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    @lien_lapin
    20↑すでに成人済(͒ˊ㋓ˋ˶)͒//相模審神者//ハピエン至上主義。美人は受。ショタ萌・美少年萌・人外萌
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    この間のランジェリーモデルんばちゃんとカメラマン伽羅ちゃんの話の続きの続き。あーいう雑誌って肖像権どうなってるんだろうなーっていつも余計なことを考えてしまいます…とりあえずお付き合いが認められたところまで(ネタばれ)あと1つ(えっちっちなの)書けるといいなぁ…

    ##くりんば
    ##女体化

    スタジオに入ってからずっとひりついたような、よそよそしい空気があった。今日に限って見知らぬスーツを着た男が数人、そして普段はなかなか合わない事務所のスタッフが二人。まるで何かありましたと言わんばかりの空気なのに誰もそのことに触れようともしない。
    スタジオに男性が多いのは、今日はモデル撮影ではないからだろう。先月から打診されていた俺のプロデュースインナーの仕上がりを確認する日だ。ここのランジェリーは着心地も良ければデザインもかわいらしくて、この間同じ事務所のアイドルグループがベビードールで浜辺で遊ぶMVでも着ていて話題になったほどだ。ありがたいことに俺が選んで着たランジェリーの売り上げが良いらしく、ならばデザインもしてみたらどうかと言われたのだ。渡されたスケッチブックにラフを描きこんで、そこから選んで作ってもらえるらしい。
    2冊みっちりと描いたスケッチブックからランジェリーが5種類、ガーターストッキングとベビードールが4種類、パジャマは3種類。ここから出来上がりを見て判断されていく。自分の理想が形になるのはとても緊張する。ここに来るまでに珍しく電話をくれた長義が出来上がりを楽しみにしていると言ってくれたからどうにか作り笑顔を保てているけれど、そりでなければ結果報告だけしてくれと逃げ帰っていただろう。
    ちらり、と出来上がりを身に着けているトルソーを見ている集団に視線を向ける。撮影スタジオで最近少しずつ会話も増えて、先日どうにか思いが重なったはずの相手は、個々の誰よりも苛立ちを隠しきれない空気を纏っている。入ってきたときの挨拶もおざなりで、避けるようにスタッフに用意された椅子に座ってしまったけれど。
    苛立ったようにしていてもかっこいい。恋人の欲目を引いてもかっこいい部類だろう。せめて誰かおしゃべりできる知り合いがいたらよいのだけれど、スチール撮影ではないから一人きりだ。
    「どうしました、綺麗な顔をしかめられて」
    「一期…綺麗とか言うな…」
    「あれほど人気のあるカリスマアイドルでいらしたのですから綺麗で間違いないではありませんか」
    少し古風な言い方をしながらこちらにやってきたのは事務所の営業部を統括している一期一振だった。彼の数多くいる兄妹もほとんど事務所に所属している芸能人だ。普段は自由気ままにしている彼らも兄が絡むと一気に大人しくなるというのは有名で、大家族の長兄なのだと納得するカリスマ性がある。
    長机に用意されていたペットボトルを取り上げて、空いているプラスチックのコップにいくつか中身を注いでいく。その一つをこちらに差し出しながら微笑まれると、どうにも座りが悪くなって視線をそらした。
    アイドルになったのも、長義と偶然似た顔というだけで選ばれたようなものだ。実力ではなく顔の造形だけで選ばれたというのはダンスに情熱を向けていたあの時の俺には一番堪えられなかった。向けられる悪意の跳ね飛ばし方がわからず、せめてもとダンスとボイストレーニングは欠かさず行ったけれど、何をしても顔が良いからと言われれば傷つくのは当然だった。
    「ただ顔が良いだけでしたら誰も選びませんよ。そもそもあの時は山姥切殿の幼馴染もいらっしゃったのですからそちらを選ぶこともできましたし」
    幼馴染、というのは今長義が出ている学園もののドラマで学園の不良を束ねているけんかっ早い女生徒役で出ている南泉だろう。ついでに言えば長義の役どころは生徒会長と学園を牛耳る裏ボスという役どころだった。最初は役どころに難色を示していたけれど、同じドラマに南泉がいると知ってすぐに引き受けたほどに仲がいいらしい。あまりの悪役の似合いっぷりに、長義に罵られたいファンが増えた、とマネージャがちょっと疲れたように愚痴っていた。
    「今日はあなたのアイドルやモデル以外の初めての仕事ですから、みな気になっているのですよ」
    うまくいれば新しい仕事の活路になる。第二弾、第三弾、女性服のデザインの話も来ているのも知っているけれど、最初のこのプロデュースインナーがうまくいったら、の話だ。
    「可愛いものからクール路線までデザインを拝見しましたが、だいぶ乱が気に入っておりました」
    「そ、そうか…」
    中学生からティーンズモデルとして活躍している乱は可愛いを煮詰めたらこんな感じだろうというほど可愛らしい。本人の審美眼もなかなかだから、認めてもらえたようでほっとする。
    一期と話している間に話し合いは終わったのだろう。振り向いた大倶利伽羅かが途端に厳しい視線になったのを見て背筋を冷たいものが駆け下りていく。
    「ずいぶんとご執心ですなぁ」
    「一期?」
    「いえ、こちらの話です。少しばかり周りがにぎやかになりますが、すぐに収まりますので」
    プロデュースの話だろうか。頷いて見せれば、少し困った子供を見るような目で微笑まれた。飲み物を注いでいたいくつかのコップを持って輪に戻っていったのと入れ替えに、大倶利伽羅がやってくる。残っていた大倶利伽羅の分だったのだろうカップに入った茶を一気に飲み干して、俺の手を掴んだ。
    「ちょっと来い」
    「う、うん」
    反論を許さない鋭い声だった。こちらに気が付いている人は誰もいない。連れていかれたのは普段から控室に使っている小さい部屋だった。押し込めるように俺を先に部屋に入れて、後ろ手でカギがかけられる。大倶利伽羅の伸ばした腕に簡単に抱き込まれた。力加減を無視したような、このまま潰されるのではないかと言うわずかな怯えを感じたのか、強引に顔を上げさせられる。ギラギラとこちらを射抜くような電めいた金色に上がり開けた悲鳴はあっさり飲み込まれた。入り込んできた舌が口の中を掻きまわして、二人分の唾液が飲み込めないまま溢れていく。呼吸ができなくて、目の前が白くけぶる。ようやく離れたときには完全に体のどこにもうまく力が入らなくて、男の腕が支えていなかったら床に崩れ落ちていただろう。
    「あんたは俺のものだろう」
    そう。ここで告白っぽい言葉はないけれど思いを伝えたのだ。それでも息が整わないせいで頷くのが遅くなった俺に舌打ちをして、背負っていたバッグから俺を抱えていないもう一つの手で何かを取り出した。普段はメイクグッズが並ぶか髪の前に、投げ捨てられた紙が散らばる。モノクロの文字と何かの写真。大きく打ち出された見出しには元アイドルの愛の巣か、と見覚えのある建物の写真の上に書かれていた。俺と、買い物袋を両手に下げたもう一人。該当の明かりのせいで顔がよく見えないけれど、とても知っている相手だ。
    「明日発売の週刊誌に載るはずだったゴシップだそうだ。どうみてもあんただろう」
    「そうだな」
    だって覚えがある。このマンションは事務所が用意してくれた俺も済んでいる場所だし。
    「……あんたは、おれのだろう…」
    誤解だ、と言うのはたやすいるだって完全に誤解でしかない。だけれど、そうなると事務所に許可を取らなければ公表できない事実もいっぱいある。俺が何も言えないでいるのをどうとらえたのか、腕の力が強くなる。脳内では長義の何かあったらすぐに連絡するんだよ、という言葉がよみがえる。わざわざ珍しく朝に電話をかけてきたのは、きっと長義の耳にもこのゴシップが耳に届いていたからだろう。俺だけ知らされていなかったのは腑に落ちないが、今日やたらスタジオに人が多かったのも少しだけ納得がいった。
    「大倶利伽羅、電話を一つ掛けたいんだけど…」
    「駄目だ」
    「……ダメか?」
    大倶利伽羅をのぞき込んで、少しだけ首をかしげる。ぐっと喉が詰まったようなうめき声が上がって、拘束している腕の力がほんの少しだけ弱まった。今何をしているかなんてわからないけれど、多分出てくれるだろう。
    スピーカーにしたまま着信履歴の一番上をタップする。コールが二回なって、ぶちりとつながった。
    『もしもし』
    かけてくるのがまるで分っていたような楽し気な声と真逆に、ほにょりと弱まった声で名前を呼ぶ。

    外国の言葉で『姉妹』を現した二人きりのアイドルグループは、名前の通り『姉妹』とされた。偶然にも同じ苗字だったせいだろう。山姥切、なんて珍しいからもしかしたらたどれば同じ家系なのかもしれないけれど、たどるのは暗闇でまっすぐ歩くよりも難しいほどにこんがらがっていた。それでもそんな『事実』を知っているのは事務所と実の兄弟だけだから、姉妹という『設定』のままに振舞った。髪と目の色が違うだけで顔立ちはほぼ一緒だから余計に設定に一役買っていた。
    アイドルの仕事を辞めたときに設定もなかったことにするはずが言い出すタイミングもなく、解散する頃には本物の姉妹の陽だったから、言わないのもそのままにしていた。長義とのつながりがなくなってしまうのが怖かったからだと思う。そうしてみない振りし続けてごまかした結果がこれだった。
    大倶利伽羅の足の間に挟まって、膝を抱えながら作ってもらったカフェオレを飲む。普段は滅多に見ない、朝の番組の芸能のコーナーに背後にいる大倶利伽羅の視線も集中している。写っているのはドラマの制服を身に着けている長義と南泉だ。メインの主人公はどこに行ったのかと思えば、今度二人の過去のスピンオフのドラマをするらしい。
    「長義、違和感なさすぎないか」
    もう成人してずいぶん経つ。自分より一つ年上の彼女は、それでも高校生と言われて納得してしまいそうな瑞々しい空気を纏っている。あのドラマで時折憎々しげに顔をゆがめる役どころとは正反対だ。
    「お二人はどんなお子さんでしたか」
    レポーターが待ってましたとばかりにカンペもどきのスケッチブックをめくる。二人が画面の中で目を合わせて、南泉が先にぷいと顔をそらした。
    『南泉とは本当に、幼稚園から一緒だからねぇ。どんな子だったかはいくらでも言えるけど』
    『お前は昔からやな奴だったにゃ』
    『美人が性悪って定説じゃない?』
    『ということは、国広さんと三人で遊んでました?』
    いくら雑誌の掲載を止めたとしても、写真がネットで出回ったからだろう。故意に流されたんだろうなぁ、とわかるけれど、裏付けの確認がないまま無作為に流されるのはいささか気に入らない。
    『どうして国広?』
    分かっているだろう長義が不思議そうに小首を掲げる。何も知ってません、の意思表示変わりだ。
    『おめーと国広がソロルしてたからだろ』
    ラテン語で姉妹の意味を持つ顔もそっくりな二人きりのアイドルグループ。グループ名が違っていたらまた違っていたのだろうかと思ったけれど、宣伝材料で姉妹と銘打っていたから今更かもしれない。
    『この性根曲がってんのとぽやんぽやんの国広が姉妹ってほんとおかしいだろ』
    『美人さでは私のほうが勝っているけどね。そういう『設定』だからねぇ』
    『せ、せってい…』
    レポーターさんが呆然としたように言葉を失っている。そちらを労わってやるでもなく、会話はお互いの昔の話で盛り上がっている。
    『って、聞いてるかにゃ』
    『え、あ、はい』
    『え?設定って今更じゃない?だって私子役の時のプロフィール一人っ子って書いてあるよ』
    『誰が子役のプロフィール探して持ってくるにゃ』
    真後ろでぐ、と不自然に声が詰まったような音がした。労わってやるように腹の前に回されている手を撫でてやる。骨ばった、自分よりも幾回りも大きい手。
    「……悪かった」
    「もう何回も聞いてる」
    重い手を持ち上げて、ぐにぐにと両手で弄ぶ。咎める声がないから、そっと指をからませた。かさついている手のひらで頬を撫でられると気持ちいい。
    『あ、そういえば国広の小さい写真持ってるよ?誰にも言わないなら見せてあげる』
    スカートのポケットから取り出されたのはドラマで使っている生徒手帳だった。長義の隣で南泉がほんとそーいうとこが誤解されるんだともっともなことを言っている。
    『ふりじゃなくてね、ほんっとうに誰にも言わないならね。私の天使の写真見せるんだし当然じゃない?誰かに行っちゃったら、私もうこういうインタビューでなくなっちゃうかもしれないけど』
    興味とカメラの陰からたぶんレポーターに向けられている様々な意味のこもったプレッシャーに、若干顔色を悪くしたレポーターが生徒手帳に顔を寄せる。
    あーあ。
    大きくため息をついたのは誰だったか。目を大きく開いた様子に、カメラに写っていないスタッフたちがざわざわとざわめいているのがわかる。
    『こっちは国広の御兄弟だね』
    『あ、は、はい。ありがとうございます…』
    レポーターに見せているだろう進行表には何が映っていたか言えとでも書かれているだろう。レポーターはまるで拒否するかのように顔を横に振る。
    『くれぐれも内緒にね。でないと、何をするかわからないよ』
    ドラマでいつも出てくる定番のセリフだ。
    間違ってはいないだろう。あそこで写真に何が売っていたか言えば、彼女の一言で本当にインタビューに出なくなるだろうし、どこかで写真の情報が出れば『口が軽い制作陣』と噂が立つだろう。それにっては事務所が他の所属する誰かを動かしたりしやすくなるのだろう。うちの事務所の古狸たちはそういう駆け引きが得意らしいので。
    そもそも話題にしないで黙って『なかったこと』にするべきだったのだのに。
    「国広の兄弟が映ってるのか」
    「焼き増ししたのは兄弟から長義に渡したのしかないから、データでしかないけど」
    スマホのロックを解除してアルバムを取り出す。小さいほうの兄弟から貰ったデータは、三人でうつっている数少ない写真だった。私が小学校のかけっこで一番になって、メダルをかかげているのを両脇にいる兄弟と一緒にとったもの。その後は大きい兄弟は部活の強化合宿選手になってしまって家にいる時間が少なくなってしまって、小さいほうの兄弟も所属していたダンススクールからデビューしてしまったし。それぞれ二人で映っているのはあるだろうけれど、三人そろってはなかなかない。
    「天使か…このデータ…」
    「や、やれないんだ…すまない…」
    多分小さいほうの兄弟に見つかったらもっと大騒ぎになるだろう。この間のゴシップ雑誌の比ではなく。
    あのゴシップ雑誌に一緒に載っていたのは小さいほうの兄弟だ。だけれど実はその先には兄弟がお付き合いしている兼さんだっていたはずだった。
    発端は大倶利伽羅のマンションでご飯を作ってもらった後、自分の部屋に帰ってからっぽの冷蔵庫をみて今更ながら気づいたのだ。ダンスグループに所属していた兄弟がそのグループから脱退した後についた職業はフードコーディネーターだった。料理をしない俺についでだからといつもマネージャーや事務所経由で作り置きの料理を渡してくれていたのにすっかり甘え切って、もうこの数年包丁を持った回数は両手で収まってしまうほどで。大倶利伽羅の上手な料理まで、とはいかなくてもなにか作れるようにならなければ、と奮闘して、何やら黒いぺらぺらしたものが浮かんだカレーができあがってしまって、文字通り頭を抱えた。ぺらぺらしていたのはなべ底の焦げだと教えられて、ならば少しずつ作れるようになろうかと家にやってきたのがあの写真の顛末だった。
    雑誌の内容が兄弟の耳に入った時はそれはもう電話の向こうで兼さんが悲鳴を上げていたほどに冷え冷えとした声だった。
    料理の件はしばらくしたら、事務所の料理スタジオかどこかを借りて、他にも参加したい人を募って開催することになった。兼さんの姉も手伝ってくれるというから、今度こそ美味しいカレーを作りたい。
    背後から強く抱きしめてくれる腕に寄りかかる。
    雑誌のにとられたいきさつから大倶利伽羅とのお付き合いについてはどうにか(小さい兄弟は大きい兄弟のとりなしもあって)許可をもらったけれど、まだまだ未熟者の二人だからとしっかりくぎを刺された。
    私はとりあえずプロデュースしたランジェリーインナーを成功させて、そのまま雑誌モデルに移行できるまで。伽羅は今のランジェリーブランドだけでなく他の雑誌の写真も手掛けることができるまで、身体のお付き合いはなし。破ったら、いくつか話を貰っても逃げ回っている雑誌グラビアの撮影に出なければならない。
    社長の「恋人が他の男のオカズにされてもいいならかまわんが」という言葉に一番拒否を示したのは大倶利伽羅で。オカズの意味が分からなくて首をかしげている私にかみ砕いて教えてくれたのは、後押ししてくれた加州たちだった。
    なので一緒に朝を迎えたとしてもキスか、服の上から身体を触られるまでしか進めていない。これに関しては大倶利伽羅には申し訳ないけれど、ほんのすこしほっとしている。こっちは今まで彼氏も好きな異性もいなかった完全レベル1の初心者も初心者なのだ。大倶利伽羅からのキスですらいっぱいいっぱいなのだから、ゆっくり進めてもらいたい。
    「いい、待つのには慣れてる」
    とりあえず認めてもらえる第一歩は二人で踏み出せたから。
    頬に触れた柔らかい髪に笑ってわずかに触れるだけの唇を重ねて。それぞれの仕事に出るまでの時間を堪能しようと、今日の天気予報に移ってしまった番組に背を向けた。
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    TRAININGCPでは(多分)初のにゃんちょぎ。唯一GWを何に使っているのかと小一時間(自戒)団地妻ちょぎちゃんと、運送屋にゃんせんくん。運送屋にこだわったのは、ユイさんちのにゃんぢょぎちゃんのお話の刷り込みが強い…げふげふ。玄関で、来客を知らせるチャイムが鳴る。古い団地だから、チャイムの音もどこか歪んで玄関の天井に響いていた。在宅ワークのおかげで、家から出ることは本当に僅か。出かけても近所の商店街までしかいかない。だって欲しいものは何でも通販で手に入る。どこにもいかないで、ずっとこの家にいて欲しい、というあの人の言葉に頷いたのは自分だった。だけれど、そのあの人も単身赴任でもう二か月も顔を見ていない。ネットカメラで話すのも考えたけれど、多忙な彼の負担になりたくないと言いかけた言葉は飲み込んだ。カメラの代わりに、一日一度だけでもメッセージが届くから、それで満足だ。
    「お届け物です」
    低めの、若い男の声に慌ててキッチンテーブルに出していたハンコを手にする。チェーンをつないだままの細く開けた玄関の隙間から見えたのは、もうすっかり見慣れた宅配業者だった。前の担当者はずいぶんと年齢が上の男性で、ちらちらとこちらを詮索するような視線が嫌で一時期通販を控えていた。腰を痛めて辞めてしまった代わりに来たのが彼だった。
    回ってくるのはたいてい夕方。遅番の配達員と入れ替わる前。『美人に届けて一日の仕事が終わるのが最高だと思う』と 3275

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    MOURNINGこの間のランジェリーモデルんばちゃんとカメラマン伽羅ちゃんの話の続きの続き。あーいう雑誌って肖像権どうなってるんだろうなーっていつも余計なことを考えてしまいます…とりあえずお付き合いが認められたところまで(ネタばれ)あと1つ(えっちっちなの)書けるといいなぁ…スタジオに入ってからずっとひりついたような、よそよそしい空気があった。今日に限って見知らぬスーツを着た男が数人、そして普段はなかなか合わない事務所のスタッフが二人。まるで何かありましたと言わんばかりの空気なのに誰もそのことに触れようともしない。
    スタジオに男性が多いのは、今日はモデル撮影ではないからだろう。先月から打診されていた俺のプロデュースインナーの仕上がりを確認する日だ。ここのランジェリーは着心地も良ければデザインもかわいらしくて、この間同じ事務所のアイドルグループがベビードールで浜辺で遊ぶMVでも着ていて話題になったほどだ。ありがたいことに俺が選んで着たランジェリーの売り上げが良いらしく、ならばデザインもしてみたらどうかと言われたのだ。渡されたスケッチブックにラフを描きこんで、そこから選んで作ってもらえるらしい。
    2冊みっちりと描いたスケッチブックからランジェリーが5種類、ガーターストッキングとベビードールが4種類、パジャマは3種類。ここから出来上がりを見て判断されていく。自分の理想が形になるのはとても緊張する。ここに来るまでに珍しく電話をくれた長義が出来上がりを楽しみにしてい 6986

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    MOURNINGこの間のランジェリーモデルんばちゃんとカメラマン伽羅ちゃんの話。んばちゃんside。意識し始めたきっかけ的な。夢の影響って結構大きいんだよねっていう話を聞いたので。目の前にはくすんだ金色の額縁に飾られた写真がある。その隣に大きく開いたガラス戸の入り口から見える景色は良く知っているものだ。海辺にある美術館。駅からバスを2回乗り繋なければたどり着けないせいか、人気は驚くほどに少ない。展示会目当てで来る学生か、地元の住人がほとんどだろう。アイドル時に、人のいない場所を求めて見つけたこの美術館は人の少なさのおかげでよく利用していた。時折聞こえてくる波の音を聞きながら、飾られている写真をぼんやり見て回れるのがいい。
    写真を見ているからと言って写真に詳しいわけじゃない。いまだにアーティスト写真の撮影は嫌いだし、テレビに出るのも苦手だ。踊るのと歌うのだけ好きで、なぜ自分が今の職業を続けているのかもわからない。子役出身の長義にそっくりだからアイドルの相方に選ばれたのだという噂にはしっくりくるけれど。長義がすごい性格が嫌な奴だったらすぐに辞められたのに、人に厳しい以上に自分にも厳しいから、ついつい続けてしまっていたのだ。そのアイドルも去年惜しまれつつ解散した。24歳まで、という期限付きだったからだ。長義は女優に、残された自分は事務所の社長が進めるままにモデルになっ 3567

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    MOURNINGユイさんに妄想を(勝手に)送っていたランジェリーモデルのんばちゃんとカメラマンの大倶利伽羅くんの話。BGMはポルノの『元素L』大きなスタジオのセットには、ふんだんにオーガンジーの布が閃いている。その中心にあるアンティークな腕置きの付いたソファーには、一人の女性が下着だけの姿で身を横たえている。絶え間なく焚かれるフラッシュと、天井から下げられている布を靡かせるために大きなサーキュレーター、撮影の気分を盛り上げるためだろうゆったりとした音楽だけが空間を埋め尽くしている。
    ランジェリーモデルと言えば昔であれば眉をしかめられそうなものだが、海外のランジェリーモデルの影響もあるのか今では彫刻とも呼べそうな女性の理想を凝縮したプロポーションを維持しているからか憧れの職業になりつつある。彼女たちの生活の一挙手一投足が常に話題の中心になる。
    過去有名アイドルだった山姥切も有名ランジェリーショップの専属モデルの一人だ。アイドル当時からすらりと伸びた陶器肌の手足は話題に上がっていたのだから、アイドル卒業後の進路としては誰もが納得していたのだろう。
    これで6着目の撮影だというのに、疲れた様子を見せないのはさすがというべきか。頭の先からつま先まで、商品をよりよく見せるポーズというのは体幹を鍛えていなければすぐに崩れる。今のポーズの維 4627

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