Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ポイピクミッシェルさん

    @michelle09_yjmk

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 8

    今年は月イチでSS書くぞ!と決めたので早速書きました。
    タイトルはそのまんまなので味気ないです😂
    セッフレのsgoが恋人になるハピエンのお話です。

    #杉尾
    sugio
    #現パロ
    parodyingTheReality

    2023年1月「…」
    「あ、おかえり」
    「…ただいま」
     また尾形が帰ってきた。
     帰ってきた、というのは少し違う感じだが、帰ってきた。
    「冷蔵庫、開けるぞ」
     ぼそりと呟くように言って尾形は冷蔵庫から麦茶のボトルを取り出した。
    「はい」
     俺が花柄のコップを差し出すと「ありがと」と言って受け取り居間まで行ってそれをテーブルに置き、自分も座った。尾形は自分で注いだ麦茶を一口飲んで、肺ごと出てくるんじゃないかというほどの大きなため息をついてテーブルに伏せった。

     尾形はこの家の住人じゃない。お隣さんだ。だから帰ってきた、はおかしい。そして俺たちは家族でも恋人でもない。まあ友だちと言えば友だちだが何もないと言えば嘘になる…そんなちょっと後ろめたい間柄だ。小学校の頃からのツレで「目つきが悪い」とか「態度が悪い」とかいう理由で喧嘩から始まった腐れ縁、だったはず。詳しい所は忘れてしまったくらい過去の話だ。その割にはいい歳になった今でも何となくずるずるとここまで来た感じ、と多分尾形は思っている、と思う。
     実は俺には過去の記憶がある。明治時代くらいかな、侍はいないけど洋服のような着物のような服装だから多分そう。そういう時代背景はかなりぼんやりとした記憶だから別にそれはあってもなくてもあまり関係がないかもしれない。そこには俺もいて尾形もいて。でも今みたいに一緒にいるような間柄じゃなくて、むしろものすごくいがみ合っていて…というかそんなもんじゃなくて死ぬの殺すの言い合う関係だった。なのに今尾形は俺のセフレだ。人生何が起こるか本当に分からない。俺がそれなりに、はっきり記憶があるのだからきっと尾形も少しくらいは覚えていることがあるんじゃないかと一度訊いたことがあった。そうしたらあいつは「何のことだ」「いつものメルヘン話か」と俺を鼻で笑った。こっちが真剣に訊いているのに。そこからはいつも通りに喧嘩をした。喧嘩をしながらああ、こいつには記憶がないんだなと思った。だけど腹の立つことにこういう癇に障るものの言い方はちゃんと持ち越してきているから記憶云々とは違う所で俺たちは繋がっているんだろう。などと言ったらきっとまた揶揄われるから言わずにいる。

    「どしたの今日は。やけに疲れてんじゃん」
     尾形の向かいに座りながら俺は持ってきたビールのプルタブを開けた。ぷし、と気の抜ける音が部屋に響いて、それを皮切りに尾形がぼそぼそと喋り始めた。
    「まただ。またあれだ…どうしてみんな俺に結婚しろと言ってくるんだ…」
    「あぁ、いつものやつね」
     テーブルに伏せたまま尾形は再び大きなため息をついた。たった二回のため息だったが俺んちの居間から全ての幸せがシッポを巻いて逃げていく姿が見えるようだった。
    「そんなに結婚したきゃお前がすればいいと言ってやりたい…」
    「言ってくる人は大概もう結婚してるって」
    「俺はあいつらの息子じゃねぇ」
    「社会ってそういうもんなんだよ」
    「そういうもんか」
    「そういうもんなのよ」
    「はあぁ~」
     ひとしきり身のない問答を繰り返した末に尾形はまた深いため息をついた。あ、また幸せが逃げてった。
    「でもさ」
     俺は尾形の頭頂部を見ながらビールを一口飲んだ。
    「お前、結婚とか、興味ないの?」

     …自然に言えただろうか。聞きたいような、聞きたくないような、質問だった。
     俺はなんだかんだで尾形を憎からず想っている。どうしてだろう。ずっと前から、それこそ尾形が覚えていないずっと前から俺は尾形が好き、なんだろうな。でなきゃセックスなんてできないよ。尾形もそうだといいんだけどなぁ。でも分からない。思えば尾形からまともにこういう話を聞いたことがない。正確にはこの関係を終わらせたくなくて聞けなかった。興味があったらどうしよう。なのに、聞いてしまった。
    「ないね」
     そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、尾形は俺の質問をばっさり斬り捨てた。
    「興味があれば今頃もうしてる」
     そう言って尾形はテーブルに顎を乗せた。
    「ふぅん」
     俺は何事もないように装ってビールを飲んだ。
     それって、しようと思えばできるってことだよな。興味がないと知ってホッとしたのもつかの間、興味が湧けばすぐにできちゃう環境にいるんだ、と分かってちょっと胸に棘が刺さった。
    「なぁ、そんなことより」
     俺の顔を見て尾形はにやりと笑った。
    「俺を慰めてくれよ」
     胡散臭い笑顔のまま頭を右へコテン、と傾げた。
    「興味のない結婚を勧められて疲れてる俺、かわいそうだろ?
    慰めてほしいんだよ、
    お前に」
     たっぷりと間を置きながら尾形は言った。悪い顔だった。
    「逆にストレスかけちゃうかもよ?」
     ビールを飲み干して空になった缶を尾形の目の前でくしゃ、と握りつぶした。俺もきっと悪い顔をしている。胸の棘が思いのほか痛くて、今夜は優しくできないかもしれないと思った。
    「身体的ストレスなら、悪くないぜ」
    「明日の仕事に響いちゃうかもよ」
    「いっそそれで休めたらいいのに」
    「とか言ってても休まないくせに」
    「まあな」
     尾形は社畜の癖にいつもこういうことを言う。なんだかんだで真面目な性格だということを俺はちゃんと知っている。さすがは上等兵。あんまり関係ないか。
    「とりあえず風呂行ってこいよ、飲まずに待ってるから」
     俺がバスタオルを出そうと立ち上がると「要らん。入ってくる」と尾形も立ち上がり荷物を持ってのっそりと俺ん家を出て行く。俺ん家でまるで自分の家のように振る舞う尾形も何故か風呂と寝る時だけは毎回律儀に自分の家に戻る。尾形を特別な気持ちで見ている俺としてはできることならそういう所はなあなあでもいいのに、なんて思う。なんだか変な線を引かれたような、不可侵領域の壁を見たような、そんな気持ちで俺はいつも尾形の背中を見送る。そして尾形にも負けないような大きなため息をついて一人の時間を過ごすのだ。


    「待たせたな。なんだ、テレビもつけずに。辛気臭ぇな」
     俺が悶々としている間に尾形は静かに戻ってきた。洗いざらしの髪でいながらサマーニットと黒いパンツ。もういっそパジャマで来たっていい時間なのにいつもそう、外出仕様の格好だ。それもまた距離を感じる要素だった。自分から振った結婚の話で勝手にセンチメンタルになって、壁を感じて、へこんで。ばかな俺。でもそれだけ尾形にやられちゃってるんだ。ずっとセフレでいいと思っていたのに。どこで何かが狂ってしまった。
    「テレビなんか要らないだろ、セックスするだけなんだから」
    「…まあな」
     苛ついた口調で返したからか尾形が僅かに怯んだ気がした。そういうのはいけない。付け込みたくなるから。
    「行こうぜ、寝室」
    「いきなりかよ」
    「そのつもりで戻ってきたんだろ。することすればいいじゃん」
    「…お前がそれでいいなら…」
    「ん?」
    「行こうぜ、寝室」
     歯切れの悪い返事を訊き返そうとすると俺と同じことを言って尾形は俺の手を引いた。
    「慰めてくれるんだろ」
     悪い顔で俺を誘う尾形にはもう歯切れの悪さは残っていなかった。

     寝室へ入るなり俺は先導していた尾形の背中を押した。尾形はつんのめるように目の前のベッドに沈み、俺はうつ伏せの尾形をひっくり返して胸倉を掴むようにサマーニットに手をかけた。
    「おい、杉元。やぶけるだろうが」
     尾形が非難の目を向けてきたが構わない。俺にとってこの服は壁以外の何物でもない。それでも俺は尾形にそれを悟られたくなくて。
    「そういう気分なの」
     にっこり笑って嘘をついた。
     本当は優しくしたい。尾形の言う通り慰めてやりたい。だけど今日はどうしても許せない。自分も尾形も許せない。でもサマーニットはどんなに引っ張っても形を歪めるだけで全然破れなかった。苛々するのにどうにもならない、ばかな俺とおんなじだった。
    「好きにしろよ」
    「慰められないかも」
    「お前がそういう気分ならそれでもいい」
    「…」
     何だかんだで尾形はいつもそうだった。俺の意見を優先する。元々はお前が慰めろって言ったのに。そういう所にも今日はやけに苛々した。そして自分が蒔いた種が嫌な育ち方をしていることに泣きたくなった。
    「なんだ、気分じゃなくなったのか?」
     ああ、俺は今きっと酷い顔をしている。俺の顔を見て尾形が少し残念そうに訊く。尾形はただここへセックスをするために来ているのに。セックスをしない俺なんてお呼びじゃないよな、なんて考えてまたへこむ。
    「うるせぇ」
     もう何も悟られたくなくて俺は尾形の唇に、不躾にキスをした…


    「おい…おい、杉元」
    「なんだよ」
    「どういうつもりだ」
    「何が」
    「チンポ抜きやがれ」
    「…」
     そう言われる理由は分かっていた。だから俺は素直に尾形のお尻からちんちんを抜いた。
    「らしくねぇな、中折れなんて」
    「…」
     らしくないも何も、初めてだった。俺も若いし?尾形のこと好きだし?とりあえず腰振っておけば何とかなると思っていたのにだめだった。俺ってそんなにデリケートだったのか。プライドという骨組みを折られて心が更にへこんだ気がした。顔が、上げられない。
    「あの…
    「俺ではだめになったか?」
     俺の弁解を遮る形で尾形が呟いた。少し笑っている。
    「俺は、まあ男だからな。始めから無理だとは思っていたよ。今までこういうことがなかったことの方がおかしいよな」
     俯いたまま俺は尾形の方を見た。視界に尾形の萎えたちんちんが見えた。ああ、そうだよな、中折れちんちんじゃ良くしてやれるわけないよな、とまたへこんだ。
    「仕方ない…さよならだ、杉元」
    「え?」
     それは俺のセリフだろうと顔を上げると、俺よりずっと傷付いた顔をした尾形が明らかに無理やりな笑顔で俺を見ていた。それも本来俺がする顔だ。
    「なんで…?さよなら?」
    「セックスのできない俺なんてお役御免だろうが。こんなこと言わせるな」
    「いやいや待って。お役御免は俺の方だろ」
    「なんで」
    「だってセックスできない俺なんて…」
    「なんだお前、俺がセックスだけのためにここに来てると思ってたのか」
    「え、そうじゃないの?」
    「見損なうな、ばか」
    「じゃあなんで?」
    「お前なぁ…」
     尾形は大きなため息をついて「とりあえず穿け」と俺にパンツを投げつけてきた。そして自分も布団の横に畳んで置かれていたパンツを穿いた。
    「お前は顔がいいのに察しが悪い」
    「あ、どうも…」
    「褒めてねえよ…お前はどうして俺とセックスするんだ」
    「あの…」
     まるで説教を受けるように俺は尾形の前で、パンイチで、正座をしてもじもじした。この格好で告白させられるのか、俺…
    「はっきりしろ、杉元」
    「は、はい。好きだからです」
     あーあ、言っちゃった。だっせぇ。
    「ふーん」
     尾形は気のないような返事をしたがもそもそと胡坐を崩して正座をし、そっぽを向いた。全身がじわじわと薄ピンクに染まっていく。人に告白させといて盛大に照れるとか。こいつもなかなかにだっせぇ。でもそのリアクションに俺は期待してもいいと思ってしまう。俺は基本前向きだから。
    「あのさ、尾形さん。尾形さんはどうなの?」
    「すぐ調子に乗るな、ばか」
    「すんません…」
     尾形は立ち上がり、正座をして再び俯いた俺の頭をぐりぐりと撫でた。
    「あの頃とは違うんだ。せっかくまた逢えたんだから今度こそうまくやろうぜ、杉元くん」
    「え、おま…」
    「うるせぇ。そのまま撫でられてろ」
    「うん…うん」
     俺の視界に映る尾形の足がまたピンクに染まったように見えた。


     というわけで晴れて俺の恋人になった尾形は「もうお前に気に入られようとしなくていいよな」と毛玉だらけのスウェットで遊びに来たり勝手に風呂に入るようになった。
    「お前いつでも結婚できるんじゃなかったのかよ」と訊いてやったら「そんなもん相手はお前に決まってるだろうが、もだもだしやがって。お前が言わなかったら俺が言うつもりだったわ」と鼻で笑われた。

     …尾形、あの頃はかわいかったなぁ。今も別の意味でかわいいからいいけどね。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖😭😍❤💜💞💞💞☺🙏💞💞💒💒💒💒😍💘💘❤💕💘💖💖💒💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ポイピクミッシェルさん

    DONE月イチ企画の第七弾です。

    サイチくんが一人で🚬吸ってるだけのお話です🤭
    2023年7月 パンツごわごわ あー、煙草吸いたい。
     普段はあんまりそんなこと思わないのに急にそれはやってきた。なんだかすごく煙草が吸いたかった。俺は隣で眠る尾形を起こさないようにそっとベッドから抜け出した。

     尾形は多分、俺のことがすごく、すごーく好きなんだけど基本態度には出ないから。だから今も俺に背を向けて眠っていた。それがたまに無性に淋しいと思う時もあるけど今はそれがありがたかった。尾形に一ミリも怪しまれず俺は立ち上がり、真っ暗な部屋の中から脱ぎ捨てたシャツとパンツとズボンをかき集め、玄関先でそれを着て、スニーカーを履いて外へ出た。


     今日は夕方に雨が少し降ってアスファルトが冷めて、だから外へ出ても昼間の暑さが和らいでいた。ちょっとだけ涼しくて俺は嬉しくなった。俺のアパートの階段は鉄でできているから歩くとカンカンと音がする。ズボンの右ポケットに入っているスマホをチラッと見たら午前二時で。俺の部屋から階段までは距離があるけどもしかして、ひょっとしたら足音で尾形が起きてしまうかも。時間も時間だし、俺はゆっくり、踵から柔らかく一段ずつ踏みしめながら階段を下りた。
    2986

    related works

    hisoku

    DOODLE作る料理がだいたい煮物系の尾形の話です。まだまだ序盤です。
    筑前煮 夜の台所はひんやりとする。ひんやりどころではないか。すうっと裸足の足の裏から初冬の寒さが身体の中に入り込んできて、ぬくもりと入れ換わるように足下から冷えていくのが解る。寒い。そう思った瞬間ぶわりと背中から腿に向かって鳥肌も立った。首も竦める。床のぎしぎしと小さく軋む音も心なしか寒そうに響く。
     賃貸借契約を結ぶにあたって暮らしたい部屋の条件の一つに、台所に据え付けの三口ガス焜炉があるということがどうしても譲れず、その結果、築年数の古い建物となり、部屋も二部屋あるうちの一部屋は畳敷きになった。少し昔の核家族向けを意識して作られた物件らしく、西南西向きでベランダと掃き出し窓があり、日中は明るいが、夏場には西日が入ってくる。奥の和室の方を寝室にしたので、ゆったりとしたベッドでの就寝も諦め、ちまちまと毎日布団を上げ下げして寝ている。また、リフォームはされているが、気密性もま新しい物件と比べるとやはり劣っていて、好くも悪くも部屋の中にいて季節の移ろいを感じることが出来た。ああ、嫌だ、冬が来た。寒いのは苦手だ。次の休日に部屋を冬仕様をしねえとと思う。炬燵を出すにはまだ早いか。洋間のリビングの敷物は冬物に替えとくか。気になるところは多々あれど住めば都とはいったもので、気に入って暮らしてはいて、越してきてもう三年目の冬になった。
    3423

    recommended works

    ゆき📚

    DONE【sngk】【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅷ
    今回で一応最終回という風になっております。
    決めたら早いよ会社員、純粋猪突だ大学生、なんやかんやはなんやかんやです!な感じなっています。
    こんなに続くと思って無かったし書いている間に本編はえらい事になってて、いやはや…
    相変わらず諸々雑な感じですが
    大丈夫、どんなものでもどんとこい!な方よかったら読んでやってください
    【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅷ 「約束です。どんな形でもいいから守ってくださいね」
     そう言って笑ったあいつは結局俺を置いていった。
     初めからわかっていた結末なのに変わる事無く迎えたその事実に心はひどく冷え込んだ。
     みんなそうだと思って
     その考えは違うとすぐに否定し
     誰を責めればいいと思って
     誰を責める事などできない事だと言い聞かす。
     「約束ですよ」
     どうして俺を置いていく、置いて行かないでくれ
     
     *******
     
     「あれ?リヴァイさん?」
     自分の名前を呼ぶ声に顔を横に向ければ見慣れた人物と目が合って「やっぱりリヴァイさんだ」と改めて確認すると笑顔を向けてきた。
     「おぉペトラじゃないか」
     「どうしたんですか?あ、待ち合わせですか?」
    8611