埋葬虫 「迎えに、来て」
そう言った電話口の声がかぼそく震えていることに気が付いて、こちらも思わず息をひそめた。普段の、十代らしい若く生意気な口調からはほど遠く、幼い子どもが懇願するような、否、疲れ果てた罪人がとうとう告解室で口を割ったような弱々しい声色だった。
「盧笙」
つとめて優しく名前を呼ぶ。簓自身も冷静さを失いつつあった。悪い予感がする。大粒の雨が、アパートの窓を強かに殴りつけた。彼と初めて出会ったのも、こんな嵐の夜だった。
「俺っ……」
盧笙の呼吸が激しくなる。泣いているのかもしれないと勘付いて、心臓が早鐘を打ち出す。簓は無言で先を促した。
「俺、……——した」
告白の後に続いたのは、息を浅く吸う苦しそうな泣き声だった。
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