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    ジュオイン

    無自覚な好意から、ンド様を目で追ってしまうジュナオの小話。
    ※1h

    紫陽花お題 花言葉から「移り気、辛抱強さ」


    (あれは……)

    アルジュナオルタは、廊下を通行中前方に見覚えのある長身が目に入り動きを止めた。
    父であるインドラが立っている。

    (また女性と話をしていらっしゃいますね)

    既婚者ではあるものの、インドラは移り気なことで有名な神だ。本神もカルデアにて美しい女性と親しくなると公言して憚らない。
    本日も、彼は女性サーヴァントと二人で楽しげに談笑をしていた。いつも傍らに控えている従神たちの姿も見えない。
    そんな父のことをアルジュナオルタは注意するでもなく、ただ黙って見つめる。
    何故そうしてしまうのかは自分でも分からない。特に用事があるわけでもないのに、彼を見かけるとつい、その一挙手一投足を目に収めようとしてしまうのだ。
    分からないままでは善悪を判断できないため、答えを得ようと最近は意識的にインドラ神を観察することが増えた。
    地道な手だが、辛抱強さについてはマスターのお墨付きだ。この衝動を理解できるか、もっと良い方法を見つけるまでは続けようと思う。

    (身体的接触はなし、会話も健全なようですね。女性の方も楽しんでいらっしゃるようだ)

    初めの内はただ、インドラ神の女性好きが悪へ傾き過ぎないよう身内として監視しているだけだったはずだ。
    それが、気づかぬ内に変質してしまっていた。

    (どうして、女性が共にいない時も見てしまうのか。見当たらなければわざわざ探してしまうのか)

    考えてみても答えが出ない。昔の、人だった頃の自分ならば知っていたのかもしれないが、今のアルジュナオルタにとっては未知の感覚だった。

    「ハハハハッ!」

    インドラ神が一際大きな笑い声をあげる。
    一瞬前まで、何か嫌なことを言われたのか険しい表情をしていたというのに、実に目まぐるしいことだ。
    弾けるような笑みは眩く、釣られるようにフラフラと身体がインドラ神の方へと近づく。
    彼の様々な表情を知りたい。自分にも向けて欲しいと感じるようになったのはいつだったか。父へ向ける情動は分からないことが多すぎる。

    と、考え事をしている内に近づき過ぎたためか、インドラ神と視線が合った。

    「あ……」

    彼は目を見開き、固まってしまう。はくはくと何か言いたげに口が動いたが音にはならず閉じられ、顔も逸らされた。
    女性との会話に戻ったのを見つめ続ける。

    (何故耳が赤いのだろう)

    やたらに髪を弄り始めたので、耳殻がよく見える。その赤みの意味するところは、アルジュナオルタの推察が及ばない。

    「ンンッ……神へ至りしアルジュナよ。息災か?」
    「はい」

    話を切り上げたらしいインドラ神が一人こちらへとやって来る。
    余裕の笑みを取り戻し、王らしく悠然とした態度だ。この角度からでは耳は見えない。

    「そうか。それで、何かこの神に……えっ?」

    その、よく引き締まった腰へと自らの尾を巻き付けて近づく。再び見えるようになった耳からは赤みが引いてしまっていた。

    (残念)

    期待は叶えられなかったが、代わりに狼狽したように汗をかき目線を泳がせるインドラ神が見れたので良しとする。
    もしかすると己は、コロコロとよく変わる表情を見ていたいのかもしれない。
    インドラは良くも悪くも変化に富んでいる。その様は刻一刻と姿を変える雲のよう。だからだろうか、幾らでも見ていられる。
    もっとよく見ようと顔へ手を当て固定すれば「うぁ」と言葉にならない声を漏らした。見えた蛍光ピンクの舌は先日バニヤンから分けて貰った(極甘の)菓子に似ている。ならばこのまあるい青の瞳は飴玉だろうか。

    (齧れば甘そうだ)

    口の中へ溜まった唾液を飲み下し口を大きく開ける。だが、高い鼻梁へ歯先が届く寸前、眉を下げるマスターの顔が頭に浮かんだ。

    (サーヴァントの損傷は、迷惑になる)

    マスターを困らせるのは悪だと不埒な考えを切り捨て、顔を離す。

    「失礼。お元気そうで何よりです。……では、また」
    「あ、ああ……」

    何が起こったのか分からないというようにしきりに瞬きを繰り返すインドラ神へ一礼し、その場を離れた。

    この不可解極まる衝動について、今度マスターに相談するのも良いかもしれない。
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