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    百合菜

    遙かやアンジェで字書きをしています。
    ときどきスタマイ。
    キャラクター紹介ひとりめのキャラにはまりがち。

    こちらでは、完成した話のほか、書きかけの話、連載途中の話、供養の話、進捗なども掲載しております。
    少しでもお楽しみいただけると幸いです。

    ※カップリング・話ごとにタグをつけていますので、よろしければご利用ください

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    百合菜

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    「幸村の現代EDがあれば」を妄想した話。
    だけど、現代でもふたりは運命に翻弄されそうになるふたり。
    幸せをつかみとることができるのか!?

    大学の先輩・一美の誘いを受けて竹生島に遊びに行った七緒。しかし、そこでは何かに喚ばれている感じがして……
    さらにはそのことに関連するのか、黒龍の夢まで見てしまい……

    ##永遠と刹那の狭間で
    ##幸七

    「永遠と刹那の狭間で」12.暗示12.暗示

    「空がひろーい!」

    長浜港から竹生島へのフェリーに乗った七緒は思わずそんな声をあげてしまった。
    大学の先輩・一美が奇遇にも隣の滋賀県出身だと知り、遊びに行くことを決めたのは1週間前。そして、ついにその日がやって来た。
    普段、山の中と行っても過言ではない場所に住んでいるからだろうか。琵琶湖の湖面から見える空は開けており、心まで開放される気がしてくる。
    そんな七緒を一美はクスリと笑い見つめてくる。
    自分が子どものようにはしゃいでいることに気がつき、七緒は行動をつつしむことにした。

    「先輩の家も神社なんですね」

    前もってどこに行こうか相談しているとき、「連れていきたい場所があるんだ」、そう一美が伝えてきた。それが現在向かっている竹生島だった。
    聞くと、一美は竹生島の神社の家系の末裔とのことだった。

    「七緒の家もだよね。割と珍しい職業なのに偶然とはいえすごいね」

    フェリーの上で互いの身の上話となる。
    町で限られた人数しか就くことのない職。
    こんな近くに神社に関わる人がいるとは夢にも思わなかった。

    「跡を継げとか言われない?」

    ふたりで海を見ながらそんな会話をする。

    「うちは兄さんがいるし、あとうちの親、過保護だから」

    話しながら思う。五月がいるだけではなく、もしかすると七緒が血のつながらない子どもであることや、常人とは違う力を持っていたことも跡を継がすことを考えなかった理由かもしれない。もっとも両親に聞いたところで本当のところを教えてもらえるとは思えないが。

    「竹生島に行ったことはある?」
    「うーんと……」

    異世界に最初にたどり着いた場所。
    だけど、この世界では行ったことがない。
    それをどう伝えるべきか迷った末、こう答えた。

    「初めてみたいなものです」

    数十分間船に揺られると竹生島に着いた。
    ……ここが令和の世の竹生島か。
    異世界にたどり着いたとき、兼続にこの島には龍神にまつわる伝説があると教えられた。やはり、こちらの世界の竹生島も龍神に関する土地なのだろうか。
    一美に案内され島内を探索する。
    そして、神社に向かう階段を昇り境内に入ると声にならない声が聞こえてきた。

    ー何か感じる。

    懐かしい息吹き。
    だけど、同時に苦しさも感じる。
    声というよりうめき声といった方が正しいのかもしれない。
    脳内に呼び掛けているような気もするが、一方で地の底から響いているような気もする。
    目を瞑ると見えてくるのは龍の姿。
    それも七緒にとって馴染みのある白い龍ではなく、黒い龍。
    眠っているというより、何かに苦しんでいるようにすら見える。ただ、その場所が現実に存在するのか疑うものであった。

    「…なお、七緒」

    自分を呼ぶ声が聞こえてハッとする。
    すると、心配そうに自分の顔を覗き込む一美がそこにはいた。

    「ごめんなさい」
    「いや、私は大丈夫。もしかすると船に揺られて疲れているのかもね」

    そう言って気を遣ってくれる。
    もしこの神社も龍神に関係するのであればもう少しまわりたかった。
    だけど無理はいけない。そう本能が訴えてくる。
    心残りを覚えながら七緒は島を後にすることにした。


    駅までは一美が送ってくれた。

    「今日は申し訳ないことをしちゃったね。でも七緒さえよければまた遊びに来て。私、あまり友達がいないし」

    別れ際にそう話す。
    友達がいない。彼女の気さくさからすると意外とも思えること。
    でも、部活では同学年の人とは最低限しか関わっていなかったし、大学内ですれ違うときはいつもひとりだった。
    そう、不自然なほど、一美は人との接触を避けているように思えた。一方で自分には何かと気にかけてくれる。
    これらに何か理由があるのだろうか。
    そう気になりながら七緒は帰路に着いた。


    「ただいまー」

    竹生島の滞在時間はそんなに長くなかったが、フェリーに乗り、電車を乗り継ぎ、さらに山奥といっても過言ではない自宅までバスに乗ると、日が傾いていた。
    すると、天野家では意外な人物が七緒を迎えてくれた。

    「七緒、お帰りなさい」
    「幸村さん! 帰っていたのですね」
    「ええ、お邪魔しております」

    仕事があるため七緒の帰省に合わせるのが難しい幸村であったが休みが取れたらしく、天野家にやって来た。
    台所から七緒の母が幸村に「何言ってるの。ここはあなたの帰る家でもあるのよ」と優しく話しかける声が聞こえてきて、それが嬉しかった。

    「竹生島に行っていたとうかがいました」

    七緒が報告するよりも先に幸村が尋ねてきた。
    それなら話が早い。
    ふたりはいったん七緒の部屋に行って話をすることにした。

    「うん、懐かしかったな」

    世界も時代も違うけど、神がいる場所が持つ空気というのは大きく違わないのかもしれない。そして、その周りの空気も。
    初めて行く場所にも関わらず懐かしい感じがしたのはそのためだろう。七緒はそう思った。

    「でも、何か息苦しさというのかな、何かうめき声が聞こえて。あと、黒い龍の気配を感じたのです」

    記憶を探りながら七緒は竹生島で感じてきたことを話す。

    「黒き龍…… 黒龍でしょうか。白龍と対の存在であるという」

    幸村も七緒の言葉から何かつかめないかと探っている。しかし、自分の知識に限界があると悟ったらしい。

    「五月に聞いてみましょう。五月の方がこのようなことに詳しいですし」

    幸村のその言葉に七緒は首を縦に振る。
    そういえば、そう言いながら幸村がぼそっと呟く。

    「以前、三成が小さな白龍を保護していると話していました」

    七緒が秀信の元へ向かう途中、幸村はいったん大坂に行った。そのときに三成がチラッと話したらしい。
    もっともそのときは幸村の方でも軽く流したため、詳細はわからずじまいとのことだったが。
    今日見えてきた黒い龍と、三成が保護しているという小さな白龍。これらは関係があるのだろうか。
    気にはなるが、今はこれ以上の情報はない。
    そこで七緒は無理やり思考を中断することにした。

    しかし深層心理までは誤魔化せなかったらしい。
    その夜、七緒は夢を見た。
    黒龍が目を閉じているが、意識までは失っていないのか何か呻き声をあげている。
    それは目には見えない何か大きな力に抗っているようにすら見える。
    見ている七緒ですら息苦しくなり、そこで目が覚めた。

    「七緒!!」

    目を開けるとそこに見えたのは幸村の顔であった。
    心配だからと今日は七緒の部屋で布団を敷いて眠ってくれたのだ。
    彼の心配そうにしている瞳から察すると、おそらく七緒の呻き声は幸村の耳にも入っていたのだろう。

    「ええ…… ありがとうございます、幸村さん」

    そう話しながら身体を起こすと肌寒いものを感じた。そのとき七緒は初めて自分がとてつもない量の汗をかいていたことに気がつく。
    それにしても妙にリアリティのある夢だった。
    目の前の出来事だと言われても信じられるくらいの。
    そこまで思ったところで七緒はあることに気がつく。
    もしかすると本当に実際にどこかで起こっていることかもしれないと。
    竹生島で感じたのは単なる予感ではないのかもしれない。
    確かめる必要があるのかもしれない。ただし、今はどうやったら確かめられるのか、それすらわからないが。
    そう思いながら七緒は汗で濡れてしまったパジャマを脱ぎ、新しいものに着替えることにした。

    水を飲もうとキッチンに行ったところ、幸村がココアを作ってくれるのが見えた。
    七緒もすぐには眠りにつけないため、ふたりは少し話をすることにした。

    「ふう」

    夏とはいえ、エアコンと大量の汗で身体は冷えていたらしい。一口つけるとその甘さが最初は口に、次に身体全体に広がる。そして、心が落ち着いたところで七緒は夢で見てきたことを幸村に話す。
    早めに五月にも相談しようと添えて。幸村もそのことに頷く。
    そして目の前の彼は天井を見上げながらそっと口を開いた。

    「実は私も夢を見ていました。といっても、七緒には申し訳ないくらい平穏なものでしたが」

    それはあまりにも穏やかな口調だった。

    「辺り一面、青い花が咲き乱れ、その中に私と七緒がふたりっきりで佇んでいました。まるでこの世のものとは思えない光景がずっとずっと遠くまで広がっていました」

    その言葉を聞いて七緒も想像する。
    彼が見た花が何であるかはわからないが、青一面が広がる光景は空のようで美しいのだろう。

    「幸せな夢、でした」

    めったに聞かない幸村の心の奥底から漏れた「幸せ」という言葉。
    そんな幸村を見ているだけで七緒も幸せな気持ちになる。彼は平和を望んでいながらもいつもどこかで自分が幸せになることを避けているような気すらしたから。

    「夢の中とはいえ、幸村さんが幸せそうでよかったです」

    せめて先ほど自分が見た夢は何かの予兆ではなく、夢で終わることをつい願ってしまう。そして、幸村が夢で感じたような幸せが実現することを祈ってしまう。

    「ええ、願わくは夢で見たようにずっとともにいられると嬉しいのですが……」

    夜だからいつも以上に幸村は饒舌だった。
    その言葉に恥ずかしいものを感じながらも安心感も多分に含まれている。
    自分が見た夢のことはいったん置いとき、七緒は眠りにつくことにした。
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    百合菜

    DOODLE地蔵の姿での任務を終えたほたるを待っていたのは、あきれ果てて自分を見つめる光秀の姿であった。
    しかし、それには意外な理由があり!?

    お糸さんや蘭丸も登場しつつ、ほたるちゃんが安土の危険から守るために奮闘するお話です。

    ※イベント直前に体調を崩したため、加筆修正の時間が取れず一部説明が欠ける箇所がございます。
    申し訳ございませんが脳内補完をお願いします🙏
    1.

    「まったく君って言う人は……」

    任務に出ていた私を待っていたのはあきれ果てた瞳で私を見つめる光秀さまの姿。
    私が手にしているのは抱えきれないほどの花に、饅頭や団子などの甘味に酒、さらにはよだれかけや頭巾の数々。

    「地蔵の姿になって山道で立つように、と命じたのは確かに私だけど、だからってここまでお供え物を持って帰るとは思わないじゃない」

    光秀さまのおっしゃることは一理ある。
    私が命じられたのは京から安土へとつながる山道を通るものの中で不審な人物がいないか見張ること。
    最近、安土では奇行に走る男女が増えてきている。
    見たものの話によれば何かを求めているようだが、言語が明瞭ではないため求めているものが何であるかわからず、また原因も特定できないとのことだった。
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    百合菜

    MAIKING遙か4・風千
    「雲居の空」第3章

    風早ED後の話。
    豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
    姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……

    アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
    道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
    すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
    「雲居の空」第3章~蛍3.

    「蛍…… 綺麗だね」

    常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。

    短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。

    「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」

    半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
    苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。

    「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
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    百合菜

    PAST遙か6・有梓
    「恋心は雨にかき消されて」

    2019年有馬誕生日創作。
    私が遙か6にはまったのは、猛暑の2018年のため、創作ではいつも「暑い暑い」と言っている有馬と梓。
    この年は気分を変えて雨を降らせてみることにしました。
    おそらくタイトル詐欺の話。
    先ほどまでのうだるような暑さはどこへやら、浅草の空は気がつくと真っ黒な雲が浮かび上がっていた。

    「雨が降りそうね」

    横にいる千代がそう呟く。
    そして、一歩後ろを歩いていた有馬も頷く。

    「ああ、このままだと雨が降るかもしれない。今日の探索は切り上げよう」

    その言葉に従い、梓と千代は足早に軍邸に戻る。
    ドアを開け、建物の中に入った途端、大粒の雨が地面を叩きつける。
    有馬の判断に感謝しながら、梓は靴を脱いだ。

    「有馬さんはこのあと、どうされるのですか?」
    「俺は両国橋付近の様子が気になるから、様子を見てくる」
    「こんな雨の中ですか!?」

    彼らしい答えに納得しつつも、やはり驚く。
    普通の人なら外出を避ける天気。そこを自ら出向くのは軍人としての役目もあるのだろうが、おそらく有馬自身も責任感が強いことに由来するのだろう。

    「もうすぐ市民が楽しみにしている催しがある。被害がないか確かめるのも大切な役目だ」

    悪天候を気にする素振りも見せず、いつも通り感情が読み取りにくい表情で淡々と話す。
    そう、これが有馬さん。黒龍の神子とはいえ、踏み入れられない・踏み入れさせてくれない領域。
    自らの任 1947