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    kyo9_thk

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    kyo9_thk

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    PPパロを描こうと思いましたが、ネタを思いついたら書きたくなったのでこちらに投稿します🙇‍♀️

    とある事件を通して、互いの気持ちに気づく二人のお話。

    R-18は無い予定です。描きかけなので内容変更等あると思います💦

    #敢高
    dareToBeHigh

    【第一章:川に浮かぶ花】



    長野の山間。まだ春の冷たさが色濃く残る朝、川沿いに立ち込める靄は、重く沈んだ空気を纏っていた。
    その川の土手に並ぶ規制線。
警察車両のサイレンも止み、赤い警告灯が静かにあたりを照らしている。川の中ほどには遺体を収容したストレッチャーが佇み、鑑識と警察官がその周囲を固めていた。

    「……女子高生の遺体だそうです。DNA鑑定で身元は確認済み。行方不明届は十日前に出ているとのことでした」

    高明は資料を手に、淡々と報告を口にした。声の調子も表情も変わらない。だが、その眼差しだけが、水面に浮かぶ一輪の花のように静かに揺れていた。
    その傍らで、長身をややかがめて水辺を見下ろしていた男──大和敢助が、吐き出すように言葉をこぼした。

    「……最近、自殺者が多すぎる。入水に首吊り、薬物。死に方はバラバラだが……なんか引っかかるな」

    高明が顔を上げ、目を細めた。

    「…えぇ、まるで誰かが、“死に方”を教えているみたいです」

    敢助は応えず、キラキラと光る川の水面を見つめている。

    「スマートフォンが遺体のポケットに入っていたそうです。ロックはすでに解除済みで、中のメモ機能に遺書と見られる文章が残されていました」

    上原が近づき、タブレットを差し出した。

    『ごめんなさい。私がいなくなれば、みんな楽になると思います。ごめんなさい。ごめんなさい。』

    繰り返される謝罪の文。悲壮感が漂う文面に、高明の表情はさらに険しくなる。

    「書かれた時刻は、発見の約五時間前。雨も降っていたはずなのに、デバイスは故障した形跡はない。……不自然ですね」

    高明の指摘に、上原が驚いたように瞬きをする。
    敢助は眉間に皺を寄せたまま、彼をちらと見た。

    「自殺に見せかけた他殺って線か……だが、証拠はねぇ」
    「はい。現時点では仮説にすぎません」

    しかし、高明の目は鋭く光っていた。犯人を許さない、という強い眼差しが敢助を見つめる。








    その後、遺体の搬送を終え、三人は本庁へと戻った。
    灰色の蛍光灯が照らす会議室。白いボードに貼られた地図と事件資料を見つめながら、上原が手元のメモをめくり、口を開く。

    「そういえば、最近自殺したという被害者は、年齢も職業もバラバラなのに、皆、一定期間、ある心療グループに通ってたって話を、聞き込みで耳にしたそうです」
    「心療グループ……カウンセリングかなんかか?」

    敢助の問いに、上原は頷く。

    「名前は“煉獄の会”。正式な病院ではなく、個人運営のカウンセラーです。心の悩みを共有し合うっていう触れ込みですが、詳細は不明です」
    「なら、行ってみるしかねぇな」

    敢助が立ち上がり、無言で高明を見やる。
    高明は「僕はもう少し現場検証を」と言い席を立つ。



    川辺に咲いていた、一輪の花のことを思い出す。流されながらも、なお水に浮かぶ花。

    この事件も、誰かの心の奥底で沈みかけた何かが、形を変えて浮かび上がってきたのではないか、そんな予感が、敢助の胸にじわじわと染み込んでいた。



















    【第二章:仮面の微笑】




    古びた山間の民家。そこは“煉獄の会”の拠点だった。
    石畳の道を踏みしめながら、敢助と上原は玄関の前に立つ。呼び鈴を鳴らし、暫くしてからドアを開けた男は、年の頃は四十手前。柔和な笑みを浮かべ、落ち着いた声で迎えた。



    「ようこそ、警察の方ですね。どうぞ、お入りください」




    室内には観葉植物が置かれ、アロマの香りが漂っていた。木目調の家具と間接照明が、古びた民家の雰囲気を打ち消すような、近代建築物のような雰囲気を醸し出している。
    男は、一切の警戒心を見せず、まるで旧知の友人に接するように話を続けた。

    「最近は相談者が増えましてね。皆さん、心が疲れている。そんな患者さんを救いたくて、この場所を開いたんです」
    「…具体的に、どういうことをしてるんだ?」

    敢助の問いに、柔らかく笑って答える。

    「ただ、話を聴くだけです。誰にも言えないことを、少しだけ吐き出してもらう。それだけでも、人は少し楽になりますから」

    言葉は理にかなっていた。だが、その雰囲気がどこか、違和感を残す。











    後日。警察署の会議室で報告を受けた高明は、静かに頷いた。

    「なるほど、……では、僕が、患者として潜入してみます」
    「……、は?」

    敢助が素っ頓狂な声を上げる。

    「僕の事件……家族のことは、県内では知られているはずです。“心に傷を負った警察官”という立場なら、警戒されずに入り込めるでしょう」
    「馬鹿言ってんじゃねぇ!お前、あんな怪しいやつのとこに、ひとりで──」
    「他に方法はありません」


    静かな声だった。だが、それは突き放すような強さを秘めていた。
    敢助は、言い返せなかった。
    ゆるりと口角をあげて微笑む高明。それが、どうしようもなく遠くに感じられて、喉の奥が焼けついた。















    【第三章:誰にも言えない言葉】




    高明の潜入から二週間が過ぎた。
    報告は毎回きちんと上がってきていた。記録も、経過も、完璧に整っていた。だが、大和の胸には、いつからか言い知れぬ不安が巣食い始めていた。


    ──高明は、何かを隠している。


    それは確信ではなかった。直感とも違う。
    だが、長年共に過ごしてきた中で培われた勘が、そう告げていた。








    ある夜、ふたりきりの資料室。敢助は缶コーヒーを二つ買って戻ってくると、高明のデスクに静かに机に置いた。


    「……で、最近の様子はどうだ」
    「順調です。いくつか興味深い話も引き出せました」

    高明は、いつもの丁寧な調子で答える。表情も変わらない。

    「……彼曰く、“誰かに本音を言う練習”が心理的な治療に効果的だそうです」
    「……本音、だと?」
    「はい、僕はどうやら、本音を抱え込みすぎている、と言われてしまいました」

    困ったように眉を下げて笑う。それすらもなぜか少し気に食わなかった。

    「それで、本音とやらは誰言うんだよ」
    「……敢助君に、ですかね」

    不意打ちのような言葉に、敢助は瞬間、言葉を失った。

    「……もし、仮に僕が、誰からも必要とされていなかったとしても。…敢助君だけは、一緒に居てくれますか…?」

    静かな声。だが、それは心の奥を震わせる力を持っていた。

    「……何だそれ。必要ってか……お前がいないと困るだろ」

    いつもの調子で答えたつもりだった。だが、高明の表情は、少しだけ寂しそうに歪んだ。

    「……ありがとうございます」

    その笑みは、どこか諦めを含んだ、寂しさを混ぜたもので。
    俺はその微笑みがなぜか頭から離れなかった。









    数日後、敢助は再び“煉獄の会”を訪れた。
建物の外から、ふと小さく聞こえてきた高明の笑い声に、思わず足を止める。
    ガラス越しに見えたのは、男と談笑する高明の姿。
その表情は、穏やかで……だが、それが余計に胸に刺さる。


    ──なんだよ、それ。俺の前では、あんな顔しねぇくせに。


    苛立ちと焦燥が胸を締めつける。理由なんてわからない。ただ、喉の奥が焼けるように熱かった。









    捜査会議の当日。会議室に現れた高明に、大和は思わず声を荒げた。

    「お前……あいつと、仲良くしすぎじゃねぇのか」

    高明は少しだけ目を見開いたが、すぐに表情を整えた。

    「……情報を得るための行動です」
    「そうかよ。だったら……いっそ、あいつとずっといればいいんじゃねぇのか」

    言いすぎた、そう思ったのも束の間。
    ほんの一瞬だけ、高明の瞳に傷ついた色が灯った。
    だが、すぐに表情は無機質な仮面に変わる。

    「……わかりました。もう、いいです」

    静かに、だが明確に告げて、彼は踵を返した。
    上原が口を開こうとしたが、敢助はそれを手で制する。
    自分でも、どうしてそんなことを言ったのかわからない。ただ、胸の奥が軋んで、言葉がこぼれ出てしまっただけだった。

    だが、取り返しのつかない言葉だったと、すぐに理解した。










    一週間後、上原のもとに一通のメールが届いた。

    差出人は、高明。
    本文にはたった一言。


    『これから彼の罪を暴きに行ってきます』

    添付されていたのは、録音された音声データと、不審な薬物の写真。
    上原の顔が青ざめる。

    「敢ちゃ、大和警部、……これ、諸伏警部、本気ですよ!?」

    その瞬間、大和は椅子を蹴って立ち上がっていた。
    胸の奥が締めつけられる。
    あの時の言葉が、高明をどれだけ傷つけたか。
今さら思い知ったところで、もう遅いのかもしれない。
    それでも、今度は間違えてはいけない、そう思った。










    【第四章:支配の先に】




    「高明!!!」


    扉が激しく開かれる。
人気のない山奥の廃施設。かつては簡易宿泊所だった場所の一室に、男と高明はいた。
    窓から差し込むわずかな光が、埃舞う空間を鈍く照らす。
    その部屋の中心で、高明は静かに椅子に座っていた。

    男が口角を吊り上げ、敢助に視線を向ける。

    「いらっしゃい、警察の方。もう遅かったかもしれませんけどね。……彼、自分が刑事だってこととか、全部お話ししてくれたんですよ」
    「……!」

    高明の瞳は虚ろだった。焦点が定まらず、何を見ているのかもわからない。
    男は高明の隣に立ち、高明の頬を撫でながら、嬉々とした表情で口を開く。

    「素晴らしいですよ、諸伏さん。あなたほどの人間でも、心の奥に溜め込んでいたものがこんなにあったとは」

    返事はない。高明の表情は、感情というものをどこかに置き去りにしていた。

    「でもまだ隠してることがあるようなので……続きを聞いてあげてください。さぁ、自分の“本音”を言ってみましょう…」

    男の言葉に、高明の肩がぴくりと震える。

    「……小さい頃から、……ずっと……好きでした……敢助君の、ことが…」

    室内の空気が凍る。思ってもいなかった告白に、敢助は動けずにいた。



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