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    #うちの審神者と初対面 〈薬研藤四郎〉

    ##うちの審神者と初対面

    「よお大将。俺っち、薬研藤四郎だ。兄弟ともども、よろしく頼むぜ」
    「……よろしく」
     童じゃないか、と叫ぶところをぐっとこらえたのは、我ながら見事だった。しかし表情までは繕いきれなかったらしい。少年の首がかくんと傾く。あわせて、こども特有の、その一本一本が内から光を放つようなつややかな髪がさらりと揺れる。
    「なんだ大将。なにか気になることでもあるか」
     首を傾げながら、その態度は超然としている。臆しもしない、媚びもしない。遠路わざわざ私の家までやってきた役人が、「審神者が率いるのは刀剣に宿った神々です。主たるあなたに直に手向かうことはないでしょうが、ゆめゆめ御無礼のないように」と言い置いていったことを思い出す。
    「いや、小柄なもので少し驚いただけだよ。君の他には、あの男士しか知らないものだから」
     言いつつ背後を振り返る。そこにはつい先ほど顕現したばかりの山姥切国広が立っている。鍛刀によって新たな刀剣男士を呼ぶには近侍の立ち合いが必須なのだそうだ。
    「俺は打刀だからな。そいつは短刀だ。そのせいだろう」
     無愛想な口調ながら、言うことは的を射ていた。改めて少年を観察すれば、佩いた刀はなるほど短い。得心するとともに、この小さな体と短い刀で戦えるものだろうかと、疑念はかえって深まった。しかし戦うために生まれたものを前に、それを問うのも憚られる。
     さてどうしたものか、と考えた間は長くはなかったはずだが、少年はまたも私の顔を読んだ。
    「短刀が実戦で役に立つのか、って顔だな」
     不躾であるはずの私の疑念を、少年は口の端を釣り上げて愉快そうに言い当てた。そして私の問いに対する答えは、ためらいのないその笑みが既に明白にしている。
    「確かに短刀は守り刀にされることが多いがな、俺はこれでも戦場育ちだ。なんならそこの打刀と、今ここで手合せをしてもいい」
     少年のことばに、私の背後の山姥切国広から不穏な気配が膨れ上がる。どちらも血気盛んなのは、やはりもとが刀であるからなのか。
    「いや、疑うようなまねをして悪かった。私は刀というものをよく知らなくてね。刀剣男士というものも。しかし君が『戦える』と言うなら、そのことばを験するつもりはない」
     両の手のひらを肩の高さに掲げて、ふたりの間に流れかけた鍔迫り合いの気配を打ち消す。
    「――ところで」と、もうひとつ気になっていた点を問うてみる。
    「君には兄弟がいるのかい」
     尋ねた私に、少年は先ほどの挑発的な表情とは打って変わって、外見の幼さにふさわしい若草のほころぶような笑顔を見せた。
    「ああ。大将が審神者を続けてりゃ、すぐ会えるだろうさ」
     刀の兄弟とはどんなものだろう。私には想像のつかない関係の在り方だ。わからないのだから、この場では棚上げにしておくしかない。
    「わかった。〈薬研藤四郎〉、君はこの本丸に来たはじめての短刀だ。これからよろしく頼む」
     下げた頭の上から「おう、存分に頼ってくれ」と明るく朗らかな声が、しかし力強い鐘の音のように、凛と響き渡った。
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