アクアと君の足跡 1話 あの春の日、僕が見た桜は、真っ暗な部室の中に佇む人にとても似合っていた──
宮田アクアは、高校2年生だ。アクアは、決して陽気では決してなく、物事を冷笑しようとしても仕切れず、でもどこか底抜けの明るさがある、おとなしい太陽のような存在だった。
4月6日。普通なら新学期が始まる日。宮田アクアは、親の転勤により幼少期に住んでいた街に舞い戻ってきた。
宮田アクアの家族はいわゆる転勤族というもの。でも今回の転勤が終わったらしばらくないだろう。なぜならアクアは再来年には大学生になる。そうなったら独り立ちだってできるからだ。
「やばい。遅刻しそう…」
転校初日から遅刻なんてたまったもんじゃない。そんなことしたらクラスの僕の第一印象が最悪なことに──などといったことをアクアは考え、自分の全速力で走っていた。
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