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    超短いです

    #幸真
    koujin

    だってまるで夫婦みたいじゃないか「真田って、俺のことを名前で呼ばないよね」
    「なんだ、藪から棒に」
     真田は、祖父に借りた本に目を落としながら、幸村の唐突な話に耳を傾けた。
    「俺は真田のこと、ゲンイチローくんって呼んでいたことがあるのに、お前は俺のことを名前で呼ばないなと思って」
     そう言うと、幸村は身を乗り出して真田に迫る。そして真田の読んでいた本を取り上げ、「ねえ。俺のこと、名前で呼んでみてよ」と言った。
    「たわけたことを……」
     返せ、と本を幸村から奪い返そうとすると、あれよあれよという間に幸村に押し倒される形になる。
    「……幸村」
     目で退くように訴えるが、好奇心でキラキラとした目をした幸村を前に、抵抗は無駄なことだと悟る。
    「……」
    「ただ『精市』って、呼んでくれたらいいんだ。真田」
     幸村は、真田の手をとってキスをした。最初は手の甲にキスをしたくらいで真っ赤になって「何をするか!」と叫んでいた真田も、10年近く経てばこういった行為に慣れてくるものだ。幸村をフン、と一瞥すると、大きく息を吸って……ため息をつく。そして、茹でタコのように真っ赤になりながら、幸村をまっすぐ見据えてひねり出すような声で言った。
    「精市……さん」
     
    「どうした、幸村。お前の望み通り下の名で呼んだ……ぞ……。幸村、お前」
     そう言うと、真田はくく、と笑い始める。
    「どうして笑うんだい」
    「幸村、顔が真っ赤だ」
     いや、精市さん……だったか? そう真田が言うと、幸村は観念したような顔で笑った。
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    みやこ

    DONEデートでネモフィラを見に行く高1の幸村と真田です。
    タイトルは、〜の手中とか〜の思いのままみたいな意味です。手も繋いでるし。
    友達とネモフィラ見に行って幸真ならこういうやりとりするかな!?って盛り上がった話をもとに書きました。
    イン・ユア・ハンズ 木漏れ日が降り注ぐ遊歩道を行く幸村の足取りはすいすいと水面を泳ぐ魚のようで、どことなく常よりもうきうきとはずむように思われた。後ろ手を組みながら鼻歌を口ずさんでいる。幾重にも重なった木の葉の間を透かした陽が幸村の白いうなじを焼く。踏み出すごとに髪が軽く揺れている。
     ナントカという花を見に行きたいのだと幸村は言った。いつでも咲いているわけではないのだ、と熱弁を振るわれ、毎月恒例のデートは電車をいくつも乗り継いで公園へと赴くこととなった。
     去年の冬に付き合い始めてから五回目のデートになる。最低でも月に一度、二人きりでテニス以外のことをしようと取り決めを交わしたのだ。それぞれが案を持ち寄り、これまで遊園地で観覧車に乗ったり、上野の美術館で印象派の絵画を眺めたり、江戸時代の風俗を学びに博物館へ行ったりもした。どちらの意見を採用するかは勝負で決めている。ジャンケン、腕相撲、コイントス……。テニスはきりがない。もう一試合と何かと理由をつけて延長してしまうから。
    2007

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