俺達、見守り隊 3Bは陰キャオブ陰キャ魔導工学の至宝イデア・シュラウドと、顔を合わせれば、気安い笑顔と雰囲気を醸し出す陽キャ、ケイト・ダイヤモンドを見守っている。
お互いに矢印が向いているいわゆる両片思いだろうと周りは把握し、目が合ってはどこかぎこちなく逸らしたり、かといえばその姿を目で追ってる。
甘酸っぱい青春ですか?NRCにあるまじきと思うが、もどかしさが頂点に達したときクラスの心が一つにまとまったのだ!
”よし、こいつらくっつけよう!いや、くっつけ!いい加減鬱陶しい、ミドルスクールのお子様か?マジいい加減、見ているのが辛い…砂どころか砂糖か蜜吐きそう。くっついちまえばちょっとはこのあーもう、マジあとちょっとじゃん?っていう苛立ちも解消されるはず!そうしよう野郎どもいいな?”
”ja”
ってな風で発足されたイデケイ見守り隊、隊員は3B及びイグニハイド、ハーツラビュル寮生の一部だ。
ある日、教室での授業前、今日のは必須科目。
そう普段はタブレットでのオンライン授業参加のイデアが生身で授業を受けに来る日。
普段は各々知れた者同士で座るのだが、イデアが現れるまでは一番後ろの席以外の廊下側の席に座る。そうすると空いている席にはイデアかケイト先に来たほうが空いている後ろの席に座るし、わざわざ人の後ろを通ってまでクラスメイトの横に座れる度胸はイデアにはないからだ。
「後ろ空いてる」
着たケイトだ、通り過ぎざま適当に話題振りながら席に着き、開始時間5分前に音もなく入ってきたイデアの姿を見つけた俺たちの心は、脅かさない、不必要に見ない、それでいて全神経を研ぎ澄ます。
「あ、イデアくん、俺の横空いてるよ?」
「ヒィ、陽キャ眩し過ぎ陰キャは消滅するレベル…」
「え?どうしたの?」
「いや…えっと…あ」
教室を見渡し、どこも誰かを超えないと座れないのに絶望した表情を浮かべたが、小首を傾げるケイトを見てイデアはその横に座った。
よし、ミッションコンプリートだ!!
後は授業を聞きつつ、お膳立てはした!イデア行け!進展することを心から祈りつつ聞き耳立てればいい雰囲気。
「ケイト氏、そこ間違ってますぞ」
「え?」
「そこの式はこっち…」
「わ、あ…あ、本当だ。凄いね、イデアくんちょっと見ただけでわかるなんて!」
そう小声言って、横に座ってるイデアの目の前にあるディスプレイを見るために、肩を寄せるケイトの積極性ににGJを送り、イデアを見ればヒョォアァ…と小さく息を吐くような悲鳴。
そこは違うだろう!おい、もうちょっと頑張れ!なんだっけ?ギャルゲでよくあるシュチュだろ?どう見てもお前の横にいるのJK(概念)のようなもんなんだからな!
と思ってたら単元の終了の鐘が鳴る。
「あ、せ、拙者ごときがいきなり声をかけたり正直キモイですね、はい」
「もう、なに言ってんの?イデアくんそんな…」
どんっと、教室を出るために席を立った隣の席のオクタ生ナイスアシスト!
おされた拍子にイデアの言動に覗き込んでいたケイトとイデアの距離が縮まった!ん?何か様子が…?
ぶつかったオクタ生も振り返り「悪るい」とわざとらしい謝罪を口に二人を見れば、イデアが丁度よくケイトの口の端にキスをしている。
まぁ、事故なんだけどな?
二人とも固まったまま、ぎこちない動きで身を起こしたイデアの青い髪がぼふんと赤く燃え上がったと同時にがたりと音を立てて立ち上がり、もつれる足をそのままに「あばば…陰キャがこんな、や、ホントもうこれ消えるべき?いや消えよう…」教室を走って出て行った。
や、おい、逃げんな?イデア、帰ってこい!
「あ…はは…えっと俺は大丈夫」
顔を徐々に赤くしたケイトが、オクタ生に少し困ったように笑う。いたたまれねぇ…今この教室にいる大半が思っている。たぶん、逃げられた事に泣きそうになってるのはまぁ、すまんが…そこはせめて一緒に連れ出せ!
とりあえず解散し、数日後。
ひたすら逃げるケイトと、それを追っかける青いタブレットが人のいないところで、生身になり捕まえるお話はまた、後日!
ある日3Bで無事下馬評最下位からの脱出3位おめでとうカラオケ大会に突入。
もちろん逃げる算段しているシュラウドを捕獲し、無理矢理連行したシアタールーム。
それぞれ歌っているなか、隅っこで膝抱えて座ってたシュラウドに、なんか歌えよってノリに酔った奴が入力機を超絶無理矢理押し付けると絶望顔したシュラウドは逃げられないと、周りを見た、そこにいて目が合うケイトに慌てて機会に視線を落とす。
そうしているうちに、誰からか今からラブソング縛りで行くぞ!はぁ?バカじゃねぇ?ここ男子校だぞ?とやじってるのに、ガチにキレタ表情のシュラウドが曲を入れている。
そうして、すぐにシュラウドの番が来て、あれ?このイントロ俺知ってるわ…ある種マニア向けのゲームソング、ゲーム好きのイグニの奴がめちゃ進めてきてやったわ…それの主題歌だ。
正直に言おう、お前その少しの低温ボイスに、時々伸びる声と時々感情の混じる歌詞と、そのふわりと目だけで笑う表情で歌うとか卑怯だろ?
お、ケイトの奴がめっちゃ見てるじゃん、お前その顔どうした?真っ赤じゃね?
「あ、陰キャがラブソングとかすみません」って、静まり返った部屋の中、外したと思ってめっちゃ焦って部屋からそそくさ退場…その後を弾かれたように瞬きしたケイトが携帯だけ鷲掴んで追いかけて行った!
「…あいつ歌上手いな」
「や、あれは神曲でありますし」
「うん、あれスゲェ良かった」
徐々に正気に返ってきてたこのゲームと好きなことには饒舌になるイグニ生にこのゲームだと説明されながらざわつきを取り戻していく。
「なぁ、あいつら…」
「この前から付き合ってるみたいだぞ?」
「あぁ、やっぱりか?」
「やっとか…でも結局あいつらくっついてもあんま変わりなくね?」
「あーまぁそうだけど、そうじゃなくねぇ?」
「めでたいってことで、飲み物いきわたったか?んじゃカンパーイ!!」
こうして、まだ続いていくカラオケ大会という反省会。
ちなみに後日、クル先の3B大量課題提出反省会のカラオケでケイトが唄ったラブソング。
目を伏せて掠れるように消える声と表情に「あぁ、ダメ絶対惚れる」って顔覆ったイデアに!突っ込みいれたデアソムニア生がいてだな
「惚れねぇよ、まぁちょっと雰囲気あると思うけどな」
「思ってるんじゃないですか!!」
シュラウドがあわあわしてなタイミングbadboyなバカが「惚れるわぁー抱いて」とか揶揄ってヤジ口走っちまったんだよな。
「ケイト氏は抱かれる方!!解釈違いっ………あ……」
ってな…すっげぇいつものシュラウドよりもはっきりと言い切った!お前そんな声出せるんだな?
その瞬間なにを口走ったか分かったシュラウドは、キョドって転移魔法が突如足元に発光し、ケイトを連れて一瞬にして消えた。
「なぁ…シュラウド手出すの早くね?」
「まぁ、あの子たちやっと春が来たんですし?」
「そうですねぇ…良かったよかった」
「あれ?マイク持って行っちまってねぇ?」
「どうするよ?」
まぁもどかしさは未だにあるがそれも微笑ましく見てられる!
そう話しているうちにまた歌いだしたり駄弁りだしたりしてたら、テーブルの上にそっと転移魔方陣が光りマイクだけ戻ってきたのには思わずそれに気づいた奴らで笑った。
嫌々ながらもケイトがいればついてくるシュラウド、変わったないいほうに。
「おいマイク帰ってきたぞ!」
「よかった、錬成しなきゃいけないとこだったな」
「俺結婚式に歌うの今から決めとくかな…」
「誰の?」
「や、あいつらの」
「呼ぶかな?」
「呼ばなくても行くだろ?」
あいつらの結婚式の二次会にでも歌う曲は何がいいかちょっと楽しくなってきた。
まぁ、今は…まぁお幸せに?