〜呪霊を魅了する彼女〜 「こっちだよ」
耳元から聞こえた声にバッと振り返る。
……誰もいない。
(…あれ…今、声が……)
目の前に広がる闇を困惑したまま見つめていると、耳元でまた囁かれた。
――おいで
――こっちだよ
(さとる君……)
ちがう。彼じゃない。
わかっているけど足が勝手に動く。
(いや…行きたくない……!!)
抵抗しているのに声のもとへ向かおうとしていて。そのまま体が闇に包まれようとした瞬間、視界が奪われた。
「ほんと厄介な体質だね〜」
耳元から聞こえた声に、今度は彼だとわかった。
(……さとる君だ!)
両目を塞ぐ大きな手からは彼のぬくもりが伝わってきて。もう大丈夫だと、ほっと肩の力が抜ける。
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