誓い指先が、姉さんの首に触れた瞬間――甘い感覚が、ぞわりと背筋を駆け上がった。
細くて、白くて、柔らかくて。幼い頃、童謡を歌いながら手を繋いだあのぬくもりのまま。けれど、今度は違う。繋ぐんじゃない。縛り、止めるんだ。
「……姉さん」
私は囁く。愛おしくて、どうしようもなく憎らしい名前を。
姉さんの瞳が私を見上げる。驚きと困惑、そして恐怖の入り交じった目で。私は、その表情に陶酔する。
「やめて、リチャード……」
かすれた声が耳に届く。今はもう拒絶の言葉すらも己を加速させていく。
両手でぐっと、強く、丁寧に、その白い首を掴む。細い骨が、僕の掌の中で軋む音がした。
「君は、私のものだ。私だけの、姉さんだろう?」
声が震える。嬉しさと興奮と、ほんの少しの涙が混ざって。
ああ、ずっとこうしたかったんだ。
姉さんが苦しそうに喘ぐ。喉が潰れ、声がかすれていく。爪を立てて私の腕を掴むけれど、その力は弱すぎる。私は逆に、その指先の抵抗を楽しんでいた。
「…おねが、い…リチャ…ド………」
必死に私の名前を呼ぶ姉さんが、とても愛らしい。
「離れないでくれ。誰にも、君を奪わせない。」
親指がさらに喉仏を押しつぶす。血の気が引いて、唇が紫色に変わっていくのが、はっきりわかる。
はくはくと声にすらならない小さな嗚咽を漏らすのを見て、快感が走る。
「……これで、ずっと一緒だ。」
自分に言い聞かせるように、姉さんに刻み込むように、そう呟く。
姉さんの目が揺れた。焦点が合わなくなり、私の顔を捉えられなくなる。
ああ、なんて綺麗なんだろう。
呼吸が止まっていく姉さんの姿は、まるで花が静かにしおれていくようだった。
姉さんの体が痙攣し、そして次の瞬間、力が抜けて腕がだらりと垂れて、私は手を離した。
姉さんが崩れるように私の胸に倒れる。その音が、部屋の静けさの中に妙に響いた。
抱きとめた姉さんの身体は小さくて、とくとくと鼓動が鳴っている。柔らかい姉さんの身体をを抱いていると、なんだか自分のものになったような気がして、たまらなく嬉しい。額、瞼、頬に順番にキスを落とした。
冷や汗で濡れた白い首元には、所有の証がくっきりと残っている。
この痕が治るのが少しでも遅くなるようにと願いを込めて、もう一度キスを落とした。
息を吐いた。肺の奥が焼けるほど熱い。けれど心は、どこか冷え冷えとしていた。
騎士は微笑んだ。静かに、優しく。
「これでいいんだ、姉さん……君はもう、どこへも行けない。私が守るから。君は永遠に私の姫だ。」
掌には、まだわずかに姉さんのぬくもりと、小さな抵抗の痕が残っていた。その感触が愛しくて、自分の手にキスをした。
そして、静かに口ずさむ。
二人で謳った「騎士と姫」の童謡を。
「きみを守るよ、私の剣で……ずっと、ずっと……」
夜は深く、誰もこの部屋の中を覗こうとはしない。
だから私は、何度でも歌った。
何度でも、この誓いを胸に刻み続けた。