イデ監④繋がっていたい。確かめていたい。
そうでなければ、君の輪郭を。失ってしまうような気がするから。
君が教えてくれたこの気持ちを、この体温を、ずっと感じていたい。
「…ねぇ、しゃぶって」
後ろから抱きとめた彼女の唇を撫でながら、耳許で囁く。きゅ、と口を引き結び戸惑う素振りを見せながらもゆっくりと、指を飲み込んでゆく。
形を、存在を、五感で拾って欲しい。
指の先まで、僕の形を覚えて欲しい。
喉の奥に指を差し込むと、ぐ、とえづきながらぎゅうと締め付けてくる。
滴る唾液を掬い取って、舐めて。
彼女の奥歯から前歯まで、かたちを指で一本一本なぞって確かめてゆく。
覚えたい、全てを。
君の性格、癖、表情、声、匂い、かたち。
全てが愛おしいから。
そして、覚えて欲しい。僕の全部も。
つい、君に押し付けてしまう。叶わないことは分かっている、これは僕の勝手な願い、我儘だ。
口内を犯しながら、目の前にある彼女の項に噛み付き、吸い付いて跡を残す。
この跡だって、時間が経てばいずれは消える。
けほ、と苦しそうに咳き込む君の背中をさすった。
小さく、柔らかい背中。
この背中に、どれだけの寂寥を抱え込んでいるのだろうか。
彼女の口から指を引き抜き、唾液で濡れた指を舐め上げた。仄かに甘い気がするのはきっと、僕の頭のバグに違いない。
「…手、出して」
差し出された彼女の指を咥えて、舐め上げる。白く、細くて、小さな手。噛めば、ぽきりと折れてしまいそうな儚げな指。
舌の感覚は指よりも鋭敏だ。
爪の形まで確かめるように舐めて、記憶する。
僕は、忘れない。
彼女の全てを記憶したいと思う僕は、何れまた、来るかもしれない離別を恐れているのだろうか?
彼女の寂寥の全てを、僕は埋めることはできない。異世界の家族の代わりはいないし、友人の代わりもこの世界には居ないのだから。
それでも。暫しの止り木でいる気は毛頭無い。申し訳の無いことに、僕は欲深いんだ。
万一、彼女が元の世界に帰りたいと言うのであれば。
僕は、快く送り出せる自信が無い。
それでも、元の世界を望むのなら。
せいぜい、逃れられるよう、うまく立ち回ってもらうしかない。
この僕から、もし、逃げ出せるのならば。