きもちわるい。
胃とおなかと気分とその他のなにもかも全部。
身体は体内の異物を吐き出そうと頑張るが、胃には何も入れていないので、おなかの、というよりは子宮のなかのまだひとのかたちはしていないだろうそれは吐き出されちゃ困るものだ。
というか、私が望んで腹に抱えたんだから私の身体と言えど勝手に捨てようとするな、という話でもある。
全く不具合が多くて嫌になる。あの人達が役立たずと見限るのも納得のいく話だ。
「・・・それが悪阻だ。正常に機能してる証拠だぞ」
「・・・わかってる、」
「・・・飯、食えるか」
「ごめん、むり。たぶんはく」
食べなきゃ、とは思う。
でも、思考に反して身体の方はこれ幸いとばかりに口実を手に入れてまるごと全部吐き出してしまいそうなんだもの。
おかげで左手に繋がっている細い管から入り込む栄養だけが生命線であるけど、情けないとも感じてしまって、こんなに罪悪感とか無力感だとか感じる必要は無いと頭では理解していてもネガティブに寄った思考が切り離せなくてまた嫌悪感で吐きそうになる。
先生もパンダちゃんも気にするなって言ってくれるしそのとおりだと思うけど。
本当に、役立たずでごめんね。
「・・・あまり自分を卑下して思いつめるな。何度も言うが、それが普通なんだ」
「・・・うん、」
「アイスなら食えるか?」
「わかんない・・・」
いつもなら喜んで飛びつくような分かりやすい釣餌も、ベッドから起き上がるのもままならない現状では口に運ぶのさえ億劫に感じてしまう。
「・・・分かった、用意してくる」
「・・・ありがと、せんせい」
「気にするな」
そう言って部屋を出て行く先生の背中を薄目で見送ってから、管を巻き込まない様に気をつけながら布団を抱き込んで丸くなる。
気持ち悪さに加えてマイナス思考の所為なのかおなかまで痛くなってきた気がする。
なんで。
じわりと意味のわからない涙が滲む。
不出来過ぎて嫌になる。頭と身体がちぐはぐで具合が悪い。どうして私はこうなんだろう。
この息苦しさがつわりのせいか、呼吸も億劫なせいか、死にかけているせいなのか判断すら危うい。
漠然と、死にたいな、と思う。
そんなの許されないのに。
自分の事なのに、生きるのも死ぬのも誰かの許可が必要な事に自嘲した笑いが零れる。生きる気力はないのにそんな元気はあるのかとまた可笑しい。
死んだところでまどかと会える保証も無いのに。
でも、ただ、死にたいなぁ、と思ってしまう。
「まどか、」
枕元に置いてあるうさぎのぬいぐるみに手を伸ばす。
きぬちゃんが作ってくれた『まどか』。
熱に浮かされた私が強請ったらしい。ぜんぜん憶えてないけど。
ただきぬちゃんがそれなりに手をかけて作ってくれた自信作らしく手触りも抱き心地も最高の一品だった。
それを抱き締めると少しだけ呼吸がしやすくなったような気がする。
意味も無く泣きたくなったり死にたくなったり、それなのに吐き気は治まらなかったり、世のおかあさんは大変だ。
あの人もそうだったのかな。
・・・もう答えは聞けないけど。
ああもう、本当にだめだな。
褒めて欲しいし抱き締めて欲しいしキスして欲しいし愛して欲しい。
ねぇ。
なんでいないの、まどか。
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逢いたい話。
メンタルグズグズのままならない天宮。