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    ジュオイン

    差出人不明の手紙で呼び出され、夕日に照らされた甲板にて告白を受けるンド様の小話。
    ※1時間でどこまで書けるかチャレンジしたもの

    アガパンサスお題 花言葉から「恋の訪れ、ラブレター、知的な装い」

    何も予定のない暇な午後。インドラは部屋で一人アイラーヴァタの背に乗り寛いでいた。
    カルデアへ来てからというもの周回だイベントだと連日駆り出されており、こうしてゆっくりできるのは久しぶりだ。
    食堂で美女と酒を酌み交わすのも捨てがたいが今は一人で飲みたい。グラスを傾け、溜まった疲れを押し出すように深く息を吐き出す。

    「ふぅ、美味い」

    優雅な一時だったが、それを打ち破る者は唐突に現れた。

    「たっだいまー!」「只今戻りました」

    声の主は散歩に出ていたヴァジュラたち。彼らはいやに興奮した様子で、大声を上げ突撃してくる。

    「おっと!……おい、何をそんなにはしゃいでいるのか知らんが煩いぞ。酒を零すところだったではないか。神は今思索に耽っているところだ。邪魔をするな」
    「えー、そんなこと言っても良いのかなー?」
    「平身低頭(誠に申し訳ありません)。しかし、話を聞いて頂ければ幸いです」
    「ふむ?」

    緑の方が口答えをするのはよくあるが、赤い方までとは珍しい。反論に興味を引かれ、目線で続きを促してやる。

    「ぼくたちとっても良いものを持ってきたんだー。なんだと思います?」
    「ほう?余程自信があるようだな。どれ、神の審美眼にかなう代物かどうか見せてみろ」

    心底嬉しそうに言うので興味を引かれ右手を出してやると、ヴァジュラたちはますます笑みを深くした。後ろ手に隠していたものが差し出される。

    「お届け物でーす!」
    「確認推奨(速やかに目を通されることをお勧めします)。悪いものではありません」

    勿体ぶって出してきた割に軽いと思えば、手渡されたのはたった一通の手紙だった。
    淡青色の封筒には差出人の名前は無く、『インドラ神へ』と几帳面な字で書かれている。その字は見たことがなかったが、何となく誰のものなのか想像がつき、丁寧に封を切る。

    『夕方、甲板にてお待ちしています』

    出てきた便箋にも書かれていたのはたった一文。この神へ送るにはあまりにも簡素な内容。素っ気なさすら感じるそれをマジマジと見つめ、ヴァジュラたちへ視線を移す。
    緑の方はワクワクと目を輝かせているし、赤いヴァジュラも心なしか表情が柔らかい。
    そしてこの生真面目とも言える手紙とくれば、差し出し人については見当がついた。

    「行くぞ」
    「「はい!」」

    トクトクと早くなっていく心音に掻き立てられるように立ち上がり、自らの足で甲板へと出向く。
    日暮れにはずいぶんと早いが、遅いよりは良いだろう。


    夕日に照らされた甲板にはインドラ以外に誰も居ない。
    ソワソワと落ち着かない様子で、時折感情の揺れから雷を迸らせる彼を避けて皆移動してしまったのだ。そんなこととは知らぬまま待つこと数時間。ようやく待ち人は現れた。

    「おや?お待たせしてしまいましたか。申し訳ありません」
    「い、いや。神も先ほど来たところだ。気にすることはない」

    現れたのは予想通りアルジュナだったが、オルタの方で少し驚いた。そのうえ、アルジュナオルタは見慣れない装いをしている。青い衣に細身の眼鏡がよく似合う。

    (遠くから見てくるばかりであまり話したことはなかったが、どういった用件だろうか)

    何にせよ息子と話ができる機会が嬉しいことには違いがない。

    「……それで、この神をわざわざ呼びつけた用件とはなんだ?不敬は許してやるから言ってみろ」
    「それは……」

    暫く見惚れてしまったが、それどころではなかったと我に返る。
    何故服装を変えたのか聞きたいところではあるが、それは後から聞けば良い。今は、もっと気になっている呼び出しの用件を聞くべきだとどうにか言葉を紡いだ。
    だが、言いづらいことだったのか息子は目を伏せてしまった。その姿はインドラからすればあまりに儚く、内心おおいに狼狽える。

    (少し高圧的過ぎたか?優しく聞いてやるべきだったか?だが、こちらのアルジュナは神を取り込んでいる身。先達として、威厳をしっかり見せてやらねばならんだろう)

    インドラがうだうだと考えている内に考えが纏ったのか、顔を上げたアルジュナオルタが熱のない目で見つめてくる。


    「最近、あなたを見ていると胸がざわつくのです。これが悪であるのか、善であるのか、私には判断がつかない。ですが、この身は公正であるべきもの。どちらにせよあまり強い感情は、持つべきではありません」

    ポツリポツリと確かめるように言う姿は少し幼げだ。親心からインドラの口角はつい上を向くが、眼鏡に日が反射してアルジュナオルタの表情は上手く読み取れない。

    「しかし、人へと精神が近づいている今の状態の私は、この感情を消したくないとも感じていて……そんな折、マスターから、相手へ伝えることで心の整理がつくこともある、と教えて頂いたのです」

    霊衣の方が感情を文章化しやすいのではとアドバイスを貰った結果が今の装いであるらしい。手紙で夕刻に甲板(屋上)へ呼び出したのもマスターの故郷に倣ってのことだとか。
    そこまで手間をかけて自分へ伝えたい感情とはなんなのか。

    (嫌われては、いないはずだが)

    判断材料がなさ過ぎて予測がつかない。インドラは少し怖さを感じ、息子に悟られないよう背へ回した拳を強く握り締める。
    アルジュナオルタの口がゆっくりと開かれる。

    「好きです」

    固唾を呑んで身構えていたところへ告げられたのは一言だけ。手紙同様の簡潔さだが、どんな言葉の羅列よりもインドラの心へ重く響く。

    (アルジュナが、オレに、好意を、抱いて、いる?)

    あまりの衝撃に身体と心が追いつかない。インドラは普段の威厳を放り出しポカンと口を半開きにして息子を見つめた。

    「駄目、ですね。どれだけ理知的になったところで、結局あなたへ伝えたい言葉はこれに尽きます」

    困ったような物言いの割にアルジュナオルタの表情と声色は穏やかなものだった。赤い頬は夕日によるものか、それとも照れからなのか。

    (綺麗だ)

    返事をしてやることも忘れ、インドラはただ、少年のように笑う息子に見惚れることしかできなかった。


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