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    ※2023/11/23賢マナで無料配布したペーパーです。
    現パロ、フィガファウは付き合ってる、いきなり最中。

    #フィガファウ
    Figafau
    #現パロ
    parodyingTheReality

    アクアリウム ゆらゆらと陽炎のように青い光が揺れる部屋だった。ベッドヘッドと壁の隙間に設置されているらしい照明が映像を投影している。
    「……ッ、ぁあ――!」
     それを見ながら僕は果てた。
     汗で滑る背中に必死にしがみつきながら。妙な非日常を目に焼き付けようとしているのか自分でも分からないが、目は閉じなかった。

    「陽炎と言うより、水面を再現してるんじゃないの?」
     気怠さを隠すこと無く、今にも眠りそうな体制でフィガロは言った。連勤明けの長時間の運転で疲れていたのだろう。だが眠るにはあまり向いていない部屋のようにファウストは思えた。ホテルの中でもグレードの高い部屋を選んだからだろうか、内装は小綺麗でリゾートホテルのようにも見える。けれどここは俗に言うラブホテルだ。
     名前は『アクアリウム』。
     部屋の中央、一番目立つ所に壁のように鎮座している大型の水槽がその名前を体現していた。中を泳ぐ魚たちは恋人たちの営みを見るのにも飽きただろう。我関せずに水中を泳いでいる。
     部屋の窓は開かない仕様だったが、今も雨は降り続いているらしい。ガラスを叩く雨音が聞こえてきて、これが止むまでこのひとは動かないだろうなと予想する。
     海に行こうと言い出したのはファウストだった。
     次の休みにたまにはデートがしたいという我が儘を聞いてくれたのだが、もう三十分も走らせれば海岸という所で雨が降ってきた。それも雷を伴う土砂降りだ。これでは車から降りて浜辺を歩くことすら叶わないのはファウストから見ても明白だった。
     すぐに別の行き先を検索したのだが、候補にあがった水族館は休館日。点検なんて土曜日にするなと心の中で文句を言う他ない。
    「それっぽい所に行ければ良いんでしょ?」
     という大雑把な発言をしたフィガロが指し示した場所というのが『アクアリウム』だった。
     正直な所、この日は全くそのつもりが無かった。心も尻も準備をしていなかったし、何より「それっぽい」に賛同出来ない。だが結局はそれっぽい場所で恋人らしいことを営んでしまったわけだ。
    「これってネオンテトラだよな? 横に一線青い模様が入ってる」
    「詳しいの?」
    「いや、有名なのしか知らないよ。カクレクマノミとかね。あなたは?」
    「俺も。あの派手な色してるのがグッピーの雄ってことくらいしか分からないな」
    「雄? ああ、孔雀と似たようなものか」
     お互い観賞魚の知識は同レベルらしく、水槽をぼんやり眺めながら時間の経過を感じるしかすることが無い。普段時間に追われる生活をしているためギャップが激しい。
    (まあ、水族館を歩き回るより、これで良かったのかもしれないな)
     ほんの少し、本物の水族館に後ろ髪引かれる気持ちはあるけれど。恐らく行けなかったから余計に行きたくなっただけだ。HPに載せているペンギンショーやクラゲコーナーに若干惹かれていたのは事実だが。
     ごろん、と寝転がった男が、裸の胸に甘えるみたいに擦り寄ってくる。その髪を梳きながらファウストはぼやいた。
    「……おなかすいたなぁ」
    「――」
     そう? と聞き返されたのだろうか。声がくぐもっていて聴き取れなかった。けれどフィガロが同じ思いで無いことは察せられたので無言を返す。
     セックスをして空腹だなんて、我ながら健康そのもの過ぎて笑えるが、今笑ったら振動が男に伝わってしまうので必死に耐えた。
    「もう少しだけ、待って。充電してるから」
     それなのに唐突にそう言われて、ファウストは笑いを耐えるのを諦めた。
    「これが充電になるの?」
    「なるよ。カラカラだったんだ。また暫く大丈夫なように甘えさせて」
    (こんなに可愛いひとだったか……?)
     恐らくそうでは無い。いつも隙が無く、誰から見ても格好良いひとだった。
    「暫く無くても平気なの?」
    「平気じゃ無いよ。けど、それは叶わないから仕方なく」
     毎日こうしてやれたら良いのだろうが、フィガロの言う通り現実はそう上手くいかない。
    「フィガロ、こっち向いて」
     言う通りに寝返りを打つ男の額に音を立てて口付けを落とし、そのまま鼻先と唇にも続けて落としていった。
    「少しは足しになる?」
    「なった。けど、もっと足りなくなりそう」
    「許容量が増えるのは良いことだ」
     甘えることが上手そうに見えて下手くそなひとだった。可愛くさせたのはきっと自分だと自覚して、優しく抱き込む。
    「……魚が食べたい。しらす丼とか、蛸のぶつ切りとか。焼き魚でも良いけど、煮魚の気分じゃない」
    「はは、キスしながら夕飯のリクエスト? 面白い子だなぁ」
     情緒がどうのとはフィガロは言わなかった。一頻り肩を震わせてから「俺はカルパッチョが食べたいかなぁ」などと言う。それはいつもだろうと、ただの好物を言い出した男に嘆息した。
     きっとどんな店も二人の希望を叶えられるわけでは無いと分かっていて、アクアリウムを出た後は、スーパー寄ってフィガロの家かなと考えた。
     満足するまで魚を食べた後は、多分またこうして抱き合うことになるのだろう。
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    tono_bd

    DOODLEフィガファウ冥婚企画(https://mhyk.web.fc2.com/meikon.html)で書いたお話です。
    レノックスと任務で東の国に行くファウストの話。
    任務についてがっつり書いて、恋愛要素は潜ませました。
    ああそういう事だったのね、という感想待ってます。
    赤い川を渡って そこに横たわっていたのは血のように赤い色をした川だった。
     流れがひどく緩慢なため、横に伸びた池のような印象がある。大地が傷つき、血を流した結果出来たのがこの川だという言い伝えがあってもおかしくは無いだろう。濁っているわけではなく、浅い川であることも手伝って川底の砂利まで視認出来た。尤も、生きた生物は視認出来なかったが。
     任務でこの地を訪れたファウストは、地獄を流れる川のようだと感想を持った。
    「きみは驚かないんだな」
    「見慣れた風景ですので……懐かしさすら覚えます」
     水質を調べようとファウストは手を翳したが、既に手遅れであることは誰の目にも明らかだ。オズくらいの魔力があれば力業で全ての水を入れ替えてしまえるのかもしれないが、正攻法であれば浄化になる。媒介は何が必要で、どのような術式で、とぶつぶつ呟きながら暫く考えていたが、少なくとも今打てる手はファウストには無い。
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    tono_bd

    DOODLE同級生の中で一番初体験が早かったのが生徒会長だったら良いな……って思いながら書きました。
    スペースに集まった人全員「夏の現代学パロ」というお題で一週間で作り上げるという鬼畜企画でした。
    私が考える「現代学パロ」はこれだ!!って言い切るつもりで出します。
    どう見ても社会人パロとかは言わない約束。
    ノスタルジーが見せる 夏休みを失って二年が経った。
     手元で弾けている生ビールの泡のように、パチパチと僅かな音を立てて消えていく。気付いたら無くなっているような二年だった。社会に出れば時の流れは変わるのだという言葉の信憑性を疑った時期もあったが、自分がその立場に立ってはじめて理解出来るものだ。
     ノスタルジーが生み出す感傷だろう、自分らしくないなと思いながらジョッキを傾ける。
     同窓会なんて自分には縁の無いものだとファウストは思っていた。誘う友人もいないし、誘われるような人柄では無いと自覚している。それなのに今この場にいるということは、認識が間違っていたという事だろうか。今日の事を報せてくれた淡い空色の髪をした友人は目立つ事も面倒事も厭うきらいがある。そんな彼が声をかけてくれたのは、単に僕がのけ者にされないよう気を遣ったのか、巻き添えを探していたのだろう。
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    Shiori_maho

    DONEほしきてにて展示していた小説です。

    「一緒に生きていこう」から、フィガロがファウストのもとを去ったあとまでの話。
    ※フィガロがモブの魔女と関係を結ぶ描写があります
    ※ハッピーな終わり方ではありません

    以前、短期間だけpixivに上げていた殴り書きみたいな小説に加筆・修正を行ったものです。
    指先からこぼれる その場所に膝を突いて、何度何度、繰り返したか。白くきらめく雪の粒は、まるで細かく砕いた水晶のようにも見えた。果てなくひろがるきらめきを、手のひらで何度何度かき分けても、その先へは辿り着けない。指の隙間からこぼれゆく雪、容赦なくすべてを呑みつくした白。悴むくちびるで呪文を唱えて、白へと放つけれどもやはり。ふわっ、と自らの周囲にゆるくきらめきが舞い上がるのみ。荘厳に輝く細氷のように舞い散った雪の粒、それが音もなく頬に落ちる。つめたい、と思う感覚はとうになくなっているのに、吐く息はわずかな熱を帯びてくちびるからこぼれる。どうして、自分だけがまだあたたかいのか。人も、建物も、動物も、わずかに実った作物も、暖を取るために起こした頼りなげな炎も。幸福そうな笑い声も、ささやかな諍いの喧噪も、無垢な泣き声も、恋人たちの睦言も。すべてすべて、このきらめきの下でつめたく凍えているのに。
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