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    yctiy9

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    yctiy9

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    この人なら考えかねない。

    ホンファと蘭 一度見ただけで脳裏に焼き付く鋭い眼光。老いた本能でもそれが危険なものだと警鐘を鳴らす。青い瞳には普段の少女の無垢な輝きはなく、ただ暗く濁る。泥濘のようなそれは私の好奇心を引きずり込もうとしている。
     「蘭」
     このままでは不味い。これ以上引き込まれたら、この子『たち』にも手を出しかねない。
     「ほら、まずは拭き取って」
     深海の色はゆっくりと私を見上げ、じっと動かない。
     「血」
     動かない。まるで手負いの獣。伝承と違ってこの子には精霊の加護がないから、自分を落ち着かせることも傷を癒すこともできない。人間の欠点だ。
     「おばあちゃんよ。分かる?」
     途端、糸が切れたように強ばっていた体からは力が抜け、瞳には徐々に光が戻る。
     『おばあちゃん』その言葉は家族を表すもの。この子は母親から「家族を守る」使命を与えられている。だから先の言葉で私を守るべき存在と見なしたのだ。まだ幼い少女をここまで躾るのは簡単かもしれない。子供は純粋だから。日々、この家の間違った常識を刷り込んでいけば良い。だけど大人を怯ませる程の殺気を出せるのは、ひとえに古来より続くカオスの呪いと言っても過言では無いだろう。
     面白い。呪いの謎を暴きたい。
     「凄いわね、蘭。おばあちゃん、感心しちゃった。今度、おばあちゃんも一緒にお仕事したいわ」
     その瞳が陽から陰に切り替わる瞬間を見たい。
     「おばあちゃんじゃ、私には追いつけないよ」
     「ふふ、そうかもね。じゃあ陰から見てるわ」
     「えー、恥ずかしいからやだ」
     少女は無邪気に笑った。
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