かわいいはつくられるドロシーときたら私を堕落させることに命を賭けているといっても過言ではなく、私が何をしても無条件に甘やかす。
ちょっと髪をいつもと違う感じにアレンジしただけで「信じられないくらいかわいいですね」とかなんとか言うし、遠くから目が合った時にちょっとだけ手を振ったら任侠映画ばりの迫真の演技で胸を押さえてうずくまったりする。立ち寝で歯磨きしている私の後ろから腕組みして険しい顔で「こんなかわいく歯磨きできる人間存在します?」とか言ってくるし、朝干すのを忘れた洗濯物の存在に帰宅後気づいて落ち込んでいたらべったりぎゅうって抱きしめて「干そうというその心意気が偉いんですよ」とかなんとか甘やかす。
正直、よろしくない。
だってこんなべったり甘々になんでもかんでも全肯定されちゃったら、私がだめになる。
「だからね」
「はい」
「あんまり甘やかさないで。ちゃんと厳しくして。私がドロシーの愛情にあぐらをかいて堕落して、ドロシー無しだとなんにもできないだめだめな奴になっちゃったらどうするの? いやでしょ?」
「嬉しいし一刻も早くそうなってほしいです」
「も〜澄んだ目で異常なこと言わないで〜!」
ドロシーの肩をがんがん揺さぶったけど全然伝わった気はしなかった。たぶんこれは「怒ってる顔も可愛いな」って思ってる顔。ううん、「肩掴まれるのぐっと来るな」かも。むずかしい。ドロシーのこと、なんでも分かってるような気もするし、なんにも分からなくて頭を抱えてしまうときもある。
目を伏せてため息をついたら、吐息がもったいないとでもいうように、ドロシーがついばむみたいな一瞬のキスをしてきたので、あまりの早業にわらってしまった。なんなの、もう。