魔性カイゼはその少女の姿を見つけるのが得意だ。
どこにいても、何をしていても、視界の中でそこだけずっと輪郭線が浮かび上がって見える。あざやかに目に飛び込んでくる。まるでひかってるみたいに、といつか言ったとき、彼女はきょとんとしてから、黙り込んだ。そうしてもじもじと言った。
じゃあ私、何しててもカイゼからは逃げられないってこと?
そういうことになると答えたら彼女は、口元をモニョモニョと動かして眉をひそめてしまった。素直じゃない表情とは裏腹にその耳が赤かったことを覚えているし、何なら今でも日に三度は思い出す。
カイゼはその少女の姿を見つけるのが得意だが、姿だけじゃなくて、感情を見つけるのも、得意だ。うすいやわらかい膜の下に隠れている、むき出しの色鮮やかななにかをそうっとつまんで、てのひらに乗せて、じっと見つめたり、ゆびさきでつついたり、吐息をかけたりして、返ってくる反応を見るのが愉しい。強情な人間が隠し持っているものを上手に引き出してみせたときの達成感と快感というのは、たまらない。
恥ずかしがり屋で、素直ではない彼女の輪郭線はきょうも陽射しに彩られてあわくひかっていて、カイゼはその下でめまぐるしく生成される感情を楽しげに見つめる。
その少女の感情を見つけるのが得意だ。そのやわらかくてやさしい、繊細な生き物みたいなかたまりが、あんまりにもいとおしくて、いじめてしまいたくなることが、多々あるほどに。
カイゼはその少女の心を見つけるのが得意だ。
そのあわくひかる輪郭線にふれてみて、はじめて、気づいた。
俺はたぶん、きっと、君を見つけるために生まれてきたんだ。