「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」
その口ぶりはひねたことばのわりに遠慮がなく、そこに込められているのは不安や自己猜疑でなく眼前の私をこそ糾弾する意思だった。なるほど、と、理解に詰まったときの常で、まず胸中でそう呟いておく。なにもかも、「なるほど」と唸ることから関係は始まる。
「――申し訳ないんだけれども」
みずからの声音から皮肉や憐憫の見出されないよう、努めて声帯から力を抜き、妙に小汚ない布を被った男に向けてただ直線にことばを放る。
「私は、審神者なんて仰せつかってはいるが刀剣にもこの国の歴史にも疎くてね。〝うつし〟というのは、なんなのかな」
対人関係においては常に補完を目指すくせが、ひねたことばに対して素直な問いを発させた。私の無教養に呆れたのか、あるいは己の無知を開けっぴろげにさらす姿に虚をつかれたのか。男は黙りこんだ。
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