嘘吐き 「紫鸞」の名を手放してしまってからの朱和との交流が、全て自分で生み出した幻だったなんて。
紫鸞は未だに上手く飲み込めていなかった。
己には人とは違った力が授けられている。風を読む力だと言われてはいるが、戦場にて修羅場を乗り越えていく度にその感度は研ぎ澄まされているように思える。
(今となっては食糧の在処が見えるようになった)
これは紫鸞の密かな特技になりつつある。
近くの村が賊に襲われているとの報せを受けて、紫鸞は迷わずその場へ駆けつけた。迅速に討伐し、褒賞として金と幾つかの農産物を分けてもらった。食欲を唆る色と艶を前に、思わず気持ちが顔に出ていたようで、若いから食べ盛りよね、などと付け加えられて追加で多く貰った。
1543