馳せる 旅の武芸者として生計を立てていくには己に課せられた天命や環境は申し分無い。
世を陰ながら支え続けてきた集団の党首を期待され、己の護衛となる者どもと同じように訓練を積んできた。
故郷と運命を奪われた今、元里長であった白鸞は辺境の地を拠り所にして、ただ静かに世の流れを見据えていた。
野宿も交えて各地の宿を転々とする。
汚れた衣服を脱いで平服に着替え、帯や装飾品を一つ一つ机の上に置いていった。
一日を終えてしまうにはまだ早い夕間暮れではあったが、討伐戦にて乱を鎮圧させた後の帰還だった為、今日はもう休んでしまいたかった。
自分を慕う少数民族の扱いは容易ではない。白鸞なりに気を遣う。里から出てしまえば、里親なんてただの一人に過ぎない。ましてや、滅んだ里の出自となればだ。
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