『君との距離』放課後の教室は、夕陽のオレンジ色に染まっていた。窓の外では自転車部の部員たちが片付けをしながら、笑い声が響き合っている。私はカバンを肩にかけグラウンドに出ると、部活終わりの泉田くんの姿を見つけた。
「○○、いつも待たせてごめんね。」
泉田くんが謝りながら笑顔で駆け寄ってくる。その声は低くて、どこか安心させる響きがある。一年生の頃から付き合っている彼は、いつもこうやって部活終わりに待ち合わせをしている。同じクラスメイトで、同じ道を歩いて帰るのが私たちの日常だ。
「大丈夫だよ、行こう」
私は小さく頷いて、彼の隣に並ぶ。泉田くんは背が高い。私の頭ひとつ分以上ある彼の肩は、いつも少し遠く感じるけど、こうやって一緒に歩くときは不思議とその距離が気にならない。
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