友達と勉強 土曜日、テスト一週間前。ほとんどの部活は休止しているせいか、校舎ではやけに静かな空間が広がっていた。
「あ、来た」
「早いな」
「電車、いい時間なかったからさ」
大教室前の開けた空間、六人掛けの椅子の片側三人分を優雅に陣取ったフィガロはファウストにひらひらと手を振る。
八時五十分、約束の十分前。少し早く来すぎたかも、なんて考えは杞憂だった。
「一階のコンビニって開いてるか?」
「時短らしいよ、もう開いているんじゃないかな」
「分かった」
リュックを机の端に置きながら、ファウストはぐっと背筋を伸ばす。
テキストとノートとレジュメと筆記用具、あとは電子辞書。フィガロが持ってきたであろうポケット六法に比べたらうんと軽いはずのに、重装備なファウストに比べ、彼は相変わらず薄っぺらいトートバッグ一つで来ていた。
2877