自分の命で誰かが助かることが何よりも嬉しかった。自分が存在する意味を見いだせる気がしたから。
助けた人の笑顔を見るのが何よりも好きだった。自分の行いが正しいと肯定されたような気がしたから。
守るべき人達から声援を向けられるのが好きだった。体の奥底から力が湧いてくるような気がしたから。
でも、今はそれら全てが怖い。死ぬのが怖い。自分にそんな弱さが存在することが許せなくて、みんなに申し訳なくて、そんなことは絶対に言えないけど、でも、もう誰かのために命を張るなんてことはしたくない。
それでも、それでもみんなが俺を呼ぶから、俺が行かなくちゃ。俺しか行ける人がいないんだから。だって、だって俺は、強いんだから。
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