酸いも甘いも ガキの頃から周りには見えていないものが見えていたオレだから親にさえ疎まれていて、唯一誕生日を祝ってくれた田舎の爺さんもオレが小学校に入ってすぐに亡くなった。
何処にいても疎外感を感じていたオレはこの日を迎える度に何故自分が生まれてきたのか自問自答しては寂しさや孤独に蝕まれそうになる心にガッチリ蓋をして生きていた。
正直昔から誕生日なんてあまりいい思い出もなかった。
だからこうしてオレなんかの為に美味い食事と、綺麗にデコレーションされた家族三人で食べるには大きなホールケーキを準備して帰りを待ってくれる温かな家庭を持ててこの上なく幸せだ。
息子が反抗期を迎えて成人して一緒に酒を酌み交わしながら語り合って、新しい家族が出来てオレ達夫婦もゆっくり歳を重ねて…なんて話が飛躍しすぎかも知れないけれどこれから先もずっとこの幸せが続いてほしいとそう願っている…
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