パトロールを終えた後、軽く一仕事してきたビリーが部屋に戻ると甘い香りがした。ちょうどお腹も減っている。お菓子だし作っているのはジェイかグレイだろうとあたりをつけ、ご相伴に預かろうとキッチンをのぞき込む。そこには予想通りにグレイの姿があった。なにやら真剣に鍋をのぞき込んでいるからこっそり近づいて驚かせようと思ったのをやめた。アツアツの鍋の中身をかぶれば、いくらサブスタンスの効果で傷の直りが早いといえどもかなりつらいだろう。そもそもわざわざ自らやけどを負いに行きたくない。
「I‘m home グレイ、なにしてるノ?」
「あ、おかえりなさい。ビリーくん」
気づかなくってごめんね、という彼が気にしないよう笑いかける。そのまま近づいて鍋の中身を見て見ると、なんだか紫みのある黒い液体がふつふつと煮立っていた。柔らかな甘い匂いがする。くうと腹の虫が切ない声をあげた。おやつだろうか?それにして食べ応えがなさそうだ。
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