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    彼岸花ユエ

    @aianmaiden

    @aianmaiden 短文、思い付き、進捗などなど。主にノアミオとアスカガ/R18有

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    彼岸花ユエ

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    ジク←メレ、レク←ニア前提のメレニアを目指したけど完成させられなかったし3を経て違うなとなったので供養。

    ないものねだりのわたしたち 空いた穴を埋める様に、私たちは求め合う。きっとこれは意味の無い非生産的行為。その中で何かを得ようとする私たちを見て、彼等は笑うのだろうか。それとも哀れだと嘆くのだろうか。
     埋める術は彼等に委ねられている。しかしそれを知るのもまた、私たちだけなのだ。
     
     ――スペルビア行きアルス船。時刻は午後十時過ぎ。雲海をゆったりと進むアルス船は月明かりを反射する雲海に線を描いていた。
     二人一部屋で使用する船室はさほど広くは無いがかと言って狭すぎる訳でもない。船室の奥にある丸い小窓からは流れ行く雲海と藍色に染まった空が見える。まるで丸く切り取った写真のような風景。その小窓を僅かに開ければ、肌を擽るような夜風が忍び込んで来る。その風を浴びながらニアは雲海の先をじっと見詰めていた。
    「ニア。そろそろ寝るぞ」
     風に揺れてさらりと流れる銀髪にメレフは声を掛ける。今日の部屋割りはメレフとニアが同室である。メレフが照明のスイッチを切ると部屋は光を失い、代わりに小窓から入る月光が部屋に青白い明かりを灯した。ニアは小窓を閉めると、さも当然といった顔でメレフのベッドへと身体を滑り込ませた。
    「ニア」
    「いーじゃん、二人しか居ないんだしさ」
     枕を抱き締めながらニアはメレフを見上げる。月光に照らされた彼女の頬は青白いベールを纏っているかのようだ。その中で異彩を放つ双方の夕焼けがニアを見下ろしていた。メレフはやれやれといった様子でベッドの淵に腰掛ける。ぎしとベッドが鳴くと同時に銀髪がメレフの胸に飛び込んだ。
    「ニア……?」
     メレフがニアに問いかけるも彼女はメレフの胸に顔を埋めたままである。唯一分かるのはいつもは元気にぴんと尖る耳が今は萎れたように垂れている事だけ。黙りこくる彼女にメレフは仕方ないとニアの頭を撫でる。こんな風になるのは大抵何かがあった時と相場が決まっている。現にこのような事はままあった。どうもニアはメレフと二人きりになると張り詰めていた糸が切れるのか、捨てられた子猫のようにメレフに甘えるのだった。
     聞いたところで返してくれないのは今までの経験上理解しているメレフは彼女が満足するまで胸を貸す。暫くの間、ニアの指通りの良い髪を堪能するとメレフの背中に緩く回されていたニアの腕に力が入る。それに気付いたメレフは呆れたような困ったような、それでいて幸せそうな笑みを静かに浮かべるとニアの頬に触れた。
    「仕方のない子だ」
     触れた頬は微かな熱を孕む、その熱を分け与えるようにニアはメレフの掌に頬を擦り付けた。
     
     
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