「泣いてしまうたびに、弱くなっていく気がします」
「それは、違う」
アイメリクは頭を振ると、私の頬に手を伸ばして涙を拭う。
「涙を流すことは弱さの表れでも強さの喪失でもない。人として当たり前の感情を表しているだけだ」
「でも、私……あなたが泣いているところ、見たことがない」
「私はもう、抑えることに慣れてしまったからね。君には同じ道を辿って欲しくないんだよ、ハツナ」
だったら、アイメリクが押し殺した感情はどこに向かうの。訊きたい言葉は彼の唇に塞がれる。そして優しい声で今は気が済むまで泣くといいと言って、今度は髪に口付けを落としてきたから、それ以上何も言えなくて。
いつも優しい彼が、いつか我慢しなくていい日が来ますように。そう願いながら、私はその優しさに甘えるばかりだった。