『俺が思う幸せを君に』青八木は、静かな喫茶店の窓際の席で、目の前のシフォンケーキを見つめた。ふわっとした生地に、甘いクリームの香りが漂う。スプーンで一口すくって口に運ぶと、柔らかな甘さが広がった。
「…美味いな、これ」と呟きながら、頭に浮かんだのは手嶋の顔だった。
「純太にも食べさせたいな」
そんな思いが自然と湧いてくる。純太なら、このふわっとした食感に目を細めて、「うまい!」ってちょっと大げさに言うんだろうな。
青八木はくすっと笑い、ポケットからガラケーを取り出した。ケーキを撮ろうとカメラを向けるけど、画質の粗さに少し苦笑い。
「…まぁ、雰囲気だけでも」とシャッターを切った。手嶋にメールで送ろうかと一瞬考えるが、「こんなんで送ってもな…」と照れくさくなって、ガラケーをパタンと閉じた。
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