sato_fujiiro

半端なものや落書き置き場。
創作多め、三国志関係多め。
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ごっつ陳平さん

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#二次創作

むげつ

胸キュン両片想いのデキてない銀←土
副長視点
甘味デートのシチュが見たかった☕️
いつも市中見回りの帰りに通る変哲もない橋の上で、銀のフワフワ頭と出くわしていた。俺に出くわした途端、銀髪のソイツは顔を見るなり顔を歪め俺は舌打ちをする……のがいつも通りの流れだが、今日は驚くべきか万事屋は俺を見るなり目を煌めかせてきたもんだから、舌打ちするタイミングを完全に逃してしまった。

「おお、副長さんじゃねーか。丁度良いところに来たなぁ」

 いや何が丁度なんだよ、と聞き返す俺の声をこれまた完全に無視して、万事屋は俺の手、というか手首を引っ掴んで歩きだす。そっちは帰り道じゃねーよ、今さっき巡回したばっかだ、俺は今から帰るんだよと抗議するもコイツの力の強さは周知の事実だ。悔しいが並大抵じゃ敵わない。
 スタスタスタスタ、迷いなく歩く万事屋の足と歩かされる俺の足が今日の巡回ルートを通り越してかぶき町まで到着する頃にはワケの分からない危機感に苛まれまくり、堪らず怒鳴りつけていた。

「万事屋ッ! テメェ、どこに連れて行く気だ!」
「別に悪いようにはしねェから、ただちょっとさァ」
「ふざけやがれ……っ、おい離せ!」

 そうしている内に景色もかぶき町の賑やかな茶屋通りに変わっていく。どうやら始めっから抗議は通じないらしく、俺はされるがまま、手を引っ張られて歩くハメになった。一度も躓かなかったのは俺の意地だ。

「着いたぜ」

 とある店の前で万事屋は立ち止まり、振り返って何故か得意げに笑うとそう言った。
……そこには洒落た内装の、銀食器が行儀よく輝くスイーツ店があった。外観も洋風で可愛らしく、花壇には花も咲いている。丁度いい時間なのもあってそれなりに行列が出来ていた。
 つーか『丁度いい』ってそういう意味だったのかよ。ただの三時のオヤツじゃねーかと俺は脱力したい気分になる。

「……この店か」
「うん、そう」
「マジでココに来たかったのか……? 野郎二人で?」
「そうだっつの! 野暮なコト言わないでくんない?!」

 半ば呆れながら聞き返せば、万事屋は今更恥ずかしくなってきたのか決まり悪そうに答える。

「ずっと気になってたんだよ。……言わなかっただけで」

 秘密にしてた恋を告白するようなセリフに心拍数が否応なく上がる。いや、コイツが言ってるのは店の話だろう。分かってる。しゃんとしろ俺。
 つーか万事屋、テメェも悪いからな。そういうアレなセリフ、俺の顔を見ながら言うんじゃねえよ。せめて店の外装を見ながら言いやがれ。

「そ、そうか……。あー、その……テメェが好きそうだもんな」

 ……ああクソ、だから言わんこっちゃねえ。
 仕事するとき以外での俺の口ときたら、奴とは違って巧く回りやしない。返答がぎこちなくなったせいか、顔も熱くなってきやがった。万事屋にはさぞ、妙に思われてるに違いない。怪訝な顔をしてるだろうと恐る恐る視線を上げてみれば、万事屋は『怪訝な顔』ではなくニヤニヤと……端的に言えば俺を揶揄う時の顔をしていた。

「ふーん、俺の好みが分かるんだ? 土方くんは」
「だ、誰だって分かるだろうがっ……ニヤニヤすんじゃねーよ糖分フェチが」
「ンだとニコチンマヨラー、生意気ばっかり言う口にゃ生クリームぶち込んでやろうか?」
「生意気なのはテメェだろ! っおいテメ」
「はいはい、後ろが詰まっちまうからちゃんと並べって」

 並びたくねぇし生クリームなんか好きじゃねぇし、早々に帰りたかった。
 だが正直な話、万事屋の手にかかれば俺をこの場へ強制的に留まらせるなんて簡単なことだ。ここまで連れて来られた時然り、コイツの馬鹿力で掴まれたら簡単に振り払えはしない。抜刀すれば何とかなるかもしれないが、万事屋と斬った張ったをしたい訳でもなし、そもそも斬った張ったをすれば私闘になるだろう。気を紛らわす為に、話題を探す。

「チャイナとは行かねェのか?」
「神楽と行くと絶対ェ満足するまで食いまくるだろ。そんな金持ってねぇし、ここって最近できたけど、いかにもカップルデートみてェな感じだろ?」

 言われてみれば、行列に並んでいるのは女同士か、男は女と並んでいるだけだ。つまりここに二人で並んでいる野郎同士は、俺とコイツだけだという事になる。
 確かに万事屋は神楽と……か、カップルデートとか、そんな行為をするつもりはないだろう。でも二人は親子と言うには若すぎて、兄妹にしては似ていない。知らない人間にじろじろ見られるのは気まずいのかもしれない。……まあ、財布事情が切実だと言うのも大きいだろうが。万事屋の貯金通帳がアレなのは、以前に魂が入れ替わった件で立証済みだ。

「だからお前と……な? 俺とお前の仲じゃん」

 どんな仲だ。そりゃあ、食の好み以外でもそれなりのことを理解してる程度には長い付き合いだから、気心知れた相手だと言えなくもない……かもしれねェけど。とはいえガキみてぇな口喧嘩はちょっとした理由ですぐに勃発するし、近藤さんや総悟や、なんなら地味が取り柄の山崎だって俺よりずっとマシに、万事屋と親しげに話せてるに決まってる。それくらい見てれば簡単に分かる。
 真選組の隊士だからという理由じゃない。近藤さんにしろ、総悟にしろ、山崎にすら、これ見よがしに挑発してタチの悪いガキみたいな態度をしてくる万事屋なんて俺は見た事がなかった。
 だから、よく考えなくても分かる。何かと言えば万事屋に揶揄われて嫌がらせじみた真似をされてるのは俺だけだ。引き下がれば負けな気がして、周囲に目もくれずムキになって応戦してしまう。応戦して怒鳴り合い、文句をつけ合い、毎度やった後になって後悔する。
 こんな調子で「実はお前に惚れてるんだ」なんて口に出来るわけがないと思う。今更すぎて、言えるわけがなかった。

 職務上の理由で気にしているだけだった相手、しかも男のことを、仕事の時どころか非番の時も考えていると気づいたのは、いつからだっただろう。
 例えば巡回中に買い物袋を下げて通りを歩く万事屋の面々を見た時に。
 例えば行きつけの店でふざけた飯を食うのを目の当たりにし、文句を言い合った時に。
 攘夷活動だとか伝説の白夜叉だとか、それとはちっとも関係ないところで、万事屋の坂田銀時を意識している自分を自覚した。
 屋根の上で対峙してから今まで、腐れ縁に成り行くくらいにはコイツの振るう剣の強さも知ってきた。負けたと思った屋根の決闘でも、感じたのは悔しさではなかった、ように思う。刀まで折られたにも関わらず、笑えるくらいに清々しかった。そんな風に思わされる手合わせは初めてで、今になって考えてみれば、あの日をきっかけにして、俺は万事屋のことが気になり始めたんじゃないかと思う。
 つまり俺が間の悪いタイミングに帰路へ着いた時点で、今回は運の尽きだったらしい。というか万事屋だって、最初からこの店に行きたいと俺に言ってくれば良かったんだ。思わせぶりな行動に動揺して肝を冷やす羽目になった。
 初めから甘味処に行くつもりだと分かっていたら、こんな心臓に悪い役目、俺じゃなくて山崎辺りに押し付けていたと思う。「ずっと気になってた」とか「デートの定番」だとか、俺は知りたくなんてなかった。……コイツにそんな知識もあるんだと知ったところで、俺には意味がない。女が好きそうな店に詳しくて、デートに選ぶのは甘味処だと知ったところで、何になる。どうにもならないんだと再認識させられるだけだ。
 当然のことなのにそれが寂しいような、虚しいような、万事屋テメェふざけんなと怒鳴りたくなるような、対処に困る思いが湧き上がる。この感情は嫉妬だ。お門違いすぎて八つ当たりも出来ず、溜息が漏れる。

「……喫煙席はあるのか」
「おう。カウンターじゃなくて奥のテーブルになるけど良いよな?」

 問われ、曖昧に頷く。誘われて嬉しいような、マダオな万事屋もこんな風に誰かとデートに来るんだと思うと嬉しくないような、何とも言えない気分になっている。

「ここのパフェさ、ファミレスよりも種類あるんだよ。しかも今は秋限定のマロンフェア!」
「そうか、良かったな」
「ケーキもあるから、どっちにするか迷っちまうな~」
「そうだな」

 列に並んでいる間、目の前のスイーツ店についてああでこうでと情報をつらつら語る万事屋は楽しそうで、俺は分からないなりに相槌を打ってやった。

「……えっと、その……土方くんは、こういう店に来たりすんのは初めて……だよな?」
「悪いかよ」
「悪いなんて言ってねーだろうが。土方くんのハジメテ、俺が貰っちまったなァ」
「変な言い方すんじゃねェ。別に誰かと来る予定もねぇし、ンなもん欲しけりゃ勝手に……っ、おい!」
「じゃあ頂戴。つーか貰うから」

 気まずくて微妙に離していた距離を引き寄せられて、腰に腕が回された。万事屋の、体温。途端に緊張が走る。こ、このやろう。
(い、いくら冗談にしたってやりすぎだろ……!?)
 心臓が痛いくらいにうるさい。顔が熱い。手の甲をギュッと抓りあげてやると大袈裟なくらい痛がって解放された。……幸い、周りは自分達の会話に夢中で見られずに済んだらしい。ふざけた真似しやがって、うっかり俺がお前を好きだってバレちまったらどうするつもりなんだ。俺はテメェを困らせたくねぇから言わないでおいてやるんだからな。俺の愛に感謝しやがれ。
 『初めて』なんて表現すれば聞こえはマシになるが、慣れずに格好つかない姿を晒すのが目に見えている。
 どうせ長ったらしい名前のついたケーキに翻弄されて、ショートケーキとかチョコレートケーキとかチーズケーキとかシンプルな知ってる名前のやつを選ぶことになるんだろう。


 やがて行列も終わり店の中へ入れるようになる。外に並ぶ気まずさから解放されたかと安心したのも束の間、店内も外の客と同じように、これでもかと言うほど女とカップルばかりだった。思わず顔が引き攣る。早く帰りたい。万事屋が一人で入るのを諦めた理由は嫌でも理解出来るが、だからって俺を巻き込まなくても良かっただろうと文句を言いたくなる。ここまできて逃げ出すのは癪だから言わないが、俺はこの空間に馴染める気がしなかった。
奥まった席は白いソファ席になっていて、屯所にはまず無いものだ。座り心地が良い。席について万事屋を見ると、早くもテーブルでケーキとパフェのメニューをじっと眺めていた。きっと紙面では意味の分からない文字が縦横無尽に駆け巡っていることだろう。

「……っ」

 声をかけようとして絶句する。万事屋は店に女同士とカップルしか居ない事実なんぞ気にも留めず、深い赤色の瞳をキラキラ輝かせながらメニューに見入って(もはや魅入って)いた。甘味相手とはいえ、あまり見られない無邪気な表情に不覚にもドキリとする。喧嘩して怒鳴り合ってばかりいるから、普段なら絶対に見られない顔だ。俺の視線に気づいたんだろう。嬉しそうな目の前の万事屋がメニューから目線を上げて俺の方を見て、悪戯でも仕掛けるみたいに笑った。

「なんだよ、お前も一緒に見る?」

 心拍数が急に上がる。「そのくらい一人で見れる」と断ろうとして、やめた。
 万事屋の反応を見るに心底から冗談でもなく、俺に嫌がらせをする為に来たわけでもないらしい。好物の甘味で、ずっとメニューが気になってて、本当に来たかったんだろう。だったら少しの間、水を差すのはやめといてやろうと、そう思っただけだ。

「……甘いモンには詳しくねェ。から、教えてくれ」
「土方くんはハジメテだもんな。……俺が優しく教えてやるから、こういうトコに俺以外の奴とは来ないって約束してくれねェ?」
「ば、バカなこと言ってんじゃね……うわ、おい何だこりゃ? こんな妙な名前のモン注文すんのか……?」
「シャイな土方くんの代わりに俺が注文してやるよ。ほら、このベリーのやつとか……あ、これも甘くないんじゃね? パフェよりケーキの方が小せェかな」
「ならそっちにする」

 一つ一つに但し書きがされている親切なメニューだが、説明を読んだところで俺の知らねェ名前の何かを使ってるクリームだとか、なんとかリゼだとか、フォンダンとかヌガーとか、理解しきれない世界の横文字が並んでいる。結果として俺は万事屋の指の止まるところをヒヨコのように目で追って頷くだけになった。
通りすがった店員を引き止めて注文メニューを読み上げる万事屋の声を聞きながら、コイツは恥ずかしくならないのかと純粋に疑問に思う。

「大人の失恋ショコラ、ほろ苦ホットコーヒーセットひとつ」
「はい」
「あと、ショートケーキのふわふわマシュマロ乗せ」
「はい」
「恋するベリーの乙女タルトひとつ」
「はい」
「あと、ときめきマロンパフェひとつ」
「は、はい」
「ストロベリーロマンスパフェも頼むわ」
「……はい、ありがとうございます」

 注文を受ける店員の返事がワンテンポ遅れた。驚いたんだろうと、俺にも容易に想像がつく。つーか男二人でこんな店に来て、ケーキやらパフェやら何個も注文する時点で普通じゃねぇよ。俺なんてケーキ一皿でも充分すぎるくらいだ。
予想に反して、この店のパフェやケーキに付いてるカタカナの名前自体は理解できた。『ホットコーヒー』『ショートケーキ』『ストロベリー』、どれも馴染みがある。……『恋する乙女』とか『失恋ショコラ』とか少女趣味に溺れ死にそうな日本語の方が、よほど難解で衝撃だ。そもそも万事屋は躊躇いもなく口にするが、恥ずかしくないんだろうか。そりゃ確かにコイツが考えた商品名ではないし、そうする他に注文方法はないのかもしれないが、こんな外観も中身も甘ったるい甘味処に来たいと思う感覚からして俺にとっては新鮮すぎる。
 色々と驚きすぎて、俺は万事屋の顔をまじまじと見てしまった。
 思えば、知らない一面の方が多くて当然かもしれない。道で会えば話すが、それだけだ。屯所とかぶき町じゃ同じ生活圏内でもないし、万事屋と一緒に行動しているわけでもない。
 それだけの関係のくせに、万事屋の事を何でも知ったように錯覚していただけなのかもしれない。万事屋は誰かとデートしたいのか。今日こうやって来たのは、もしかして下見の為なんだろうか。言えるわけのないセリフが渦巻いて、胸の奥が突かれたように少し息苦しい。

「おまたせ致しました~!」

 可愛いらしい丸テーブルが、生クリームとフルーツが所狭しとそびえ立つメルヘン空間になった。
 万事屋はまず『ショートケーキのふわふわマシュマロのせ』から食べるらしい。マシュマロの実を、テンポよくポンポン口に運び入れてゆく。大きな手で細いスプーンの柄を操るその眼差しは真剣そのものだ。小気味よく口と手を動かして、真っ赤な苺も美味そうに齧り、早くもひとつ目を食べ終える。

「どうしたの、土方くん」

 コーヒーにも手を付けずまじまじと見つめてしまっていた。怪訝そうに視線を寄越した銀時の口の端にはクリームがついている。そのくせ、目元にはいつもの男らしさが宿っていて、そのギャップがたまらなかった……と気づかれるわけにはいかない。

「あ、……いや、その。顔に付いてるぞ」

 人差し指で、自分の口の端を指差す。「生クリーム」小声で指摘すると、万事屋は鏡合わせの要領で逆の唇をぺろりと舐めた。「違ぇよ、逆だ。反対側の……」思わず突っ込んだ俺の声に、どうでもよさそうな顔でクリームを舐めとった。 でもなんだか、肩の力が抜ける。

「一人でそんなに食うのかよ」
「五個くらい余裕だろ。土方くんも食べる?」
「俺は良い。見てるだけで充分だ」
「あんまり見られてっと緊張すんだけど」
「どこがだ。言いながらケーキ食ってるじゃねーか」

 もはや主食が糖分だなと思いながら、チョコレートケーキを口に入れる。生クリームも使われてなくて、甘酸っぱいソースがかかっている分これなら食べやすい。トッピングにマヨネーズを足してみた。

「……、悪かねぇな」
「土方くんのそれはチョコケーキの色してませんけど?」
「うっせぇ」

 揶揄うように笑う、その顔も声も好きだ。万事屋が乙女タルトを食べ終えるのと同じくらいに食べ終えて一服していると、

「……なあ、やっぱり嫌だった?」

 無理してこんなとこ連れて来ちまったもんなと、太々しい態度をどこにやったのか、万事屋は眉を下げる。
あまり見ないしょんぼりした顔に、チクリと胸が痛む。本気で絶対どうしても嫌だったら、俺だってとっくに帰ってるんだよ。テメェが誘ってくれたから。察しろや、とも言えず首を振った。下手にそんなこと言って好いてるのがバレたら困る。

「……強引に連れてきたこと、怒ってねぇの?」
「怒ってなくもねぇ、けど」
「……けど?」

 コイツが強引なのは今に始まったことじゃない。万事屋という職業柄か、お人好しな性格のせいなのか、誰かに振り回されてるのもよく見るが。俺もコイツを振り回したことが無いとは言えない。だからといってコイツはその相手を突き放したりはしないんだから、やっぱり根っこの部分が優しいんじゃねェかと考えて、くすぐったい気分になった。つくづく良い男に惚れたもんだ。

「……嫌がらせとか、揶揄ってるわけじゃねェんだろ。……お前がここに来たかったっていうなら、俺には何も言わねェよ」

 馬鹿正直に言ってしまってから途端に恥ずかしくなり、テメェにゃ借りがあるからなと取ってつけたような建前を付け足した。万事屋を見れば、文句を言われるとばかり思っていたんだろう、キョトンとした顔をしていた。目が合えば柔らかく笑ってみせる。

「……そっか。サンキュ」

礼を言われる場面でもないと思ったが、茶化してやろうにもコイツほど口が上手くない。何も言えない代わりに、パフェの上に乗った苺を一つ横取りしてやった。口に入れると瞬く間に甘酸っぱさが広がって、生クリームのついてるところが際立って甘い。

「……ふん」
「どうしたよ。食べたいの? ここなら見えねェだろうしアーンしてやるよ」
「いらねェよ。……デートの時とか、彼女でも連れて来た時にやれば良いじゃねェか」
「何それ。俺はお前と来れたら良いな~と思ってたんだけど?」
「っ……!? ぁ、その……」
「土方くんの財布目当てじゃありません~、残念でしたぁ」

 ついでに嫌がらせでもねェし揶揄ってるわけでもねェからなと言われて、ますます正解が見つからなくなる。
 煙草とコーヒーの所為ではなく苦い顔になってるだろうとは、鏡を見なくても分かった。


「ふー、食った食った。そろそろ出るかー」
「マジで完食したなお前。味覚どうなってんだ」
「あ、やっぱりアーンしてほしかったんじゃねぇの?」
「バカ言え」

 付き合ってられねェと精算して店を出れば、外がすっかり日暮れの色と影になっていた。ごちそうさま、なんて語尾にハートマークでも付きそうな感じで言ってくれるんだから調子の良い野郎だ。
つーかやっぱり財布目当てじゃねぇか万年ニート社長が、と心の中でホッとしながら、いつもの関係に戻るための嫌味を投げかける。

「おいおい言ってくれるじゃねーの。だったら次は俺の奢りで飲もうや。土方くんっていつも忙しそうだけどよォ……非番とかあるの?」

 肩を組まれて、カッと熱が回った。心臓がバクバク鳴ってうるさい。『次』って言ったのか、万事屋は。次もあるのか。次があるなら──新しい着物でも下ろそうか。楽しくて嬉しくて、それでもどこかで恋人どころかデートでもねぇのにと笑う自分も居る。せいぜい勘違いは禁物だろうし、単に俺の挑発に乗ってくれただけかもしれねェけど、非番を教えるくらいなら。「……たしか、来週末だったと思うが。テメェは空いてんのか?」会える確信もないまま呟けば、やけに緊張する。冷えた夕風が頬に当たってひりついた。



Title.クーベルチュール
- 表面を覆うためのチョコレート。ハイカカオで苦味がある。8188 文字