檸檬①Ⅰ. SIDE:M
ⅰ. 拾う神
時は大正XX年。
無惨は一人の童を拾った。
深い雪の日の話だ。
青い彼岸花についての噂を聞いて、とある山奥に出向いた。そこにポツリと一軒、小屋といって差し支えない草臥れた家が建っていた。小脇からモクモクと湯気が立っていたから人が住んでいると見え、ついでに太陽を克服する鬼探しでもするかと寄り道感覚で足を向けた。
その時、後ろから声をかけられた。
「まっ、待って下さい! 俺の家に何か御用ですか?」
振り向くと、赤みがかった癖毛を無造作に纏めた瞳の大きな子どもがそこに立っていた。背中に中身が空の籠を抱えているところを見るに出稼ぎから帰ってきたところだったのだろう。息が上がり、襟巻きに籠った白い呼気が途切れ途切れに少年の顔を覆っている。
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