僕の友人はアルカイックスマイルがよく似合っていた。
それは二人で、片方は親友と言って差し支えがないのだが、その点において二人を分けてしまうのはとんでも無く無意味だと思うから、僕の友人はアルカイックスマイルがよく似合っていた。
それ以外の二人の共通点等精々教室での僕の席のすぐそばに彼らの席があったということぐらいで、彼らの片方は長期的な芸術を愛し、彼らの片方は生まれ出でる瞬間の流行を愛していた。
僕は彼らに非凡なものを感じていたが、彼らはお互いに関わりはしなかった。僕を通じて二言三言言葉を交わす程度で、それでもお互いはお互いを確実に認識していた。初めは疑り深く、そしてその内には明らかに軽蔑が含まれていただろう。
それが時間とともに一切揺らぐ事のない無の水面となったのは、何故だろうか。お互いはお互いに触れてはならないというように。僕を通してお互いを見つめ続け、よく言葉を交わしながらも自分の内側を見せるようなことはしない。それなのに二人は僕と共にいることが多くなっていく…つまり三人でいることが多くなっていた。
彼らは二人とも賢い男で、片方はそれを徹底的に隠し、片方はその賢さ以上に不器用だった。その為全くもって目立たない男が三人、教室の隅で集まっていたとして、そこでどんな物事が繰り広げられようと、流れていくこの世界は一瞬たりともここを振り返ることなどなかっただろう。
口だけを奇妙に歪めながら、彼らは今日も笑っている。僕の前で。
春になって二年生になった頃、僕と親友はクラス替えにより彼に出会った。僕席の前の席に座る彼は緊張しているのか、しどろもどろになりながらもいくつかの会話をし、僕は内心面倒に思いながらもお互いの趣味が共有できると知り、付き合い始める事となった。不器用で、僕には合わない男ではあると思うこともあったが、関わらないでいる必要はないくらいには賢い男に見えた。実際その通りで付き合うに連れ彼の考えには非凡なものを感じるようになり、その内に彼の不器用さも際立って見えるようになった。それでもうまくやっていける気はした。お情け程度で付き合えて、そのうちに彼の行動による何かの見返りが与えられる可能性がある男、そこら辺の同級生よりもよっぽど会話が楽しめる男であった。親友ほどではないが。
僕と親友は表向きは仲の良いようには見えなく。
彼も親友の事を大して気にしてはいなかった。
だが、実際の僕らは違った。