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    キリカ

    @bk4l_ej6

    ヒュンマっぽい散文

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    キリカ

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    アニメのマァムの表情に萌えての突発散文

    消えない音世界が破れる音がした。

    ロン・ベルクさんが修理してくれた武器を彼に渡すこと。
    それはただの運搬で、誰がやったっていいはずの事だった。

    ただの受け渡し。
    なんでもない事。

    そう思うのに、まるで彼自身を抱きしめるように、愛おしげに両腕の中へ槍を納める彼女の姿が脳裏から離れない。
    胸のざわめきは止まらず、鼓動は激しく脈打ち続けた。

    囚われの身ではなくなった彼に、彼女が近づく。
    ただ武器を渡そうとしただけ。
    それなのに、何故かそれがひどく怖かった。

    大魔王との決戦を前にして――
    戦いや死の恐怖とはまるで違う、味わったことのない未知の恐怖がそこにあった。
    その正体もわからぬまま、私は二人のやりとりを見つめる。

    白く女らしい指先が、槍を包む紙をつかむ。

    ――ビリ。

    乾いた破裂音が空気を裂いた。

    「ーー!?」

    体の芯から一気に熱が引いていく。
    それは本来なら彼の手で響かせるはずの音――戦士の復活を告げる響きだった。
    けれど今、それを鳴らしたのは彼女の手。

    背筋を冷たい汗が伝い、呼吸は詰まる。
    胸の鼓動は自分のものじゃないように乱れる。

    彼女の手が、彼より先に魂とも言える武器に触れた。
    彼の掌に渡るはずの初めての瞬間を、彼女が奪った。

    心臓の奥に細い刃が突き刺さり、呼吸が止まる。
    刃は全身に広がり、冷たい鎖となって私を締め上げた。

    動けない。声も出せない。

    封を解いた槍を捧げ持つ彼女の姿は、
    まるで、彼と槍の絆を取り次ぐのは私だと宣言しているかのようで

    私はただ凍りついたまま、彼が槍に手を伸ばす姿を見ていた。
    その武器に重なる彼女の影を――消すこともできずに。
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