天国までのまがり道 バースデーケーキの起源は、古代ギリシャの時代まで遡る。月の女神アルテミスの誕生を祝うため、人々は蜂蜜たっぷりの丸いケーキを焼き、一本のろうそくを立てた。ろうそくの火は月の灯りを示しており、願いを込めて吹き消すという行為は、現代の文化にも通じるものがある。のちに、その文化は十三世紀のドイツに渡り、やがて様々な国へと広がった、らしい。
どうして王九がそんなことを知っているかというと、今さっき調べたからだ。スマートフォンとは驚くほどに便利な道具で、知らないことがあれば親指一本で何でも検索できてしまう。店の検索も同じことで、マップを開いて検索タブに〝ケーキ屋〟と打ち込めば、大学から歩いて行ける距離にある候補がこれでもかというほど出てくる。さすがの王九も困惑した。候補というのは無さすぎても困るし、ありすぎても困る。
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