Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    rainbow_ryoki

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 👥 🙏 🍡 🌃
    POIPOI 31

    rainbow_ryoki

    ☆quiet follow

    七月あきけワンライ企画 土用の丑
    です。 ちょっと整えるの+したら一時間こえました……

    #暁K

    どようのうし土用の丑の日

    「うなぎ、かあ」

    コンビニで壁に貼られたポスターを見て、ぼんやり呟いたのは暁人だ
    本当に独り言なんだろう、その後なんの未練もなく買い物を終えて次はドラッグストアだ、と言った

    土用の丑といえば鰻 そしてそれが不漁になり、高級になり、スーパーやコンビニでは予約制となって数年が経つ
    コンビニの予約とはいえ高価だ、子どもの頃を思い出してみたがこれほど高価なものではなかったと思う
    当たり前のようにそば屋でもっとも高価なメニューではあったが今ほどではなかった、せいぜい二千円以内だった

    暁人は生まれて22年、自分の半分程と言うことを考えると胸のどこかが痛むような気になってきたがそれは置いておいて

    ……食わせてやりたい できれば、ちょっと良い物を 腹いっぱいとは言わないが、ちゃんとした一人前を

    「暁人、次の土曜なんだが空いてるか」

    「もしかしてデート」

    「仕事だ、お前の手を貸してほしい、午後からは飯いくぞ」

    「なんだぁ でもご飯奢ってくれるなら嬉しい」

    そうして、オレ達は仕事という名目でとある湖に来た

    「五行思想ってのがある」

    道すがら、これから行われる行事についての説明を兼ねて話す

    「五行、木・火・土・金・水 この世のすべてはこの五つの物で構成されているという思想だ」

    「なんか聞いたことあるかも、風水?みたいな?」

    「そうだな、よく聞くのは風水だろう そして相剋と相生ってものがある」

    水は火に剋ち、火は金に剋ち、金は木に剋ち、木は土に剋ち、土は水に剋つ
    木は火を生み、火は土を生み、土は金を生み、金は水を生み、水は木を生む

    「オレ達が使う、エーテルもおそらくこの五行思想に影響されている」

    「土、はガード? 木っていうのは……風?」

    「よくわかったな、木は風だ 金は未確認だが冥貨かもな」

    「なんとなくわかった、けど今回はそれで何するの?」

    「これから向かう湖の近くにご神木があってな、その兄弟分の木が穢れてる」

    オレ達がこれまで対処してきたのは人の負の思念などが原因な物が多い

    「観光客がな、いつからか木の割れ目に硬貨をねじ込んで願い事をし始めた」

    「ああー、そういうの見たことあるかも」

    「金は木に克ち、金は水を生む……湖と木は地下水脈と近い、つまりこのままだと土砂災害が起こる可能性が高い」

    神主兼地主の家系の者がこのままではまずい、とのことで相談を持ちかけてきた
    こういったことは本来なら、硬貨の除去や土地を整理するなど物理的な仕事だが
    オレ達の札や破魔の弓を作るのに協力してくれた者の縁者であることから断るわけにもいかなかった

    「今回は風のエーテルで微量の栄養を流してやりながら、金を取り除く」

    「それってものすごく面倒な作業じゃない?」

    「面倒だよ、まあちょっとは弾かせてやるからあとは根気だ」

    そうこう言っている間に目的地に着いた、すこしだけ高台にある神社から、山道をすこしだけ開いた下がる道
    その先に縄が巻き付いた巨木があり、その少し後ろにある木 遠目から見ても解る、空気が違う
    どんよりとした空気の中に、重く暗い圧力のような……

    「うわ……」

    思わず暁人が声を上げる、良く見ればそこいらに倒れかけの木魂が数体いる
    神主は後はお任せします、とそそくさと去って行った
    どうやら見えはしないが感じるらしい

    「よし、さっさとやるぞ暁人 可哀想だが木魂はあとだ」

    「僕がお金を取るの?」

    「爆発しねえ程度にビックリさせた後、風のエーテルを生糸みたいに細くして貼りめぐらせるコントロールが出来るなら代わってやる」

    「大人しくお金を取ります……」

    「よろしい 行くぞ」

    木の中心に、掌にのせた風のエーテルを凝縮して真っ直ぐに叩きこむ

    「っ!」

    バンッ っと破裂するような音がした 木は破裂していない、まずは成功
    死にかけの木に電気ショックで心臓を無理やり動かしてやるイメージだ
    いくつかねじ込まれた硬貨がバラリと落ちる、それでも四分の一だ

    「もう一回行くぞ」

    バチッ 今度は木全体が揺れた、また同じくらいの量の硬貨が落ちる
    木全体の揺れが収まり、当てた手の奥から鼓動のようなものを感じる
    それを逃さないようにエーテルを細く、細かく分けて傷口を覆うようにイメージする

    「よしッ、このまま少しずつエーテル流し込んでコイツを活かす、その間に全部とれ!落ちたのは後でいい!」

    「了解!」

    その後暁人の頑張りもあり、想像以上に早く硬貨を抜き取ることができた

    「あとはコイツだな」

    一番大きい木の割れ目の奥に指を突っ込む

    「暁人、ちょっとオレの背中に触れながら木を霊視しろ」

    「うん」

    暁人から波紋状に光が広がる、目の前の木の奥にもっとも大きい金属が映し出される

    「……よしっ これ、だっ!」

    引き抜いたものは錆ついた金属の塊だった

    「なにこれ」

    「……古銭だな、和同開珎とかそういうのの連なった奴だ」

    「これが原因?」

    「最初は落とし者だったかもしれないが……今となってはわからん、ま、これで水害は免れるだろうな」

    「あ~結構疲れた……」

    「まだ拾うのが残ってるぞ」

    「え~」

    「拾わねえと木魂が死んじまうぞ オレも手伝うからさっさとやって飯食いに行くぞ」

    「はぁい」

    その後は黙々と硬貨を集めて、袋に入れ、木魂を少しだけ栄養のある土の上に置いてやり
    すこしだけエーテルを与えてやると指に手を置いて揺れていた 礼のつもりなんだろう

    「こういう木魂の姿を見ると、ちょっとだけ気分が晴れるね」

    「ま、悪くねぇな」

    「ちなみにそのお金どうするの?」

    「あとは神主の仕事だ、古銭だけは郷土資料館あたりに保管しても良い 念や呪いの類はないからな」

    社務所の神主に事情を説明して、集めた硬貨と、今後の土地の管理のコツを教えてあとは解散だ

    「あれ、今回仕事料なし?」

    「金はない、が今日この後行くところはあそこの神主の奢りだ」

    「へー現物支給?」

    「まあついてこい」

    そう言ってとある料亭に着くと、暁人はおお、と声をあげた
    掛け軸、品の良い壺、漆塗りの食卓

    「高そう……」

    期待に満ちた声、腹ペコの若者はこれから何が食べられるのかとソワソワしている

    「ほら、来たぞ」

    黒い漆塗りの重箱、そして吸い物の器

    「わ……これって」

    蓋を開く、ほわ、と薄い湯気が上がる
    鼻をひくりと動かして暁人は目を輝かせた

    「土用の丑だからな」

    「仕事を今日にしたのってこのため?」

    「土用も五行思想の一種だ、本当は土いじりは避ける方がいいんだが、ま、コレでチャラだろう」

    「高いよね?」

    「あそこの神主に特別に口聞いてもらったが……そこそこ、な」

    暁人は両手を合わせてチラチラと鰻を見ている

    「そこの湖の淡水鰻だ、なかなか食えるもんじゃねえぞ」

    「すごい、一尾入ってるの」

    「そうだぞ、あとでオレのと白焼きも来る」

    「しら、やき……?」

    「来てからのお楽しみだ まあ、食えよ」

    「うわ、うわ……おいしい! 皮もグニグニしてないし、香ばしい……タレも甘くておいしい!」

    もふもふ、とまるで音が聞こえてきそうな食べっぷりだ
    思った通り、食わせてやって良かった 見ているこっちが楽しくなる


    「肝吸いもあるぞ、飲んどけ」

    「きも? うわ、これ? ちょっと気持ち悪い」

    「そう言うな、ホルモンみたいなもんだ」

    「んん……あ、思ったより普通に食べられる」

    「そうだろ、精が付くぞ」

    「んふふ、精を付けさせてどうするの?」

    「それは後のお楽しみだ、宿もとってある」

    「んっ……ぐ…」

    暁人は喉をつまらせたようで、冷めた肝吸いを流しこんだ

    「おい、大丈夫か?」

    「け……KKっ あの、いまそういうこと」

    「嫌ならキャンセルするか?」

    「っ遠慮なくいただきます!」

    喰い気味の返事に、喉を鳴らし笑ってしまう
    かわいいやつめ このあとキチンといただかれてしまうために、オレも精をつけなきゃな?
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍱🍱⏩🏩🏩🌋❤😍❤❤❤❤🙏🙏🙏🙏☺☺🍴🍴🍴🍴👏😍😍😍😍😍❤🙏😊👍👍👍☺☺☺😍😍🙏🙏🏩🏩🏩💖💖🙏💖🙏🌲🌳🍱🍱😋😋💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    リョウ

    MOURNINGED後みんな生きてる世界線なのに幸せにならなそうな暁→→→→→Kくらいの暁Kです。
    病み気味な闇思考暁人くんの思考がうるさい話。需要はないだろうけど思いついてしまったから書きました。供養!
    繋がらない想い 繋がれた糸「僕はKKのことが好きです。付き合ってくれませんか」
     アジトの一室。夜もすっかり更けて室内には僕とKKだけしかいない。
     なんの捻りもない愛の告白を口にすれば、KKの目が見開かれた。けれどそれはほんの一瞬で、彼は目を細める。
     ついにきたか、とでも思ったのかな?
     そんな風に邪推してしまうのは、僕がKKに気があるということをあからさまに態度に出してきたから。

     あの事件の後——まるで何事もなかったかのように僕らは渋谷に戻っていた。みんな生きたまま。こういうのを奇跡と言うのだろう。そして、生身のKKを目にした僕は決意したんだ。絶対に彼を離しはしないと。
     適合者になった僕はKKのアジトに出入りするようになった。事件以降、頻度は落ちたとはいえ怪異は起きる。今まではKKが一人で解決していたみたいだけれど、無理をしていたのは明白だ。だから僕は手伝いを申し出た。KKは態々面倒事に首を突っ込むなって反対していたけれど、凛子さんが僕の援護をしてくれた。一人でやれることには限度がある、でも二人ならって。なにより、あの夜の実績が大きい。その話を出されたらKKもNOとは言えなくなったみたいで、試用期間の条件付きで仲間に加えてくれた。
    2304

    recommended works