かわいい子 陽射しがカーテン越しに差し込んで、ソファに小さな陽だまりができている。最近根詰めて何かの作業をしていた真田は、珍しくその陽だまりの中で猫のように丸くなって昼寝をしている。幸村は持ってきた毛布をそっと真田にかけると、ぼんやりと真田が目を覚ました。
「ゆ、きむら……?」
「真田、起きたの」
俺は出かけるから、もう少し寝ているといいよ。そう言って、真田の前髪を上げて額にキスをする。真田は寝起きでまだまどろみの中にいるのか、ぼんやりと前髪を直す。そして、幸村の方を見たかと思うと、寝起きとは思えない力で幸村を自身の顔の前に手繰り寄せ、唇に口づけた。目を瞑って真田のキスを受け入れた幸村は、昼下がりの幸福を感じていた。
ぬるり。
幸村の口内に何かが侵入してくる。それは、幸村の舌先に少しだけ触れると、いけないことをしてしまったと言わんばかりに勢いよく引っ込んでいく。目を開くと、真っ赤な顔で眉間にしわを寄せている様子が見えた。そして真田は「出かけるのだろう」と言って、毛布にくるまってしまった。
本当にかわいい子だ。俺の真田。
幸村は真田にまとわりついた毛布を剥がし、顔をこちらに向かせる。真田の目は羞恥からか、水分をたくさん含んでいてなんだかおいしそうに見えた。
「真田」
幸村がそう呼び掛けると、真田はふい、と顔をそらす。
「真田、キスしたいな。こっち向いて」
そう言うと、真田はおずおずと幸村の方を向いて、軽く目を瞑った。幸村はゆっくりと真田に口づけをし、今度は真田の舌を絡めとる。舌先、舌の表、舌の裏までくるくると真田の口内を侵しつくすと、真田の舌を何度も甘噛みする。鼻で息することに慣れていない真田は、最初のうちは幸村の舌先に応えるように動いていたものの、舌をピンと伸ばしたまま苦しそうに喘ぐ。
「んッ、ぅ、ふぅ、ぅう」
幸村、幸村、限界だ。とでも言わんばかりに幸村の肩を叩くが、あいにく真田のことを離してやる気はさらさらない。角度を変えて何度も何度も口づけ、真田の口内を蹂躙する。できることなら真田と一つになりたい。のぼせ上った頭でそんなことを考えていた。
「ぅ、ゔ……ふ、はぁ」
真田の目から涙が零れ落ちるころ、幸村はゆっくりと口を離す。真田が肩で息をし、涙をぬぐう様子を見ると、もっと真田が困ることをしたい、恥ずかしいことをしたいと思うようになった。
「で、かけるのでは……なかった、のか?」
息も絶え絶えに真田が言い、幸村は「そう言えば」と自身の用事を思い出した。そして、スマホを取り出し「別日にしてほしい」という連絡をすると、真田とともにソファに沈んでいった。