先を行くノースディンの革靴が石造りの廊下をかつかつと叩く。迷うそぶりもないそれに対しクラージィはといえば、不躾になりすぎないよう気をつけながらもきょろきょろとあたりを見回すのを止められない。
3時間ほど前には慣れつつある新横浜の駅ビルに居たはずが、今は日本かも怪しく思えるような洋風の城にいる。
栃木の山奥とは聞いているが、日本語も現代の常識も勉強中のクラージィにはいまいちどのあたりなのか分からない。電車に揺られているときは北のほうへ向かっていると理解していたが、電車を降りてからはノースディンの念動力に頼り切りで降車した街がどの方角だったかも曖昧だ。海はおそらく超えていないが、異国と言われても信じるだろう。そういう異質な空気が館を充している。
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