タイトル未定 転生パロ 仙乱乱太郎は毎年、同じ時期に必ずと言っていいほど見る夢があった。桜が散る頃に綺麗な花を咲かせる藤の花の時期に乱太郎が見る夢。
それは、藤の花が咲き誇る藤棚で誰かと会う夢である。物心ついた頃から、その夢を見るようになりこの夢とはもう長い付き合いになる。
乱太郎。と甘やかな声で自分の名前を呼ばれ、手を繋いで藤の花を見ている自分ともう一人の誰か。顔はいつも藤の花と靄に隠されていて、その人がどんな顔か拝めることは出来ないが、唯一、藤の花と同じような綺麗な紫の髪色だけがその人が動く度に揺れている。
「…先輩、また見に来ましょうね。絶対ですよ!」
「こら、先輩ではないだろう?」
二人きりの時はなんと呼ぶんだった?と言われると、自分がまじまじと照れながら…さん!とその人の名前を呼んだ。
重要な名前の部分はいつも音が無くなって聞こえず、その人の名前と顔はいつも分からずじまいで、自分が言い放った言葉に対して、頭を撫でながらああ、約束だ。また見に来よう。と言って夢が終わる。
いつもその夢を見てから起きると、自然と涙が出ている。何故涙が出ているのか乱太郎には分からないが
*
「…ずっと待たせてしまってごめんなさい、」
仙蔵さん。泣きながらも笑っている乱太郎を見て仙蔵は強く、強く抱き締めた。
「…今度こそ、私とずっと一緒に藤の花を見てくれないか」
「…はいっ、喜んで!」