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    aki_aki960807

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    aki_aki960807

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    シクトリ5の無配。パス外しました!
    ハロ嫁観て書きたくなったお話です。降谷さんは桜組をちゃんと心の中で整理付けてる感じがしたので。むしろ赤井さんの方が引きずってる?
    映画のネタバレ無し。(映画の内容には触れていません)
    そしかい前後、和解済、同棲している二人。日本の警察に手を貸すFBI。一年に一度だけ弱音を吐く赤井さんに、降谷さんは……。(季節無視ww)

    ##シクトリ
    #安赤

    師走の雨 大きなクリスマスツリーが飾られた、東都の街の一角。建築中のビルの屋上には、ライフルを直置きし、うつ伏せでスコープを覗く赤井の姿がある。そこから直線で六百メートル離れた場所で、今まさに立てこもり事件が発生していた。
     犯人と警察がにらみ合うこと、すでに五時間以上。部屋にはカーテンが引かれ、中にいる人質の安否も分からず、膠着状態が続いている。

     やがて、現場一帯は雨が降り始めた。夜の帳が降りると気温は急降下。呼吸をするたび、まるでタバコの煙を吐くように、赤井の口から白い息が漏れた。
     緊張の糸を張り詰めたまま、時間は刻一刻と過ぎていく。無情に降る雨は雨脚を強くして、赤井のニット帽を濡らした。
     現場に詰める警察官たちの顏にも、疲れの色が見える。にらみ合いはこのまま朝まで続くのか、と誰もがそう思い始めた時——。
     ジジジ……
     突如、赤井の右耳に差し込まれたヘッドセットに通信が入る。
    「了解」
     赤井が返答すると、降谷の声でカウントダウンが始まった。
    『3、2、1……』
     カウントゼロで現場一帯の電力供給が止まった。ツリーの煌びやかな照明も消え、夜の闇が現場を包む。
     次の瞬間——
     犯人のいる部屋が一瞬だけ強く光った。コンマ数秒、カーテンに映った犯人の影。
     ターン
     ライフルの銃声が響く。それを合図に、警察が一気に動いた。赤井のヘッドセットからは、緊迫した現場の様子が聞こえてくる。
     やがて『犯人確保!』の声と共に、降谷から通信が入った。
    『作戦成功だよ、赤井。お疲れさん』
     降谷の明るい声を聞いて、赤井は大きく息を吐いた。


     犯人は連行され、人質も無事解放された。
    「安室さん、ありがとう。あと、赤井さんにもよろしく伝えて」
     今回の人質——江戸川コナンが、ボソリと降谷に耳打ちした。
    「まったく。事件現場にコナンくんアリだな。あまり蘭さんを心配させるなよ」
     ポン、とコナンの頭を撫でると、彼は「えへへ」と愛想笑いをして蘭の元へと駆けていく。降谷は場所を変え、再びヘッドセットに向かって声をかけた。
    「雨の中、かなり難しいショットでしたね。さすがです。そういえば、あなたびしょ濡れでしょう? 先に帰って風呂にでも入っていてください。僕は現場に指示を出して、コナンくんたちを送ったら戻りますから」
    『ああ、そうさせてもらうよ。一張羅がビショビショだ。おかげでタバコもお釈迦になってしまったよ』
    「あなた最近吸い過ぎですから、ちょうど良いんじゃないですか」
     降谷はチクリと嫌味を言って、通信を切った。



     降谷の嫌味をサラッと聞き流し、赤井は直置きしたライフルを手にした。気を張ってたせいで気付かなかったが、体は冷え切っていたようだ。手が震えて思うように動かない。通常の倍の時間をかけてライフルを仕舞い、背中に背負った。

     雨は一向に止む気配が無い。赤井は空を見上げた。ビルを出たは良いが、ずぶ濡れな上に大きなバッグを背負った全身黒服の男。どこから見ても怪しさ満点。その上、体からはわずかに硝煙の匂い。職質されても面倒だ。赤井は身を隠すように街の路地裏に入った。
     遠回りにはなるが、人目に付かないため怪しまれることも無いだろう。ただ、冷え切った体の震えは抑えることが出来ない。このままでは本当に風邪を引きそうだ。
     寒さで鈍る足をどうにか動かし、赤井は自宅マンションへと急いだ。


     やっとの思いで自宅にたどり着き、カギを出そうとポケットに手を突っ込む。すると突然、玄関のドアが開いた。
    「赤井!」
     驚いて顔をあげれば、少し怒った顔をした降谷が居た。
    「どこほっつき歩いてたんですか! 僕の方が先に着いたぞ」
     早く入れよと促され、赤井は「ああ」と言って冷えた体を玄関に滑り込ませた。
     マンションの部屋は二人の名義。彼が家に居ても、何らおかしなことは無いのだが。そんなに時間がかかったのか、と赤井は頭を掻いた。
     部屋に上がれば、「荷物はこっち、ほら帽子取って」と、あれよあれという間に身ぐるみ剥がされた。部屋は暖房がついていて暖かい。バスルームからは湯を張る音が聞こえる。自分の為に用意してくれたのかと思うと、赤井はなんだかくすぐったくて、思わず笑ってしまった。
    「真っ青な顔して何笑ってるんだよ。風邪ひくぞ。早く風呂に入ってこい」
     スーツのジャケットを脱ぎ、シャツの袖をまくった降谷が、赤井の服を片付けながら文句を言う。
     そういえば、昔の彼は料理も出来ず、どちらかと言うと喧嘩っ早くて不器用だったと聞いたことがある。今の彼を形作っているのは、彼の大切な友から受け継いだものだ、と。
     たくさんの思い出と、悲しみと、そして彼自身の努力で現在の彼がある。その降谷がこんなにも自分を甘やかしていることに、赤井は驚きと嬉しさと、そして申し訳なさを感じた。


     あの日、あの時。リボルバーを掴む手を緩めさえしなければ、彼の親友を助けられただろうに——。
     その事を考えない日はない。手のひらからこぼれ落ちた大切な命。後悔と後ろめたさ、絶望。ありとあらゆる負の感情が、糊のように湧いて積もって、身動きが取れなくなる。それは何年経っても変わらない。

    「ほら早く! せっかく僕が用意したんだぞ」
     赤井の気持ちとは裏腹に、降谷はニコニコしながら赤井をバスルームに追いやる。ピシャリとドアを閉められ、赤井は小さくため息をついた。仕方なく、シャワーの止水栓に手を伸ばす。
    「赤井」
     ドアの向こうから声をかけられる。見れば、曇りガラスの向こうに降谷の影が映っていた。
    「お前は雨の日になると自分を責める。悪い癖だ」
    「ッ!」
     ドア越しに聞こえた先程よりも低い声。赤井は思わず息を詰めた。

     雨の音は雑踏や喧騒を全て消し去り、赤井の心を波立たせる。 
     FBI捜査官として、組織の構成員『ライ』として、今まで幾度となく銃のトリガーを引いた。その一つ一つの事象が、本当に正しい判断だったのか——。
     出るはずのない答えを探して、繰り返される自問自答。そして最後は、自分が撃った相手の顔を思い出す。
     今日も待機中、そして帰りの最中、頭の片隅でずっと考えていた。

    「お前は何一つ間違ったことなどしていない。正義はキレイごとだけでは貫き通せない。お前は……優しすぎるんだよ。 
    ヒロのことだってそうだ。結果はどうあれ、お前はその時々で正しい判断をした。その事に自信を持てよ」
     降谷の声は優しく、労わるかのようだった。
    「それでもダメだって言うなら、そんなくだらないことを考えられなくなるくらい、僕がお前を抱いてやるよ」
     ガラリとドアが開いて、服を着たままの降谷がバスルームに入り込む。止水栓を捻り、熱い湯が降り注ぐ中で二人はキスをした。冷えた赤井の体が、湯を受けたところと降谷が触れるところだけ熱くなる。
    「ふ、ふる…ゥんッ! ふ…ぁ…ッ 」
     舌を絡めて唾液を交換し合って、互いの体を搔き抱いた。降谷の褐色の手が容赦なく赤井の肌をまさぐる。その度に赤井の体がビクリと反応した。冷えた体と闇色に染まった思考がゆっくりと溶けていく。

     ようやく唇が離れ、乱れた呼吸を整えた。
    「いつも以上に心がかき乱されるのは、今日が七日だから。しかも雨。
    未だにスコッチが飲めないお前が、今日雨に濡れて帰って来れば、考えることなど一つだ。でもね、赤井。彼を忘れることは決して無いけれど……彼が居ないことを悲しむのは…もうそろそろ、やめましょう」
     降谷が赤井の耳元で優しくささやく。しかし赤井は、シャワーの湯を受けたまま首を横に振った。
    「今日は彼の命日……。すまない……忘れられないんだ。手の中でリボルバーが回転した、あの感覚を。飛び散った彼の返り血を……。どうしても、俺は……——。
    なあ、降谷くん。頼むよ……何も考えられなく、してくれるんだろう?」
     グリーンの瞳がわずかに潤む。赤井らしくない弱音を聞き、降谷は奥歯を噛みしめた。



     警察官になった時から、降谷には心のどこかに覚悟があった。
    見送る覚悟、見送られる覚悟。
    気心知れた仲間同士、思いは同じだっただろう。かけがえのない時間を共に過ごしたからこそ、降谷は友の死を乗り越えられた。
    しかし、赤井は違う。助けられたはずの命を助けられなかった。お互いに素性を隠していたせいもあって、見送る覚悟も見送られる覚悟も無いまま、景光は死んだ。しかも彼は降谷の親友だった——。
    例え、その原因が降谷にあったとしても。赤井が感じた後悔や自責の念は、いかばかりだっただろう。それを思うと降谷の心も痛む。
     赤井は元々強い男だ。いつだって降谷の前を歩き、どんなピンチの時だって不敵に笑う。降谷がこの世で唯一、『敵わない』と思う男。
    でも今日は。今日だけは。弱音を吐いたって良い。一年にたった一度だけ、自分の前だけなら——。


     降谷はそっと赤井の頬に触れた。
    「もちろんです。泣いても止めませんよ」
     グリーンの瞳を真っすぐ見つめ、降谷は優しく微笑むと、再び赤井にキスをした。二人の夜は更けていく。師走の雨は尚も静かに降り続いた。

     やがて——。深夜を回る頃にはその雨も上がり、夜明け前になると美しいブルーモーメントの空が、全てを青く染めた。東都の街が輝く太陽を待っている。
    「赤井……朝になったらいつものお前に戻ってくれよ。じゃないと調子狂う」
     気を失うように眠りに落ちた赤井に、降谷は話しかけた。くせのある前髪をそっとかき分け、その額にキスを落とす。そして、寄り添うように寝転がると目を閉じた。
     夜明けまであと数時間——。二人の捜査官の、忙しい一日がまた始まる。
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    aki_aki960807

    DONEシクトリ5の無配。パス外しました!
    ハロ嫁観て書きたくなったお話です。降谷さんは桜組をちゃんと心の中で整理付けてる感じがしたので。むしろ赤井さんの方が引きずってる?
    映画のネタバレ無し。(映画の内容には触れていません)
    そしかい前後、和解済、同棲している二人。日本の警察に手を貸すFBI。一年に一度だけ弱音を吐く赤井さんに、降谷さんは……。(季節無視ww)
    師走の雨 大きなクリスマスツリーが飾られた、東都の街の一角。建築中のビルの屋上には、ライフルを直置きし、うつ伏せでスコープを覗く赤井の姿がある。そこから直線で六百メートル離れた場所で、今まさに立てこもり事件が発生していた。
     犯人と警察がにらみ合うこと、すでに五時間以上。部屋にはカーテンが引かれ、中にいる人質の安否も分からず、膠着状態が続いている。

     やがて、現場一帯は雨が降り始めた。夜の帳が降りると気温は急降下。呼吸をするたび、まるでタバコの煙を吐くように、赤井の口から白い息が漏れた。
     緊張の糸を張り詰めたまま、時間は刻一刻と過ぎていく。無情に降る雨は雨脚を強くして、赤井のニット帽を濡らした。
     現場に詰める警察官たちの顏にも、疲れの色が見える。にらみ合いはこのまま朝まで続くのか、と誰もがそう思い始めた時——。
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