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    obrq二次創作置き場
    クロユヒちゃん

    ふれる口内炎ができてしまった。けっこうえぐい大きいやつ。

    「いた〜い………………」

    唸る私の頬に黒手袋の指先を添えて、口を開けさせて、クロードがじっくりと中を検分する。歯医者さんみたい。

    歯医者さんは何をするか分からなくて怖いけど(いや治療しかしないって分かってはいるけどとにかくあの見るも恐ろしい形状の器具をあれこれ突っ込まれるだけでめちゃくちゃ心が弱ってしまう)、クロードが私をどうさわって何をするかは全部分かってるから、怖くない。

    いや、この言い方は正しくないかも。だってクロードの私のさわり方にはたくさん種類があるのだ。毎回「こんなさわり方されたことない」「またこんなさわり方されたらおかしくなっちゃう」って思うから。ということはつまり、「何をされるか分かっているから怖くない」じゃなくて、「何をされるか分からないけど何をされてもいいしどんなことでもされたいから怖くない」ということなのだ。

    されたいよ、どんなことでも。

    「何考えてる?」

    頬を軽くつねられて、あひゃ〜、と変な声が出て、わらってしまう。

    「えー。歯医者さんのこと」
    「虫歯は無いが」

    クロードの黒い指先が口内炎の箇所を慎重に避けて奥歯をなぞる。舌が指に当たりそうになって、置き場に困る。

    あっさり指を引き抜いて、クロードは言った。

    「しばらくキスはお預けだな」
    「え〜っ!」
    「え〜っ!じゃない」

    それはそうなんだけど、そうなんだけど!

    「……やだ」
    「わがまま言わない」
    「ふ、普通のキスなら、いいんじゃないかな……?」
    「だーめ。絶対我慢できなくなってもっとしてとかって言い出すだろ」
    「いっ……わない、言わない、大丈夫、がまんできるから」

    絶対ぜったい我慢するから、お願い、おねがいクロード〜!と噛みついてシャツを掴んで揺さぶったら、クロードはわざとらしく考え込む顔になった。

    「ん……」

    キスしない宣言をされたからか既に限界になってしまっており、危機感がやばくなってきた。クロードは私に甘いから大抵のわがままは聞いてくれるけれど、私の怪我や傷をめちゃくちゃ嫌がるという面も持っており、この二つが悪魔合体した結果後者が優先されるということも考えられなくは、ない。ていうか今まさにそっちに完全に傾いてるっぽいし。

    「口内炎のとこつつかないように気を付けたら大丈夫だよ、クロードならそれぐらいできるでしょ?」

    しがみついたらクロードは一瞬頭をびくりと動かして、けれどにべもなく「だめ」と言い放った。

    だめだ。これはゆるしてくれないやつ。クロードはやっぱり、いっときのキスより口内炎完治RTAの方をとったらしかった。それはもう愛です。分かってるよ。分かってはいるんだけどそれはそれこれはこれ、もはや完治するまでの二、三日とかじゃなく今すぐクロードにキスしてほしい気持ちがおさえられなくなってしまった私は、閃いてしまった。

    「……いいよ。クロード『は』キスしなくて。私が勝手にするから」

    返事を待たずに、クロードの膝の上に乗り上げた。ほんの一瞬だけどクロードの瞳がまるく見開かれたのを確認して、ちょっといい気分になる。おどろいた顔、久々に見ちゃった。

    肩に腕をかけて、クロードのうすい唇の端っこに、ちゅ、とキスする。

    「待っーー」
    「待ちません。クロードだっていつも待たないでしょ。仕返し!」

    すっと通ったきれいなきれいな鼻筋。つるんとしたおでこ。紅潮した頬。ほんのりあたたかい耳朶。

    巧妙に唇だけを避けていろんなとこにキスしていたら、がばっと肩を押し返されてしまった。いつものクロードなら絶対しない力強さで、その余裕の無さに、たまらなくうれしくなってしまった。

    クロードの顔を見て、私はえへと笑う。

    「………………我慢できなくなった?」

    怖い顔のクロードは黒手袋の指先で口元を握っていて、でもさっきキスしたばかりの耳がきちんと素直に赤くなっているので、もう一押しだとドキドキする。

    「ね、おねがい。するのも好きだけど、私、クロードにされるのが好きなの」

    ダメ押しのようにじっと目を見つめれば、クロードは唸り声を上げて私の頬を両手で挟んだ。慣れた黒手袋の感触。この瞬間が世界で一番幸せかも。

    クロードの舌は私の口のなかでそれはそれはじょうずに動くので、結局一度も口内炎の箇所にはふれることはなかった。

    ほらやっぱり、クロードは私よりも我慢が効かなくて、私よりも私の身体のことを大事にしてて、私をさわるのが世界で一番じょうずだから。
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    🐤(旧:格)

    MOURNINGobrq二次創作置き場
    カイユヒちゃん
    ねむりカイゼは眠たいときの私をさわるのが大好き。

    「……君は、眠いとふにゃふにゃするんだな」
    「う〜ん………………」
    「起きてる?」
    「おきてる……」
    「本にしおりをはさんでおくぞ。140頁でいいか?」
    「うんうん………………」
    「ふふ、かわいいな。キスしても?」
    「うんうん………………」
    「全然聞いてないな」

    おかしそうな笑い声。わかってる、ちゃんと聞こえてる。どんなときでもカイゼの声だけはちゃんと聞いてるの、私は。もしもあなたのわるい手が寝巻きのすそから侵入してきたら、まずはちょっとだけだめでしょって怒ってみせるけど、私はそもそも頭のてっぺんから足のつまさきまでぜんぶカイゼのなんだからどこをどうさわるかなんてカイゼの自由で、だから怒るなんてありえない。ただの茶番です。これだけの思考がぎゅっとつまった私の「むにゃむにゃ」みたいな呟きを聞いて、カイゼはまたわらった。さっきのおかしそうな響きとはまたちょっと違う、どうしようもなくなってぽろんとこぼれた、みたいな、やさしいのに心臓がぎゅっと縮むような笑い方。ささいなことなのに、特別でもなんでもないふとした瞬間のことなのに、目の前にいる相手のことが不意にどうしようもなく大事に思えて、ずっとここにいてほしくて、ため息を吐くようにわらってしまう、そんな笑い方。古今東西ありとあらゆる人たちはそういう摩訶不思議な感情を「いとおしい」とかって形容したんだろうな。それってただしいんだろうけどさ、でも納得いかない。だってそんな五文字で完璧に言い表せるなら、私こんなにくるしくなってないよ。
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