〜猫どころか化け猫の皮をかぶっている五条〜 「僕ね、疲れたんだ……」
だからね、よしよしして?
そう言って彼女のお腹に顔を埋める五条。ここ最近、出張が続いていてメンタルはボロボロ。……嘘だけど。でも疲れているのはほんと。
お疲れさま。
そう言って、よしよしと頭を撫でてくれる彼女に、そうなの。だからいーっぱい甘やかして?とワガママを発揮する。
大好きって言って。
あと、カッコイイも。
言いたい放題やりたい放題の五条と、それに付き合う彼女。そんな2人を少し離れた場所で見ている伊地知は思った。
(……またやってる)
イチャイチャに遭遇する率がエグすぎてお腹がいっぱいどころか胃もたれを起こしていた。
(…あぁ…時間が……)
彼女が席を外すのを横目に、ため息をついていると、突然「おい」と声をかけられた。
「次の場所、どこ」
「つ、次とは……」
「任務だよ、任務。どこかって聞いてんの」
「あ、え、っと……」
さっきのぶりっ子から180度変わった五条に戸惑いつつ場所を伝える。ふーん、となんとも煮えきらない返事が返ってきた。
(私にもやさしくしてくださいよ……!!)
彼女との対応の差に目から汗を流していると戻ってきた彼女。そんな彼女に、次の任務先を伝えた五条は、がんばるから帰ってきたらご褒美ちょーだいとおねだりをしている。ご褒美って、あなた毎日貰っているじゃないですか。
もちろん、OKした彼女。
ゲスい笑みを浮かべた五条は、むくりと立ち上がるなり、こちらに向かって来た。
「行くよ、伊地知」
「は、はい!!」
いってらっしゃい!と手を振る彼女に見送られ車に乗り込む。
「ほら、もっと早く走らないと日が暮れちゃうよ?」
なにやってんのさ、と背中に突き刺さる理不尽な言葉に、もうやだ、有給取りたいと涙する伊地知だった。
おわり。