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    mio_godfather

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    白紫bot(手動)

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    mio_godfather

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    白紫
    処女作

    そしてあれから あの日の立ち篭める香の匂いが、今思えばこの任務の始まりだったのだと、夜空に揺らめく焚き火の煙をぼんやりと眺めながら紫鸞は静かに考えていた。
     目の前には誘いの張本人である白鸞が地に腰を下ろして紫鸞と同じように焚き火を眺めている。湖面を思わせる瞳に火影が映り、漢室を拒むが如くの切れ長な目元は、今に限って言えば穏やかささえ感じられた。

     静寂な闇夜の中。目的の城まで辿り着くよりも先に宵が訪れてしまった中で、己と白鸞以外誰もいない、時折頬を撫でる冷風と遠くから聞こえる虫の声、そして耳障りな焦げる音を前にして、紫鸞は一言も発することなく佇んでいた。


     記憶を失くしていた頃と比べれば眠れるようになったものの、紫鸞は未だに、夜から朝にかけてまとまった睡眠を取ることが出来ていない。
     道中、それを悟った白鸞は紫鸞に声を掛けるも、
    『大丈夫だ』
     ばっさりと提案を一蹴されてしまっていた。

     心地好い暖かさに手招きされるかのように、紫鸞は意識を手放していく。
     あまりにも静かで、微動だにせず木に凭れたままの紫鸞を不審に思った白鸞は、
    「おい」「紫鸞」
     耐えきれず名を呼ぶのだが、
    「何も言わずに寝るやつがあるか……」
     久々の対面にも関わらず、普段と変わらずといった様子の彼に呆れと安堵を得たのだった。



    「しかし」
    「次の再会はもう少し後のことだと思ってはいたが」
     うつらうつらとした頭の中に、優しい声がこだまする。
     パチパチと弾ける炭の音に混ざってそれは続く。
    「もう二度と、お前の隣で戦うことはないと誓ったはずなのにな」
     いつの間にか、自分の頭が白鸞の肩に寄りかかっていた。それを彼は拒絶することなく隣で受け止めている。
     触れ合う部分が温かくて気持ち良い。睡魔に惑わされた自分の手が、どうやら白鸞の脚部の上で彷徨っているらしい。
    「やはり、我が片翼はお前以外ないのだ……」
    「何処を探しても」
     胸の辺りが熱い。急に汗をかいてしまい、それに気付いた白鸞が紫鸞を見て驚愕する。
    「起きていたなら何故言わぬ!」
    「……いや、たった今起きた」
    「抜かせ。耳まで紅くした奴が言えた台詞ではないわ」
     舌打ちをして白鸞が紫鸞の肩を押した。立ち上がり、先程いた場所に再び腰を下ろす。
    「今回はどうしてもお前の力が必要だったから声を掛けさせてもらった。お前と共にあることを決めたわけではない。ゆめゆめ忘れるな」
     そっぽを向いて言い訳を並べる白鸞に、
    「寝ていた間、ずっと話しかけていたのか」
     空気を読まず疑問をぶつける紫鸞。
    「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
     紫鸞としては、もっと白鸞の思いの丈を聞きたかったのに。
     自分が忘れてきた分だけ、おそらく彼の心は捩れ曲がっている。
     昔のように戻れるには思っていたより相当時間が掛かりそうだと、紫鸞は気付かれないように息を吐いた。
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    Replies from the creator

    mio_godfather

    TRAINING白紫
    やんわり事後描写あり注意
    すみません書いてる途中で飽きました……
    余韻 この世に生きる者の中で、己は最も紫鸞のことを理解している人間であると胸を張って堂々と言える。
     だと言うのに、それでも白鸞は紫鸞が何を考えているのかよくわからないときがあった。

     昨夜は互いの裸体を貪った。欲望を剥き出しにして自分も紫鸞も快楽に溺れたのだ。
     まさか里の生き残り同士で情を交わすことになるとは露程も思っていなかったが、一線を越えるきっかけなんてものは案外呆気ないものなのかもしれない。
     そんなことを、白鸞は起き抜けの頭でぼんやりと思っていた。
    「紫鸞」
     隣で俯せに寝る彼の肩を二回ほど揺らす。気配に敏感なはずの我々だが、共に過ごした夜が明けると紫鸞の反応はどうも鈍くなる。
     白鸞はハアと溜め息を吐いて困り果てた。何も言わずにここから去る気は起きない。だが、このままでは明らかに情交を匂わせたこの様子が誰かに悟られてしまうだろう。紫鸞と旅を共にしていた医者がいるそうだが、彼は弟子を取ってからは別の部屋を借りているようだ。だから紫鸞も白鸞を留まらせることが出来たのだが、紫鸞のことを今も変わらず世話しているらしい。生死の狭間を幾度となく見てきた医者と言えども、旅仲間が男色に耽っているところは見たくないだろう。
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