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    開発のファとマーケティングのフィのイメージで書きました。あまり接点の多くない彼らが一緒にランチをする話。
    ワードパレット『36kinds of time』から「12時」で書かせて頂きました。

    #フィガファウ
    Figafau

    社会人パロのフィガファウ『12時』

     十二時きっかりに、部内の誰もが席を立った。パソコンと長い時間向かい合っていたファウストは長く伸びをして、軽く首を回す。
     途中になっている仕事に後ろ髪引かれるが、十二時からの一時間という時間設定の休憩時間は動かせないのだ。渋々重い腰を上げると誰よりも遅くに室内を出た。途端、手首を掴まれてぎょっとする。
    「良かった、まだいたんだね。お昼外で取ろうよ、店調べておいたからさ」
     まるで出待ちのような事をする男、フィガロ・ガルシアは、同期でも無ければ、部署も異なる。研修や会議で顔を合わせる程度の、全くの他人では無いが友人とは呼べない距離感の人物の筈だ。それなのにどうしてか度々こういう事が起こる。
     「あ、お弁当持ってきてたりする?」と確認をされた時に思わず正直に首を横に振ってしまったから、フィガロの提案は承諾したも同然だった。
     勢いのままに連れていかれたのはオフィスからは一本離れた通りにあるビルの一階。青と白と赤の国旗が飾られている事から、一目でフレンチのレストランだと気が付いた。テラス席は既に近場の会社に務める女性達や近所のママ友達で満席になっている。格式張らないカジュアルなレストランのようだが、これでは入店まで待つのでは無いかと危惧した。
    「フィガロ……その」
    「なぁに? 気分じゃなかった?」
    「そうじゃなくて、混んでるなって」
    「そうだね。最近オープンしたんだけど、早くも人気店みたいだ」
     ちっとも時間を心配した様子の無いフィガロに困ったように眉を下げたが、受付に立っているスタッフに声をかけた直後、すぐに席に案内されて呆気に取られる。
     少し考えれば分かる事だったのだ。この男が人を誘っておいて待たせるような格好悪い事をする男じゃないと既に知っていたのだから。だが、接待でもデートでも無く、ただ仕事の合間のランチに来るだけ。しかも相手がファウストだというのに、そこまでする必要も無いような気がしてどんな顔をすれば良いか分からない。
     フィガロは誰にでもそうなのだろうか。昼飯に誰かを誘う度に、相手が好む店をリサーチして、スマートに予約までするのか。自分に同じ芸当が出来ない事を理解しているため、若干ムッとなりながら席に着くやいなやメニュー表を広げた。ランチメニューに載っているのはAコースとBコースの二つのみだが、不思議なくらいにファウストの好みにピタリと合っている。自分一人ではきっと入店を躊躇ったであろう店内を見て、わざわざ連れて来てくれた男にチラと目線をやった。
    「注文は決まった?」
     片手で頬杖を突いている男は、メニュー表でも店内でも無くファウストの事を見ていたらしく、バッチリ目があってしまう。
    「……悩んでいる。ガレットにしようとしたんだが、Bコースも捨てがたくて」
    「ああ、季節限定のカボチャのキッシュも美味しそうだもんね」
     二ヶ月限定と見ればどうしても心惹かれてしまうものがあり、決めあぐねてしまう。そんなファウストの様子を見て楽しそうに笑うフィガロは、お冷やを一口含んでからメニュー表を覗き込んだ。
    「おまえはどっちにしたんだ?」
    「そうだなぁ……俺もどっちも気になるんだけど、いっそシェアする? 君は他人と分け合うの苦手かな」
    「別に……」
    「じゃあそうしよう。ガレットの方も好きなの選んで良いから」
     どうしても、甘やかされている感を感じてしまう。快適さを保証されているというか、まるでエスコートをされているような。他の同僚と食事なんて数える程しか行った事は無いが、そこいらのラーメン屋や定食屋で適当に済ますのに。
     スタッフを呼び止めてオーダーをするフィガロを見ながら、間違い無くモテるだろうなと思った。普段そういった同僚の色恋の噂話に一切関心が無いファウストだが、容易に想像出来る。役員からも目をかけられ、部下からは頼られ、人気者の称号を貼られている事を知っている。フィガロの事を知らない人間はいないのではないかと錯覚させられる存在感故に、ファウストですら入社時から知っていたのだから。
     はっきり言って別の種類の人間なのだと認識している。だからこそ、この状況に説明が欲しい。そんな男がどうして事ある毎に声をかけてきて、こうして食事まで共にしているのか。あまつさえ好みを把握されており、丁寧にエスコートまでしてくるのか。自分に特別な何かがあるとはファウストは微塵も思っていない。親しくするメリットも思い浮かばないし、二人で過ごすに至る明確な何かがあった訳でも無い筈だ。
    「なんというか……ムズムズするよ、おまえといると」
    「ふぅん。それって、嫌な感情?」
     問われてまばたきをする程度の時間考えた。こんな事をされて悪感情が湧くほど捻くれた人間では無く、答えはすんなりと出てくる。
    「……違うけど、おまえがどうして僕に構うのかが分からないからどう反応して良いか決められない」
     先に提供されたフレンチドレッシングがかかったサラダを食べる為にフォークを取り出すと、そちらに目線を落としながらグサリと刺した。赤いものの他に黄色いミニトマトがあるなと、どうでも良い感想を抱きながら口に運んでいると、対面の男の手が全く動いていない事に気が付いた。
     野菜が嫌いなのかと疑って顔を上げると、その先にあったものに驚きで目を瞠る。
     その表情は、まるで――
    「一目惚れしたから。だから君と食事が出来て嬉しいし、楽しんで欲しい。出来れば居心地が良いと思ってくれたら良いなと思う」
     あまりに幸せそうに微笑むから、その言葉の真偽など問うまでも無かった。
     たった一口しか食べていないサラダと睨めっこしながら、返事など求めていないようなフィガロの言葉を反芻する。それで全てに説明がつくけれども、どうして告白まがいの事をしておいて笑えるのだろう。普通はもっと相手の反応に緊張して身構えたりするものじゃないのか。それも慣れているからなのか。からかっているのなら立ち去れば良いだけなのに、この状況はファウストにとって未知だった。
     この後到着するガレットとキッシュを半分に分け合わなくてはならないのに、どうしてくれるんだ。
     そんな恨み言を口にしたくなる気持ちで目の前の人物を睨みつける。それなのに変わらず彼は笑うから、またファウストは名前を付けづらい感情と格闘しなければならなかった。
     今ファウストに分かる事は、発火したみたいに火照る、顔の熱さくらいなものだった。
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    tono_bd

    DOODLEフィガファウ冥婚企画(https://mhyk.web.fc2.com/meikon.html)で書いたお話です。
    レノックスと任務で東の国に行くファウストの話。
    任務についてがっつり書いて、恋愛要素は潜ませました。
    ああそういう事だったのね、という感想待ってます。
    赤い川を渡って そこに横たわっていたのは血のように赤い色をした川だった。
     流れがひどく緩慢なため、横に伸びた池のような印象がある。大地が傷つき、血を流した結果出来たのがこの川だという言い伝えがあってもおかしくは無いだろう。濁っているわけではなく、浅い川であることも手伝って川底の砂利まで視認出来た。尤も、生きた生物は視認出来なかったが。
     任務でこの地を訪れたファウストは、地獄を流れる川のようだと感想を持った。
    「きみは驚かないんだな」
    「見慣れた風景ですので……懐かしさすら覚えます」
     水質を調べようとファウストは手を翳したが、既に手遅れであることは誰の目にも明らかだ。オズくらいの魔力があれば力業で全ての水を入れ替えてしまえるのかもしれないが、正攻法であれば浄化になる。媒介は何が必要で、どのような術式で、とぶつぶつ呟きながら暫く考えていたが、少なくとも今打てる手はファウストには無い。
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    tono_bd

    DOODLE同級生の中で一番初体験が早かったのが生徒会長だったら良いな……って思いながら書きました。
    スペースに集まった人全員「夏の現代学パロ」というお題で一週間で作り上げるという鬼畜企画でした。
    私が考える「現代学パロ」はこれだ!!って言い切るつもりで出します。
    どう見ても社会人パロとかは言わない約束。
    ノスタルジーが見せる 夏休みを失って二年が経った。
     手元で弾けている生ビールの泡のように、パチパチと僅かな音を立てて消えていく。気付いたら無くなっているような二年だった。社会に出れば時の流れは変わるのだという言葉の信憑性を疑った時期もあったが、自分がその立場に立ってはじめて理解出来るものだ。
     ノスタルジーが生み出す感傷だろう、自分らしくないなと思いながらジョッキを傾ける。
     同窓会なんて自分には縁の無いものだとファウストは思っていた。誘う友人もいないし、誘われるような人柄では無いと自覚している。それなのに今この場にいるということは、認識が間違っていたという事だろうか。今日の事を報せてくれた淡い空色の髪をした友人は目立つ事も面倒事も厭うきらいがある。そんな彼が声をかけてくれたのは、単に僕がのけ者にされないよう気を遣ったのか、巻き添えを探していたのだろう。
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    related works

    Shiori_maho

    DONEほしきてにて展示していた小説です。

    「一緒に生きていこう」から、フィガロがファウストのもとを去ったあとまでの話。
    ※フィガロがモブの魔女と関係を結ぶ描写があります
    ※ハッピーな終わり方ではありません

    以前、短期間だけpixivに上げていた殴り書きみたいな小説に加筆・修正を行ったものです。
    指先からこぼれる その場所に膝を突いて、何度何度、繰り返したか。白くきらめく雪の粒は、まるで細かく砕いた水晶のようにも見えた。果てなくひろがるきらめきを、手のひらで何度何度かき分けても、その先へは辿り着けない。指の隙間からこぼれゆく雪、容赦なくすべてを呑みつくした白。悴むくちびるで呪文を唱えて、白へと放つけれどもやはり。ふわっ、と自らの周囲にゆるくきらめきが舞い上がるのみ。荘厳に輝く細氷のように舞い散った雪の粒、それが音もなく頬に落ちる。つめたい、と思う感覚はとうになくなっているのに、吐く息はわずかな熱を帯びてくちびるからこぼれる。どうして、自分だけがまだあたたかいのか。人も、建物も、動物も、わずかに実った作物も、暖を取るために起こした頼りなげな炎も。幸福そうな笑い声も、ささやかな諍いの喧噪も、無垢な泣き声も、恋人たちの睦言も。すべてすべて、このきらめきの下でつめたく凍えているのに。
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