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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    「幸村の現代EDがあれば」を妄想した話。
    だけど、現代でもふたりは運命に翻弄されそうになるふたり。
    幸せをつかみとることができるのか!?

    今回は現代に行く前の大坂での幸村や七緒ちゃんたちの様子です。

    ##幸七
    ##永遠と刹那の狭間で

    永遠と刹那の狭間で:1.つながれた手は温かく1.つながれた手は温かく

    龍脈を正し、戦乱の世を終わらせるため、富士山に登る。
    七緒はその決意を八葉全員に話したところ、彼らはそれぞれ準備を整えるためにいったん解散することとなった。

    しかし、ひとり残った七緒にはひとつだけ気がかりがあった。
    それはこの世界に来るときから優しく接してくれる男性―真田幸村と別れること。
    龍脈を整えると、この世界にいる意味はなくなる。
    確かに元々はこの世界で生まれた人間ではあるが、現代で過ごした時間も長く、そこで育まれた人間関係もある。
    仮にこの世界に残りたいと思ったところで、自分は織田家の姫。幸村と過ごしたいと思うのはエゴでしかないし、そもそもその幸村は七緒がこの世界に残ることについてどのように考えているかも不明だ。

    すると、閉じられたと思った襖の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

    「姫、夜分遅くに申し訳ございませんが、よろしいでしょうか」

    深い響きを持ちながらもどこか優しさが含まれる声―幸村だ。
    夜の逢瀬は他のものに見られたら誤解を招くということは承知している。特に兄の五月には。
    しかし、それでも幸村に会いたい気持ちの方が大きかった。

    「はい、今、うかがいます」


    幸村が連れ出したのは、庭であった。
    大坂に滞在しているときの拠点として利用している星の一族の邸。
    星の一族は龍神の神子の心を和ませるため、代々庭の手入れをしていると聞いたことがある。筒見屋もそのしきたりにそっているらしく、ここには色とりどりの花が植えられていた。
    もっとも今は夜のため、その色彩を拝むことはできないが。

    「しばらくお会いできないのですね」

    庭を見ながら思わずそんな言葉が出てしまう。
    幸村はいつになく真剣な眼差しで七緒の瞳を見ながら話しかける。

    「姫も同じ気持ちでいらっしゃるのですね。私も姫とお会いできなくなるのは寂しいです」

    『寂しい』
    幸村からその言葉を聞き、七緒の中でひとつの感情が輪郭を持つのを感じた。
    ―私はきっとこの人のことが好き。
    そして、この気持ちは早く伝えないと封じ込めることになることも感じていた。
    しかし、自分の都合のよい解釈をしているのかもしれない。
    その迷いは幸村にも伝わったのだろう。

    「帰る世界があるあなたに対してこれ以上のことを伝えるとあなたに迷いを生じさせるのは存じています。ただ、今宵、あなたとこうして語らった。そのことはこれからの糧にしていきたいと思います」

    はっきりとは口にしない。
    だけど、その瞳が何よりも告げていた。愛している、と。
    言葉にしないのは、言霊という形で七緒の心を縛りつけたくなかったからに違いない。
    だからこそ思う。
    いつでもどんなときでも自身のことではなく、七緒の気持ちを重んじてくれた彼だから、自分も惹かれているのだと。

    「ありがとうございます、幸村さん」

    七緒の言葉から何かを感じ取ったのであろうか。
    幸村はいつもの柔和な笑みを見せ話しかける。

    「信濃は私の故郷ですから、時間さえ許せば姫を案内したいと思います。これくらいしかあなたにできることがなくて申し訳ございませんが」
    「いえ、ありがたいです」

    夏に再会できるとはいえ、その先に待っているのは別れ。それも永遠の。
    それを理解しつつも、つい願ってしまう。
    他の者より一足先に信濃に着いた際には、幸村と少しだけでもふたりきりの時間を過ごすことができるのではないかと。
    だから、こう続けてしまう。

    「楽しみにしていますね」と。


    部屋までは幸村が送ってくれた。
    そっと差し出してくれた手がありがたく、つい握りしめてしまう。
    すると、ふたりは部屋の前でひとりの人物に出会った。

    「七緒、部屋にいないから気になって来てみれば……」

    五月であった。
    七緒と幸村のふたりを交互に見つめ、普段はあまり見せない厳しい表情を見せる。

    「今ならまだ引き返せるよ」

    何のことを指しているのか一瞬わからなかった。ただ、幸村が険しい顔をし、くちびるを噛んでいることで五月が言わんとしていることを察した。
    幸村に抱いている気持ち。今はまだ輪郭を持ったばかりであるが、今後大きくなる予感はある。

    「兄さん、それって……」

    目の前にいる兄はどこまで気づいているのだろう。そして、どうするつもりなのだろう。
    七緒の問いとも抗議とも思える声は五月の畳み掛けるような言い方に遮断される。

    「わかったね?」

    これ以上、七緒が話すことを許さない言い方。
    その様子を見て七緒は悲しくなる。
    初めての恋なのに。時空を何度も越えてやっと巡り会えたのに。
    どうして諦めないといけないの?
    思わずそんな気持ちが心の中で大きくなる。

    五月が目の前から去っていったのを見計らうと、幸村が七緒の身体を抱きしめてきた。五月の台詞の手前、きついものではなく、そっと包み込むように。
    そのことに安堵し、七緒は幸村の腕の中からそっと呟く。

    「幸村さん、しばらくはお別れになりますが、信濃でお会いできるのを楽しみにしています」
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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