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    【刀剣乱舞】
    ※創作審神者
    顕現順にうちの審神者と刀剣男士の初対面を書くよのシリーズ

    #うちの審神者と初対面 〈山姥切長義〉

    #刀剣乱舞
    Touken Ranbu
    ##うちの審神者と初対面

    「俺こそが長義が打った本歌、山姥切。どうかしたかな? そんなにまじまじと見て」
     迷いない意思を示す両眉りょうびの弧、眼前の者を斬って捨てたとて揺らぐことなどないのだろう眦の まなじり 鋭さ。そして、傲岸なほどに確固として己を誇る自負に裏打ちされた、余裕の窺えるおだやかな笑み。
    「いや、何でもないよ。ようこそ、この本丸へ」
     政府からやってきた男は、みずから問いを投げかけておきながら私の返したことばに関心を示すことはなく、こちらを値踏みする気配を眼光の奥に堂々と潜ませながら滔々と語り出した。
    「君は少々特殊な経緯で審神者になったからね。政府としても、君と、そしてこの本丸に属する刀剣男士の情報の収集は密に行いたい。そこで俺が派遣されたというわけだ。わかったかな」
     よどみなくしゃべるそのなめらかな口調は山姥切国広が顕現したときに見せた不器用さとあまりに対照的で、この男とこの本丸の始まりの一振りたるあの男士との間に横たわる切れぬ縁を否応なしに勘案させられてしまう。
     山姥切国広から「写し」とは何かを教わりはした。しかしそれはただ刀剣という物の知識が増えただけのことで、その在り方がかれとこの男とにそれぞれどう作用しているのかは計り知れない。
     しかし、かれらの間にあるものはかれら自身にしかときほぐせまい。私のすべきは、この男と私のあいだにこれからどのような関係を築くのかを確かめることだ。そのために、
    「まず、確認しておきたいのだけれど」
    発することばはただ、私がかれをどう認識すべきかの一点に集中する。
    「私は君を、政府からの客人として遇するべきなのかな。それとも、この本丸に属する刀剣男士の一員と思っていいんだろうか」
     外から来たものか、内に在るものか。私はまず第一にそれを確かめねばならない。
     私の問いはかれにとっても意外でもなかったのだろう。事の運びに満足するように口元の笑みを深めた。
    「政府への報告の任を担ってはいるが、俺は刀剣男士だ。である以上、この本丸の戦力のひとつと考えてもらって構わない。戦いに俺が必要と思うなら、存分に俺を使うといい」
     なるほど、と胸中でそっとつぶやく。
    「わかった。ならば早速ひとつ頼まれてほしいのだけどね」
     私のことばに、男は顎をくいと上げるように首を傾げる。
    「政府から来たのなら知っているだろうけれど、役人からは男士を畑仕事にも割り当てよと言われていてね。今、近侍の山姥切国広が手始めに畑地の測量をやっているんだ。それを手伝いに行ってほしい」
     政府の要請、畑仕事、近侍の山姥切国広、その手伝い。散りばめた要素の一体どれに反応するだろうかとまばたきを抑えて観察する私の前で、男の眉は急速にひそめられ、目は細まり、唇は不服をあらわに歪んでいった。
     男の喉の奥で「ヒ……」と声が生まれかけるのを認めながら、それが音となる前に私はさらにことばを重ねる。
    「案内が必要かな? 〈山姥切……」
     男の視線が、侮蔑にさえ見える強い光で私を睨める。
    「――長義〉」
     名を呼ばれた男は、私を見限るように無言で羽織を翻し、靴音高く場を去った。その足音が確かに畑の方へ向かっていくことを確かめながら、少しばかり意地の悪さが過ぎたかと、反省がないではなかった。
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    DONE【刀剣乱舞】
    ※創作審神者
    顕現順にうちの審神者と刀剣男士の初対面を書くよのシリーズ

    #うちの審神者と初対面 〈小烏丸〉
    「我が名は小烏丸。外敵と戦うことが我が運命。千年たっても、それは変わらぬ」
     たとえば、晩春の山を藪を漕ぎながら登っていると不意に空気の変わることがある。「ここから先は人の踏み入る場所でない」という警告を全身に受ける。たった今自分が進めた一歩で景色のどこが変わったわけではない。足元に降り積む土になりかけの朽葉、腿の半ばまで届く数多の草々、高いところで太陽の日を透かす枝葉の緑。すべて、なにひとつ変わってはいない。
     しかし、そんなとき私は確かに山のなにか侵犯しているのだ。だから即座に、かつ息をひそめて振り返り、来た路を戻る。山で育つ私たちは、その見極めを子供の時分から少しずつ覚えて育つ。
     顕れた男士は、その頭頂が私の目線より低い位置にある。なのに私の心は、見下ろしているはずの男士をはるか仰ぎ見ている。里から山の頂を見上げ、日常であるはずのその風景に突如畏怖をあらたにする、あの心地。あの山路をもし警告に抗ってさらに進んでいたなら、そこで出会うのはあるいはこのような存在だったのかもしれない。
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