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    しおえ

    @coacoaxaat

    小説類

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    しおえ

    PROGRESS蛙仔によるルポルタージュ。
    信九、蛙→九、大←九(執着)、モブ九の要素が入る予定。
    ミステリーもどきのため、一部不快感をあおる表現、グロテスクな描写を含みます。
    ※縦書きにつき、タップで全画面表示

    ※ 世界観についてはすべてフィクションです
    ※ 実在する地名、建造物、関係機関とは一切関係ありません
    ゆきてかえらぬ1、顔のない男 2026.1.29

     【事の発端】

     ――これは一人の男の一生を追いかけた、素人によるルポルタージュである。実在の地名や本件に無関係の人名は伏字を使用し、場所についても特定を避けるためフェイクを挟むものとする。

    ▽▽

     一月末から二月の香港は、朝晩の気温がぐっと下がる季節だ。とはいえ、日中はポカポカと暖かいことも多く、大抵の人間はシャツ一枚で過ごしている。しかし空が灰色に染る今日は、午前十時を回ったのに肌寒く、俺は珍しく厚手のジャケットを羽織っていた。一九八○年代に流行ったヴィンテージ物で、年季の入った黄褐色と、くたびれた羊革の質感が気に入っている。
     この体感温度は、建物の外だろうと中だろうと、特に変わりはなかった。外がどれだけ寒かろうと建物内の空調が止まることは殆どないため、頭のてっぺんから涼しい風が吹き付けてくる。特に此処は近所の婆さんが細々と経営している小さな茶楼で、空調の調整などという気の利いたことはやってくれない。年中開きっぱなしのガラス扉からは、たまに雨が吹き込んでくる。それもまた居心地の良さに繋がっているから、誰も文句は言わないが。
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    しおえ

    PROGRESS借金のカタ(?)として望遠鏡を押し付けられた王九のはなし。
    予定↓
    そのうち信九になる。
    モブがたくさんでる。
    アグリオスキロはかく語りき 王九は、幼き頃より修行を積んだ寺に見切りをつけたとき、その山を去り、今までの己というものを捨てて、街へ出た。そこで自ら獣のように生き、ある男に出会い、出会いは変革をもたらし、他者を排除し、尊ぶことをせず、十年ののちも倦むことを知らなかった。しかし遂に、彼の心に少しばかりの変化が起きた。
     ――ある朝、王九はあかつきと共に起き、太陽を迎えて立ち、わざわざ敵地とも呼べる城砦に侵入し、眠気に目をしょぼつかせる人物にこう言った。
    「俺たちはここ数ヶ月間、金にも得にもならねぇバカげたことを繰り返してきた。てめえはそれを〝幸せ〟だとか抜かしたが、俺は、そうは思わない。俺は生まれてからずっと自由だった。受け入れたいと思えた不自由は一つだけだ。けどな、他人に不自由をくれてやりたいと思ったのは初めてだ。はじめて、丘の上で人を待った。待ちわびたこともある。人の言葉に一喜一憂して、わけが分からなくなって、わけが分からないままに、それでも良いと思えた。本当は、それが煩わしかった。だが今は、その煩わしさも悪くねぇと思える。俺はてめえに贈りたい。このクソみてえな感情っていうやつを。てめえの中の、その幸福とかいうソレをぶち殺して、違うもので埋めてやるよ。同じところに堕ちてこい。俺がてめえに不幸ってやつを与えてやる。よろこべ、クソ野郎」
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