あと○日 やった、やったぞ!
雄叫びのような歓喜の声を上げる兵たちの前に立つのは、細身でしなやかな身体の魔法使い。珍しく無邪気に笑っているせいか、目はまるで線のように細められている。
隣に立つ銀髪の青年はそんな彼の肩をガッと掴み、楽しそうに名を呼んだ。そして可憐な相手の頭をぐしゃぐしゃと豪快に撫で、彼らは大口を開け豪快にあははと笑い合う。
そんな顔、一度も見たことがない。
女子供に混じり後ろからひっそりと眺めていたフィガロは独特の空気に耐えきれずその場を後にする。正直もう見ていられなかった。
フィガロは集団の上に立ったことはあれど、彼らのように仲間意識を持って一緒に盛り上がったことはない。
弟子の大事な仲間だ。自分も大切にしたい。フィガロも精一杯己の価値観と戦った。けれど、千五百年以上培われた考え方は数日で変えられるものではない。次第に精神が疲弊していき、自分の行動がどこか虚しいとすら思えるようになった。
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