで視認出来た。尤も、生きた生物は視認出来なかったが。
     任務でこの地を訪れたファウストは、地獄を流れる川のようだと感想を持った。
    「きみは驚かないんだな」
    「見慣れた風景ですので……懐かしさすら覚えます」
     水質を調べようとファウストは手を翳したが、既に手遅れであることは誰の目にも明らかだ。オズくらいの魔力があれば力業で全ての水を入れ替えてしまえるのかもしれないが、正攻法であれば浄化になる。媒介は何が必要で、どのような術式で、とぶつぶつ呟きながら暫く考えていたが、少なくとも今打てる手はファウストには無い。
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    tono_bd

    DOODLE同級生の中で一番初体験が早かったのが生徒会長だったら良いな……って思いながら書きました。
    スペースに集まった人全員「夏の現代学パロ」というお題で一週間で作り上げるという鬼畜企画でした。
    私が考える「現代学パロ」はこれだ!!って言い切るつもりで出します。
    どう見ても社会人パロとかは言わない約束。
    ノスタルジーが見せる 夏休みを失って二年が経った。
     手元で弾けている生ビールの泡のように、パチパチと僅かな音を立てて消えていく。気付いたら無くなっているような二年だった。社会に出れば時の流れは変わるのだという言葉の信憑性を疑った時期もあったが、自分がその立場に立ってはじめて理解出来るものだ。
     ノスタルジーが生み出す感傷だろう、自分らしくないなと思いながらジョッキを傾ける。
     同窓会なんて自分には縁の無いものだとファウストは思っていた。誘う友人もいないし、誘われるような人柄では無いと自覚している。それなのに今この場にいるということは、認識が間違っていたという事だろうか。今日の事を報せてくれた淡い空色の髪をした友人は目立つ事も面倒事も厭うきらいがある。そんな彼が声をかけてくれたのは、単に僕がのけ者にされないよう気を遣ったのか、巻き添えを探していたのだろう。
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